63 目覚めと微睡
――ここ、は?――
フッと目が覚めると、見知らぬ豪奢な天井が見えた。
体はまだ重く、うまく持ち上がらない。
ベッドの傍らを見ると、腕を枕にした見知った頭髪が、さらりと動く。
「クリス……?」
「目が覚めたのか! メルティ、どこかおかしく感じるところはないか?!」
「……喉が、渇きました。あと、まだ……体が動かせそうにない、です」
「他は?」
クリスのその言葉に、なんとか動く範囲で頭を左右に振った。
彼はほっとした顔をすると、私の頭を撫でてくれた。
「果実水に混入された薬物を飲んだんだ。解毒剤は飲ませたけれど、二、三日は安静にするようにと従医が言っていた」
「ここは、どこですの?」
「王宮にある俺個人の客間だ。近いのと、医者が常駐しているからここに運んだんだ」
婚約者特権だぞ? と、クリスがわたくしの気分を上げられるように、体を起こしてくれながらおどけて言う。
体を支えながら水の入ったコップを口に持ってきてくれ、飲み干すと人心地がついた気がした。
「まだ体がしんどいだろう。もう少し休むといい」
宝物をしまうようにそっとベッドに戻されると、しっかりと掛け布団がかけられる。
ぽんぽんと、心地よいリズムでお腹あたりの掛け布団をたたかれ、段々と、うとうとしてきた。
瞼が沈む。
微睡の中で、クリスが額にキスを落とした気配が、した――。