冬に近づく
『今年も冬の到来か』
村を出てしばらく旧街道を駆けていくうちにすっかり山間の景色に様変わりしていく。
土砂崩れなどでたびたび通行とめなどに見舞われることから通行量が減った旧街道、かつては宿場町として栄えた村で宿をとることになる。
初老の商人、ドレさんはホットワインを注文する。
俺も習って注文。寒さが厳しくなるにつれ酒飲みに欠かせない飲み物、
『いける口かな?』
と聞かれたものの
祖父もドレさんも根っからの酒好き。
前世では酒よりゲームって感じだったし、この世界では15歳が成人とされるものの見習い風情で酒に浸れる身分なんてそうそういない。飲み慣れないホットワインを美味しいとは言えない年頃である。
山の山頂には雪が積もり始め、山一面積もるころには天候を見てそれぞれひとつの町村を行き来するくらいの商いが定番となる。
『アールくんよ、酒はいいぞ。』
まぁワインをしこたま仕入れにくる酒好き商人
祖父と同類と言えるドレさんは愉快に酒盛りを始めた。
先に部屋に戻り、今後の予定を確かめる。
子爵領を明日には抜ける。
身分階級は俺のよく知る騎士爵男子伯侯公爵位となり、王族も多数存在する。
子爵領、男爵領、伯爵領といくつかの領地を抜ける予定だ。関所もあるのは国境、貴族家間ではせいぜい村や町で宿泊や商いで身分証とともに税が科される程度のゆるい行き来となる。
ドレさんの村まで荷馬車で向かい、その後大きめの街に出るか、冒険者ギルドが賑わっている村に滞在するかそろそろ冬がやってくるらしく生計の立てかたも思案した。
宿をとり、村の薬師に薬草を販売した。
冬風邪に備えどこも割高で引き取ってくれる。
多分だがドレさんの村へ向かう途中で薬草など採取ものは品切れになりそうだ。
かわりに購入するものは遠出して初めて値のつくものが多い。
生活必需品の薬草もスキルがなければ数束とれたら上出来、今後時間が見つかればまた採取に出向きたいと思う。
またスキルの習得、成長も課題とする。
この冬はしっかり頑張ろう。
嫌なこともあったこの土地も最後かと、明日に備えて眠りについた。