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第6話

   

 小さな子供なので、たどたどしい話し方だった。

「いつもと違う遊び場」とか「ちょっとした大冒険」という言葉も聞き取れたが、その辺りは重要なポイントではなさそうだ。

 要するに、この山で迷子になっていたらしい。


「なるほど。それじゃ、おじさんと一緒に、この山から出ようか?」

「うん!」

 元気よく返事した子供の手を引きながら、私は山道を降り始めて……。


「ここまで来れば、もう大丈夫だろう?」

 茶色い土の道が終わり、アスファルト舗装の道路に出たところで、子供の手を放す。

 家まで送る必要はないだろうし、そこまでするのはむしろ過剰だろうと思ったのだ。

 ここは田舎だから大丈夫だけれど、もしも都会だったら、他人の幼児を連れて歩くのは事案扱いされかねない。

 ……とまで考えてしまうのは、都会暮らしで染み付いた心配性だろうか。


 そんな私の内心なんて当然、知る(よし)もなく……。

「おじさん、ありがとう!」

 子供は大きく腕を振って、クルリと背を向けてから、嬉しそうに帰っていく。

 足取りも(かろ)やかで、スキップしながらだった。

 そのリズムに合わせて……。


「山で遊んじゃ、いけないよ。迷子になって、困るから。山は危険が、いっぱいだ。クマにイノシシ、悪いひと」

 子供が口ずさんでいたのは、あの奇妙な歌だ。私が山で歌っていたのを聞いて、覚えてしまったらしい。

 一回聞いただけなのに、しかも泣いている最中(さいちゅう)だったはずなのに、小さい子供は本当に覚えが早いものだ。

   

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