67 この先を願う
そして今。
いつものように中庭の定位置の木陰で、メメットと昼食にしようと思ったらクリスまでついてきた。
しかも何故かケンウィットまで来ている。
「ケンウィット、貴方友人と食事をしなくて良いの?」
「……護衛依頼が、継続中だ。」
「えっ?!」
驚いて食事の包みを開けようとしていた手を止め、彼を見る。
「お父様、まだそんな依頼をしたままなの?!」
「いや、彼に依頼したのは父上ではないぞ、俺だ」
隣でクリスが聞き捨てならない発言をする。
「クリスが?!」
「……メルティアーラ、大丈夫だ。咎めなくて良い。」
「……どういう契約したの、学業もあるのに護衛もとか詰め込みすぎではなくて?」
「……観劇の特等席、一年分。イルナが、とても喜んだ。」
「?! わたくしの為だけに……破格が過ぎますわ、クリス」
「ん? ああ、メルティの安全に比べれば安いものさ」
「……ただの悪餓鬼だったのにキラキラしくなってるし、殿下の愛が重い……」
もぐもぐごっくんが終わって、メメットが口を挟む。
「愛が重いも俺にとっては褒め言葉だ。もっと言って良いぞ?」
彼女の物言いはなかなか不敬だったけれどクリスは気にならないようだ。
メメットが選んだお弁当のお肉、肉汁がしっかりしてて美味しそうですわ……わたくしもそっちにしとけば良かったかしら? なんて思いながら、出てきた単語にふと昔の記憶が思い出された。
「そういえば、メメットとはあのお茶会で出会ったのよね」
他の令嬢は腰を抜かしていたりしたのに、メメットは揺るがなかった。
それでお互いに興味を持って、交流が始まったのだ。
「懐かしいわ……」
「思えばあの時が、今に至る一つの分岐だったのかもね」
「俺の分岐はいつだってメルティにしか行かないぞ」
「……(イルナに会いたい)。」
こうしてわいわいと食事をするのがすごく楽しくて、普通の事がこんなにもありがたいものだったのだと……騒動が終わりを迎えた今、強く思う。
この幸福が続きますようにと、またちょっとしたお喋りを皆でしながら願った。
もう少ししたら、眩いほどの命きらめく夏が、やって来る――――。
これにてメルティ達のお話は一旦完結になります。
お読みいただいた方、また連載中ブックマークや評価をしていただいた方、どうもありがとうございました!
もしかして読者がいないままなんじゃないかとか思いながらの初めての小説投稿でしたが、反応がいただけ、最後まで書き切ることができました。
本当に、ありがとうございました。
思うところありましたら、感想や批評、ポイント☆1から5の評価等、反応いただけたら幸いです。
次のお話はまだ練り練りし中です。
またお会いできたら、とても嬉しく思います。




