目的
逃げた方向が滞在中の村とそれてしまい、日も落ちた。
森からゴブリンといった夜行性の亜人モンスターが現れだすため、集落か別の村を目指すことにした。
草原を脱し旧街道を歩く。
アールの拠点はまだない。どこかで活動する冒険者でもない。
酒好きな祖父が衰えを感じ、昔行ったワインが名産の村に行きたいと行商販路の南端まで遠出した地が今いる村だ。
ワインは古く付き合いのある商人にしか売らない。
輸送中の事故で台無しなんてことも多々ある、無駄にするような商人には売れない。
そんなこだわりのある取引先だった。
祖父に収穫時期に連れてこられた。
一緒に収穫を手伝い、収穫祭も参加、今年の樽の仕込みも手伝い、町への輸送も手伝った。
祖父寝込み、そのまま亡くなる。葬儀、行商人の所属する商人ギルドへ成人とともに登録、販路の継承申告(他領の往来の申請)が不許可となったのもその村。
昔ながらの堅苦しい担当者だったことが災難だった。
祖父が他領のギルド登録の行商人。
商人ギルドとは商人協会、商人の相助団体であるのだが、国ごとに規則が異なる、今いる王国の場合、商人ギルドの支所は領主の支援のもと運営と定められていて、商人から徴収する税を確保するため自領内の行商を優遇、他領の行商を誘致するまたは排他する色合いが見受けられ、アールの場合、この地でのみの商売、この地の行商人または商店の見習い経験必須などの厳しい条件が課せられた。
若い商人見習いと見られたのある。
祖父の販路は祖父の友人が他のギルドから苦情を出して結果的に継承しているが、素直にこの地の商人とならなかったアールは目の敵にされている。
遺産相続も難癖をつけて、ギルド貯金(銀行機能も兼ねてる)も降ろせず、かといって今すぐ隣村や領主屋敷のある町まで出向くわけにもいかず、やり過ごしていた。
ワイン名産地に出向した子爵家の家臣子弟、その担当者も子爵領支部に戻っている。
遺産は相続。ギルドカードも貯金引き落としの為、商人としてではなく受理。
冒険者ギルドに振り込み済み、とまぁトラブルやらでよそものとしてあまり愛着も抱かない土地である。
旧街道から祖父の故郷の方角にふと思いがあせる。まだ行ったことがない両親の故郷でもある。
気まずいのかあまり故郷に関してだけ寡黙だった。
『移動をおすすめします。』
(ん?ここを?)
『いえこの地より運命がまつ地へ移動をおすすめします。』
どういう事か理解できないがもともといくあてもない状態だったしここはスキルに導かれるまま、流れに身を任せるのも良いかもしれない。