表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ラブコメディが世知辛い!!

作者: ムクダム

 ラブコメディの風当たりが強い。世間から作品への風当たりではない。作品から私への風当たりである。何らかの力が働き、いつの間にか風下まで移動させられた可能性がある。

 物心ついた頃から、映画、テレビ、漫画、小説、アニメでラブコメディに親しんできたが、息抜きのための作品からダメージを受けることが多くなってきた。

 主人公を含め、登場人物が軒並み人間が出来ていることが原因の一つだ。主人公は周囲に良く目を配り、気遣いができ、仮に粗野な言動に出たとしても、心根が優しいので最終的には周囲から受け入れられる。どういうわけか都合よく、分かりづらい主人公の優しさに気がつく人間が周りにいるのだ。

 性格だけではない。人並み以上の教養を備え、何かしら人よりも秀でた技能を身につけている場合が多い。そして、大抵は裕福な家庭で育っている(貧乏暮らしをしていても、元は裕福な家庭だったという設定も多い)。

 天邪鬼で捻くれた性格をしていても、多かれ少なかれ友人関係は築くことが出来ているし、コニュニケーションが苦手と謳っていても、周囲の人間に恵まれているので、本当の意味で孤立することはない。

 これだけ恵まれた状況であれば、大抵は幸せな生活を送ることができる。幸せになるための下地が整っている人間が順当に幸せになっていくだ。そんなのは現実だけで十分ではないか。フィクションなら夢を見させてほしい。 

 自分のことを棚に上げて、「こんなダメなやつがモテるのは許せない!!」と息巻きながら、物語の行く末を見守っていた私のような人間の立つ瀬がない。感情移入する対象が立派すぎるのだ。

 物語に触れる場合、程度に違いはあれど主人公に感情移入するのが普通だ。その際、ある程度の欠点がないと感情移入は難しい。普遍的な欠点を発見することで、自分とキャラクターの距離を縮めていくのだ。世界設定が現実かけ離れていても、ものの考え方や、問題への取り組み方で共通点を見出すことが出来れば、物語に没入することができる。

 そのため、主人公に欠点がない、もしくは欠点があってもそれを大きく上回る美点を備えているような設定だと物語への没入が妨げられるのだ。多くの美点を備え、清廉潔白な人間に感情移入できるほど、私は精神的に成熟していない。周りを見ても、人の粗を探し、隙があれば足を引っ張ろうと考えている連中ばかりだ。立派な人間が増えているとは思えない。精神的に成熟していると自認している人間がいるとしたら、まずは自分の見る目を鍛え直せと言ってやりたい。

 また、主人公たちが結ばれた後の様子がしっかりと描かれるのが辛い。主人公たちが晴れて恋人となりハッピーエンドと言う物語であれば、彼らのことを我ごとのように祝福しながらも、お互いの綺麗なところばかり見てきた若い二人が、果たしてこの後の人生を共に歩んでいけるものだろうかと他人事のように心配するのが私である。

 美男美女が周囲に祝福され、順風満帆に人生を謳歌することなどがあってたまるかという嫉妬心から、彼らの関係が今後破綻するかもしれないと言う可能性が残されてこそ、気持ちよく物語から抜け出ることができるというものではないか。

 ところが、最近は恋人になっておしまいではなく、その後の交際の様子、ゼクシィの回し者かと疑うような立派な結婚式、子供の誕生から成長、果ては死ぬまで仲睦まじく過ごしたと描写する作品まで出てくる始末。これではあまりに夢がない。恵まれた人間の幸せな一生を見せつけられるのだ。幸せになるための厳しいハードルを再認識させられるだけだ。

 努力して優れた人間になれば幸せを掴めるぞというメッセージかもしれないが、現実に幸せな一生を送れる人間はごく少数だ。大抵は人生に挫折するのだ。進学、就職、交際、結婚、老人ホームへの入居など、選択を誤ると不幸のどん底に落ちる数々の罠が待ち受けている。

 もしくは、恵まれた人間でなければ幸せになれないのだ、いいかげん自分の人生を見つめ直せという意地悪なメッセージが込められているのだろうか。主人公に自分を重ねるのではなく、自分はそれほど優れていないのだから幸せになれなくても仕方がないと諦めることを勧められているのか。

 あまりにも世知辛い!!

 エンタメをこんな風に捉えてしまう、心の狭い私はラブコメディを楽しむ資格がないのかもしれない。

                                                 終わり

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ