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62 殴り殺したいと嬉しくてすりすり

「ここにいるのはわかっている! 開けるんだガイアーク=ルミナリク!!」

「ちっ。これからってところで」


 彼はこの状態で発覚はしたくないらしく、私を掛け布団の中に押し込むと、身だしなみを整えドアの方へ近寄って行った。


「今開けます。どうかしまし……っ…! 何をするんだ!!」

「…………婦女暴行、薬物使用の罪でお前を捕縛する」

「僕はやっていない! 何かの間違いだ!!」


 ダン!


「五月蝿い黙れ!! これでも殴り殺したいのを我慢しているんだ。これ以上無様な戯言(ざれごと)はやめてもらおう!!」

「…… わたくしが、全てお話しいたしましたのよ、ガイ様」


 わたくしからは見えない所で衛兵がルミナリクを拘束したらしい。

 一言言ってやりたくなって、最後の気力で起き上がる。

 ベッドに何とか座ると、床に押し付けられ這いつくばり、後ろ手に拘束され、鋏が鼻先で床に突き刺さっている彼が目に入った。


「ふっ…いい気味、です、わっ……」

「…………あら、まだ本懐(ほんかい)()げてなかったんですの? ほんと、しようのない人だこと。おしゃべりする前に、とっとと剥いて食べた方がいいですわと、健気にも言いましたのよ? わたくし」


 まるで果物でも食べるかのように、彼女――リリッサが言った。


「な、ぜ……」

「だってわたくし、ガイ様を愛してますの。愛しい彼のお願い事は、叶えてさしあげたくなるでしょう?」


 それに、と彼女は私が見たこともないようなうっとりと薄暗い顔で、続ける。


「大っ嫌いなあなたが、ぐちゃぐちゃに壊れてしまえばいいと、ずうっと思っていましたの」


 無邪気に、ガイ様も気持ちいいしわたくしも気が晴れて一石二鳥ですのよ、とリリッサがさらに続けた。

 その言葉に衝撃を受ける。


「!! メルティアーラっ!!!!」

「く、りす……」


 姿勢を保っていられず倒れそうになるのを、慌てて駆けつけ彼が支えてくれた。

 これ以上聞いていたくないわたくしの気持ちがわかったのか、クリスはすぐさま衛兵に二人をしかるべき場所へ連れていくよう指示を出す。

 クリス以外いなくなったその場所で、助けてくれたのが嬉しくて思わずわたくしは、クリスの胸元にすりすりしてしまっていた。


「とっっっても気色悪かったん、ですの。…っふ、なのに、なんか、わたくし風邪をひいたように、なっていて……」

「!!」


 何故か慌てている彼は、わたくしから体を離してベッドの端っこまで行った後、はっとしたように小瓶を出した。


「わかった、わかったからメルティ、な? とっとっ取り敢えずこれを飲んでくれないか?!?!」


 なんでしどろもどろなんですの。

 しかもこのきょり……寂しい。

 なんとなくむっとして、飲むのをこばむ。


「いやですわっ。わたくし、もっとっ、くりすとくっついていたい、っんですの! ……いや?」


 わたくしはなんだか心細くなって涙目になりながらも、動かない足を叱責し四つん這いになって彼ににじり寄る。


「……すえ、ぜん…………いやいや違う待て待て俺首と胴体が泣き別れる」


 くりすがよくわからないことをいっているわ。

 そう思っていたら、彼は無表情になると小瓶の蓋を開け中身を口に含むと、わたくしに口付けて流し込んだ。

 びっくりしたわたくしは、体から力が抜け落ち、そのまま意識も失ったのだった。

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