3 入学式と気配
とは言ったものの。
今年の春から王立学院に通うことになっていて、明日はその入学式。
「落ち込んでいても何もできなくなるだけだわ……」
やはり令嬢らしからぬ立ち直りで、ミルクティーをゆっくりと飲み干すと明日の準備に取り掛かるのだった。
王立ココロリア学院。
令息令嬢が通うこの学院は、十五〜十七歳の成人前の三年間成年貴族としての基礎となるマナーや、一般的な学問、教養や武術その他諸々を学べるよう設立されたという。
門戸は開かれていて、平民でもある程度の資金があれば自分の学びたい分野だけ選択して修めることも可能という事で、敷地には多種多様な人々があふれていた。
「……聞きしに勝る、ね……!」
想像もつかなかったその規模に、感嘆を込めて呟きながら思わず門で立ち止まる。
すると何故だか周りのそこかしこで、こっそりこちらを見る気配がした。
今日のわたくしの出立ちは、普通に着こなした学院の制服のはずだけれど……。
慌ててワンピースタイプのチョコレート色をした制服を見回すけれど、赤い胸元のリボンが曲がっていた以外には特におかしなところはない。
とりあえずリボンはきちんとしてしまわなくては、といそいそと手直しする。
「……もしかして、噂は学院内にまで広がっているの……?」
ぽつりとこぼしたと同時に「きゃっ」「あれってもしかして…!」と、女生徒の声があちこちから上がり、それは特に背後からガヤガヤとした音となって聞こえてきた。