異世界転生はもっと憧れがありましたけど
いきなり光景が変わった。
俺さっきまで携帯見ながら歩いたはず。
歩きスマホと言っても自宅前で通知の届いたSNSを開いただけ、今ハマり中のゲームのイベントの出欠確認に返事を打ち込み、そのまま鍵を取り出して帰宅する直前だった。
なのに今何もない不思議な空間に一人、先の見えない真っ平らな白い空間。
訳がわからない。
唖然としてるといきなり脳内に誰かの声が聞こえてきた。
『ごめん、君死んだみたいだ。』
辺りをキョロキョロと見回しても誰もいない。
状況としてはいきなり誰かの声がした。
ただしその声は忙しいなかで対応してるような雰囲気を感じた。
『え?な、なんで』
と声を出して問いかけるとしばらく間が空く。
『本当ごめん、こちらの手違いで巻きこまれ事故みたいな?』
『いやいや、そんな軽く言わないで』
と怒りをあらわにしてみたもののまたしばらく沈黙が訪れた。
『なんでこんな状況なんだ、説明してくれ』
俺の怒鳴り声も虚しくしばらく返事はなかった。
『ちゃんと説明してあげたいけどちょっと事後処理に終われちゃってて はい、すぐ行くよ。
ごめん、お詫びもかねて君の好きそうな世界に転生しておくから、なんとか我慢しておくれ。 そこ、そこはちゃんと空間修繕しておいて。
あ、チート能力とか奮発しておいたから、君の好きそうなアニメとかゲームとか記憶から確認済みだから、ほんと、お詫びも兼ねて次の生は楽しんで。 』
ようやく返事が帰ってきたものの
『ま、マジで説明それかよ』
と一人呆然となる。そりゃなるよ。
死んだ状況も分からず、俺転生させられるのか、確かに一度といわずめちゃくちゃ異世界転生とかに憧れた人間だけど、確かにラノベ、アニメ、ゲーム大好きオタクだけど、こんな感じで転生するとか思ってなかったし、楽しみのイベントとか明日の仕事とか週末の休暇とか、生き死に比べれば小さいこととはいえめちゃくちゃ楽しみがあったんだ。
『おい!!』
『おーい』
『ぉ-ぃ』
声が途切れるとともに意識も消えていく。
俺の今世はめちゃくちゃ雑に締めくくられた。