28.仕上げ
マーティンとマーゴットを中心に、島民一丸となった。マーティンはまず、島の安全性向上に取り組んだ。
「あんな恐ろしい思いはもう二度とごめんです。私が不甲斐ないばかりに、島民全員を命の危機にさらしました。大げさすぎるぐらいに、島の守りを強固にしたいのです」
まあ、最終兵器マーゴットがいるから、ぶっちゃけ安全ではあるのだが。最終兵器の最終武器、開閉は、封印し続けたい。それ以外で、できることは全てやりたい。マーティンの願いだ。
例の海賊、厳しく調べ上げられ、とある帝国の依頼で来たことは分かった。だが、証拠がない。証拠がないから、抗議もできない。お互い、そうだと知っている。それで牽制しあうのみ。外交とは、のらりくらり、全てが玉虫色で進むもの。一刀両断、快刀乱麻、白か黒か。そんなにスッキリと分かりやすい世界ではない。そう、フィリップから手紙が来た。
「いつまた帝国が狙ってくるか。もしかしたら他の国も来るかもしれません。まずは上陸させないこと。上陸してしまったら、居住区に来るまでにかたをつけたい」
「魔物と魔植物を最大限に活用しましょう」
マーゴットはあっさり言う。人手が足りないなら、魔物と魔植物に頼るしかないではないか。渋々同意してくれたトレントが、眠っていた仲間を起こす。長年寝すぎて、すっかり木と同化しかけていたトレントたち。ケセドと共に各地に散って魔植物や魔物を説得してくれた。
「破壊王が戻られた。協力しろ。おいたを続けると、どうなるか分かっているだろう」
扉が開閉されたことは、皆知っている。それはもう、喜んで協力する。島の安全性は一気に高まった。
「シーサーペントの小さいのがまだたくさんおる。海のことは、海に任せよう」
トレントがそう言うので、海のことはなりゆき任せになった。なるべく敵を上陸させない、上陸してしまったら魔物に時間稼ぎをしてもらいつつ、人間の兵士が居住区の守りを固める。
フィリップが、百名の部隊を派遣してくれた。王国の威信をかけて、ユグドランド島を守ろうと、士気の高い武人たちが訓練に励んでいる。
「ドリアンを使いましょう」
マーゴットが突飛な案を出した。
「鼻の利くコボルトがいます。敵が来たら、ドリアンを投げてもらいます。そうすれば、コボルトがいつまでもどこまでも追い詰めて、ぶちのめします」
「やってやんぜ、姐さん」
「任せておくんなせえ、姐さん」
コボルトたちは大興奮。ところが
「ヒィーン、キュンキュンキュン」
ツァールが取り出したドリアンに、逃げ惑うコボルト。
「ぎゃー、鼻が曲がる」
「おうぇー、鼻がもげる」
ドリアンは封印されることになった。
「もうちょっと、穏やかな匂いのなにかでお願いしやす、姐さん」
リンゴ、オレンジ、桃、色んな果物で試して、桃が一番追跡しやすいことが分かった。島のあちこちに桃の木が植えられた。トレントとマーティンが協力し、桃の実が絶えずなり続けるように調整している。
ドリアンにやられたコボルトたちだが。ごはんを下から上まで持ち運びする重要な任務を得た。主にちびっ子コボルトが担当をする。翼のあるモフモフのコボルトが、バスケットをくわえて部屋まで飛んで運ぶ。お客様が喜ぶこと、間違いなしだ。王都では体験できない、おもてなし。きっと、心づけが山と渡されるだろう。
もちろん、人もがんばっている。スキル持ちはスキルをせっせと磨いている。もう誰も、ハズレスキルと呼ぶことも呼ばれることもない。神様がちょっと名前のつけ方間違っちゃったんじゃないって受け止めている。
マーティンのことを肩もみスキルとは誰も思っていない。ベネディクトは課題探しスキル持ちと、尊敬のまなざしで見られている。
「自分のスキル名は、自分でつければいいわよ。私は草刈りスキルが気に入ってるから、そのままでいいけれど」
草刈りが天職なマーゴット。なにひとつ卑屈になることはないと、胸を張る。
「私も、洗濯好きですから、洗濯スキルのままでいいです」
洗濯スキルが向上し、誰の湯あみも簡単に終わらせられるようになった。
「私は、新しいスキル名を考え中です。かっこいい名前にします」
ずぶ濡れの人を、一瞬で乾かせるようになった、洗濯物を早く乾かすスキル持ち女性。もっと言いやすい、かっこいい名前を日々考えている。
「はよかわかんか、でどうかしら。チャンカワンカから思いつきました」
皆が吹きだし、ゲラゲラ笑う。
「いいじゃない。わたしもそれ系でいこうかしら」
ダジャレ系、脱力系、意味不明系。様々なスキル名が日々開発され、笑いを誘っている。




