旅立ち
朝を迎えた。
肌寒い、いやかなり冷え込んでしまい目を覚ました。
焚き火の後を片していると旧街道を通る村の商人と遭遇した。
荷馬車に炭や冬の手仕事の材料となる木材を積んだ商人が馬を休ます間に村の帰路の同行を願いでた。
『アールくんも本当災難だったね。』
山間の村を往復する初老の商人とは顔馴染み、村に来てからの祖父の飲み友達だったはず、村に定期的に炭や毛皮、手仕事の材料などを届ける商人。手仕事とは女衆や老人、子供の内職、村だと村総出のワイン仕込みが終えるとそれぞれが冬仕込みに入る。
冬の貯蔵としてソーセージなどを拵える人
煤を固めて墨を作る人
木材から簡単な木箱を作る人など
規模の小さい村だと職人不在、内職で譲り合うものも多く、冬の収入源として重宝される。
今回はかまど用の炭と木材を売りに、帰路はワイン樽と嵩張らない小物を仕入れる。
『じいさんの供養も終わったのならそろそろかな?』
『はい、冬が訪れる前にはと』
『なら一旦わしの村に来な、丁度町の途中だし、うまいチーズがあるぞ』
『いいですね。』
と村を去る決意をした。
荷馬車の後ろに座らせてもらい、滞在中の村に帰って来た。
冒険者ギルドに顔を出し事前にアイテムボックスから取り出していた薬草を納品する。
『ずいぶんたくさん集めましたね。まだ新米なのだから無理しちゃダメよ。』
と受付のおばさんが心配した。
確かにこの量を集めるのは1人だと難しいかとスキルに感謝する。
薬草の束は種類ごとに値段が違う。
よもぎなどは麻袋ぱんぱんで銅貨5枚(日本円にして500円前後、乾燥させたものはもう少し高値がつく。
常設依頼の薬草、冬に流行する風邪のたまに使う薬草は少し割高になっている。
1束銅貨10枚、小さな種子は秤でグラル(グラム、キロはキラル)
計算。
『薬師のじいさんが喜ぶよ』
と色をつけて支払われた。
それから村を去ることを告げ、報酬の一部をギルドに預けて宿に帰った。
身支度は簡単に済んだ。
宿にあった着替えや小物、祖父の遺品はアイテムボックスに。
宿に長期滞在の終わりを告げる。
清算は住んでいる。半年あまり滞在した部屋はすぐにがらんとした。
荷馬車の商人は村に一泊、仕入れと積み込みの手配くらいの日程で俺もまた1日あれば用事は終わる。
別の村を数箇所回る予定らしいが今回のメインはワイン樽の持ち帰りとのことで都度都度食料などは買い出すくらいの立ち寄り、同乗させてもらえるので交代で荷馬車番も引き受けたことから少し値のはるものも追加で買い付けるそうだ。
年代物のワイン、冒険者ギルドで売り出されてた魔石、モンスター素材、などに品を変え村をたつ準備を終えた。