53 お互いの想い
「メルティアーラ。改めて君にきちんと申し込みたい。……好きだ。俺の傍らに、どうか居て欲しい。誰にも、もう奪られたくはないんだ……」
熱のこもった瞳に逃げられない心持ちになったけれど、それがとても心地よくて。
「はい、わたくしもお慕いしております。……わたくしの心は、クリス様にしか捕られていませんわ」
するりと、自分の気持ちが口をついて出ていた。
お返事、ちゃんと伝わったかしら? と、顔を赤らめていると、ぎゅっと抱きしめられる。
肩に顔を埋めて、クリス様はまたちょっと、泣いているらしかった。
「……必ず、守る」
「はい。出来る限りで、守ってくださいませ」
「出来る限りでは嫌だ」
「殿下のお立場では、できない時もあるのでは?」
「関係ない」
「駄々っ子みたいですわよ?」
「嫌なものは嫌だ。やると言ったらやる!」
肩口で喋られているからか、少しくすぐったいのもあって、その物言いについ笑ってしまった。
「ふふふ、殿下ったら」
「……クリス、だ。次違ったら返事をしない」
「クリス、様?」
「ク・リ・ス」
「…………クリス」
愛称で呼ぶと、ゆっくりとクリスが顔を上げまた頬に手を当ててきたが、今度はその親指が私の唇を、つ、となぞって離れていく。
「メルティアーラ……愛してる」
彼はそう言うとそっと、私に口づけた。