26/109
26 切り株と男の子
「かくとうごっこが、どうしたって?」
不意に背後から声がしてびっくりして切り株から落ちる。
「だ、だだだだ大丈夫か?」
声のした方を振り返ると、慌ててかけってくる男の子がいた。
手を差し出されたので、握り返して助け起こしてもらう。
「ええと、ありがとう」
「いや、オレがびっくりさせちまったし」
ぽりぽりと人差し指で頬を掻きながらその子は言った。
歳は私と同じくらいだろうか。
日焼けした体躯は年齢よりもいくらかしっかりして見えたけれど、にっこり笑ったその顔には、あどけなさがあった。
「この辺の子?」
「ん? あっ、ああ、あっちの方に住んでんだオレ」
彼はそう言うと小高い丘の方を指差した。
そして切り株をポンポンと叩くと、すわろーぜ!とにっかし笑う。
その言葉に一緒に切り株に座ることにすると、腰掛けたあたりでその子が話しかけてきた。
「お、お前は? こ、こっここらじゃ見ない顔だけど」
「私の家は王都の方よ。こっちへは、家族と、遊びに……来たの……」
言っている間に後悔が押し寄せてきて、涙声になってしまう。