幸せになりたいな
行き当たりばったりの人生
雨宮恋治の人生とも言う。
両親ともに兄弟はおらず、恋治も一人っ子として育つ。
両親は先に父、後を追うように母が亡くなる。
社会人一年目のこともあって、葬儀に追われ、会社は馴染めず仕事も遅れたこともあって希望配属も叶わずすぐに退社。
心が折れかけた時に汗を流したのが学生時代に励んだ剣道。
親が残してくれたお金でしばらく暮らしていたものの、遺産目当てで同級生に教え込まれた賭け麻雀、はっきり言うと鴨にされた。
そのあとパチンコにハマって、生活が荒れた。
幸い、親の残してくれたものの大半は難を免れた。
剣道有段者に対して無理強いの金銭せびりは愚か者のやること。麻雀でも持ち前の地頭のよさで負けが嵩むこともなくなった。結果イカサマがめくれ、バックにヤ○ザを匂わせた借金まみれのその男を叩きつけて、それからギャンブルは辞めた。
相続した家を売り払い、アパートに引っ越し、新しい職場の同僚の影響でパソコンゲームにハマった。
心が弱くなったせいで転職癖がついたがもと同僚とは長年ゲーム仲間のまま、秋葉原や池袋でアニメやゲームのグッズも買いオタクとして生きていた。
自慢できるような人生でもないが独り身を謳歌していた気もする。
アールとしてはどう生きるか、大きな月が連なる異世界の下、星が綺麗に輝く中で借宿までたどり着いた。旧街道の休憩所、そろそろ冬に差し掛かりつつあることから今夜は無人、村の出稼ぎの売り子も退散している。
枯れ枝を拾い、旅の小物入れにある火打ち石で焚き火を灯す。
昼間のうさぎを軽く捌き、手持ちの塩と移動がてら採取した野草で串焼きにする。
腹ごしらえが終わると少し考えこんだ。
焚き火の灯りを静かに眺め、ゆっくりたとんとともに自分を見返した。
短絡的で飽き性、多趣味、恋治には家もお金もあった。剣道などで身体もがっちりと育ち、女性にはモテなかったもののお調子ものでオタク仲間からは愛される男。
15歳のアールは
恋治の記憶はあるものの全く別の人、性格も真面目、勤勉、祖父思いと評価されている。
成人を迎えたばかり、天涯孤独、悲壮感はないものの交通機関が整っていないこともあって幼馴染も居ない。少し仲良くなってもすぐ別れる。行商人の性、時折組む行商隊も初老、見習いの子供だけではなかなか組むこともない。祖父は目利きのよい買い付け人として行商先で顧客に重宝された商人。
母が再婚したあとからは祖父だけが家族、酔っては大きないびきでたまに粗相も。
祖父のような生涯も良きかな。
そのためには、身をもって体感したものを忘れてはならない。
先ほどのガルーダの強襲でこの世界の怖さを体感した
恋治らしい行き当たりばったりだと間違いなく死ぬ。
うとうとと火を絶やさぬように
うとうと船をこぎ
眠気誘われる。
『幸せになりたいな。』
人物像って言葉にすると難しい。