61 最後の抵抗
「な……で、こんな、……」
「基本的には遠方から来たお客様用の部屋だよ。けどどちらかといえば、こういう目的で使われる方が多いらしいけど。大人って、ずるいよねぇ」
ま、僕も後もう一年たたずでその大人の仲間入りだけど、ね。とルミナリクが言いながら、ドアのそばから余裕たっぷりに歩いてくる。
そしてわたくしをひょいとかかえるなりベッドへと投げ下ろした。
「やっ……!」
「メルティ、ずっとずっと好きだったんだ。婚約者が変わる度、君は僕のものなのに!! って、奴ら全員切り刻んでしまいたかったよ……ああ、やっと一緒になれる……」
言うなり触ろうとしてきたのをはたき落として後ずさる。
わたくしは怒っていた。
「嘘を、言わないで!! あなたわたくしを貶していたでしょう?!」
「……ああ、あれは若気の至りさ、好きなのを隠したくてね。格好つけたい頃があるものなんだよ男って」
「勝手な、事、をっ……!」
怒鳴ったからか、熱が高くなった気がする。
頭がうまく回らない。
「そろそろ本格的に効いてきたかな?」
ぎしっというマットレスが軋んだ音と共にルミナリクの手が伸びてくる。
後ずさろうとしても壁付けのベッドにもうその余白はなかった。
頬を触られた。
「気色、悪っ……!」
言いながらも少しぞわぞわする。
自分の体が自分のものではないみたいだった。
「うん、顔がとろんとしてきた、かな? 自白効果がこういうことに使うには向いてないかも」
彼はぶつぶつ独り言を呟くといきなり唇を降ろしてくる。
口をこじ開けようとするそれを容赦なく噛んだ。
バシン!
「抵抗しないでくれないかな? 手荒な真似はしたくない」
彼は口を歪めながらそう言うと、わたくしの頬を打った後の手を口に当てた。
どうやら怪我をしたらしい。
少し胸のすく思いがした。
頭がくらくらする。
もうこれ以上の抵抗を出来る力が、残っていなさそうだった。
御膳立てされていたのか、サイドテーブルの上に置いてあった鋏をルミナリクが手に取りスカートを切り裂く。
太ももに当たった空気が、やけに冷たく感じた。
「……て、クリス……」
ドンドンドン!!