表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/8

ショートフライ(後書き)

こんばんは、作者のぽにょです。書き方のテンプレ的なやつ考えたので、お試し程度に早速ちゃんとした説明しますね。


この物語は、“沈黙の人間”を、ひとつずつほどいていく話です。最初から最後まで、誰もはっきりとは言わない。父は何も語らず、母は何かを隠していて、娘は問いの形を見つけられない。

けれど、だからこそ“信じる”ということが生まれる物語になると信じて、『ショートゴロ』という一本の軌道を描きました。



1. この物語の核と創作意図


最初に浮かんだのは、「あるプレーが誤解されたまま終わったら、どうなるだろう?」という問いでした。

それが“ショートゴロ”だった理由は、地味だからです。派手なホームランじゃない。三振でもない。

ただ、転がってきた球を取って、投げる。

——でもその一歩、その投げるタイミングには、すべてが宿せる。

「わざとだったのか?」

「なぜ止まったのか?」

「何を守ろうとしたのか?」

それらを、“父の最期の一球”に詰めこもうと思いました。たった一歩の遅れ。その“理由”を、娘が少しずつ知っていく。それだけの話です。

でも、それだけでよかった。



2. 父・鳥谷丈一について


丈一という人間は、クズで、ずるくて、でも一線を超えなかった人です。八百長の空気に迷い、家族のために誇りを捨てる寸前まで行った。けれど、最後の一歩で、“誰かに見せたい自分”を選んだ。

何も語らなかったのは、誇りではなく、祈りです。

「信じてもらえないかもしれないけど、それでも、見てくれていた人がいたなら、それでいい」

そんな願いを、寝言ひとつに込めて、

毎晩“投げ直していた”男でした。

彼は、信じてもらうことを諦めたけれど、

娘にだけは、諦めきれてなかった。

それが、この物語のすべてです。



3. 真白の変化と視点構造


この物語を最初から最後まで“真白の視点”で描いたのは、彼女の感情の成長がすべての道筋になるからです。

父を“クズ”だと思っていた彼女が、手紙、新聞、映像、言葉、寝言、記憶——

“断片”をひとつずつ拾っていくうちに、

「これはただのミスじゃない」→「これは選択かもしれない」→「これは私に向けられていた」

という確信に変わっていく。

この変化は、物語のテンポそのものとリンクさせてあります。だから中盤以降、父の行動を描かずとも、真白の内面だけで全てが見えてくる。

真白が父を“理解しようとした”そのこと自体が、

父の選択の意味を完成させる——それがこの小説の構造です。



4. 伏線と回収の設計


いくつかの重要な伏線を整理します。

•寝言「ショートゴロだった……」

 → 一見、後悔や悔しさに聞こえる

 → でも実は「誇りの確認作業」だった

 → “届いてほしかった一球”を何度も投げ直していた

•新聞が見つからなかった理由

 → 実は母が“隠していた”

 → 真白に“自分でたどり着いてほしかった”から

•送球のワンテンポ遅れ

 → 世界は「八百長だ」と決めつけた

 → でも実は“最後まで全力でアウトを取った”

 → 判定は誤審。でも、父はそれさえ受け入れた

•観客席を見上げた父

 → 実は、母と真白がいた

 → 娘が“見てくれていた”ことが、彼の最後の支えだった

•一度だけ迷った、という母の証言

 → 父も“自分を守る選択”をしかけていた

 → でも、最後に“娘に見せたい自分”を選んだ


そして、終章で真白が言う「アウトだったよ」によって、このすべてがひとつに収束します。



5. ラストシーンの意味


終章で父は、何も言いません。

でも、「……正面から受けりゃ、痛くねえんだよ」という最後の一言は、

真白への答えであり、自分自身への肯定です。

“あのときの一球は、自分にとって間違ってなかった”

“たとえ世間が信じなくても、娘が受け止めてくれた”

その瞬間、ようやく彼の寝言は止まる。

真白が最後に思う——

「正面から受けたゴロは、痛くなかった」

それは、父が教えてくれた“生き方の形”そのものでした。ゴロというのは、野手からすれば処理しなければならない“問題“です。真白にとってそれは「クズだと思っていた父」であったのでしょう。それを正面から受け、父の誇りであるショートゴロを処理していくうちに、いつの間にか父への嫌悪も無くなっていた。それがこの物語の核ですね。



6. 読んでくれたあなたへ


この小説は、「大きなドラマ」ではなく、たったひとつの“沈黙”をどう受け取るか、という物語です。

私たちは、誰かに何かを伝えられずに生きることがあります。伝えたくても、伝えられなかったこと。

言い訳したくても、もう届かない相手。

この物語が、そんな“伝えられなかった一球”を、

今からでも「投げ直せる」と思えるきっかけになったら、私はこの作品を書いた意味があったと思います。

もし、あなたの中に“あれはアウトだった”って信じてあげたい誰かがいたなら、この物語は、もうちゃんと届いています。

ありがとうございました。また、どこかで。


と、いうことで真面目モードをご覧頂きました。あとは気づいている人いるのかわからないですけど、18時に3つ投稿してるんですね。これは18時が6時だということにかけています。6というのはショートを表す数字であり、丈一の背番号、そして3つ出していることで、丈一が自慢げに語っていた6-4-3のゲッツーを3回取ったことを表しています。まぁ、なんとも意味の無いカミングアウトでした。それでは!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
時差コメごめんなさい。一気見させていただきました。 野球のことは分かりませんが、娘さんとお父様の「覚悟」と「信念」はよく伝わりました。 「正面から受けたゴロは、痛くなかった」 ……"痛くなかった"と…
2025/04/22 16:31 騒音の無い世界
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ