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2 紅茶とため息

「お幸せそうに帰ってらしてよかったわ」


 何度目かになる安堵のため息をつきながら、侍女のアンナが紅茶を入れるのを眺める。


「けれどこれでまたお父様のお仕事が増えてしまったわね」

「旦那様は、愛娘が家にいる期間が増える! とスキップしながらでてゆかれましたよ」


 お茶菓子を用意しながら、アンナがわたくしにお父様の様子を教えてくれた。

 ――当主がすきっぷ……、良いのかしら。

 まぁもう我が家に威厳も何もないのかもしれないけれど。



 わたくしはメルティアーラ=エルンスタ、ここウルリアン王国の公爵家長女。

 兄弟はわたくしを入れて四人。

 お父様もお母様もご存命で仲(むつ)まじく、お父様は宰相としてこの国に貢献されていて。

 お母様は社交界の華と名高かったようだけれど、家ではそう――女傑?という方がしっくりきてしまう感じでお父様の首根っこを掴んでいらっしゃる。

 お兄様たちや弟はお母様に似て麗しく、周りの御令嬢方の噂に度々のぼっているのをちらほら聞く。

 わたくしといえば、お父様似の蜂蜜色の髪に茶色の瞳がちょっと垂れめで可もなく不可もなく?と言ったところかしらと自分では思っている。


「それにしてもこの三年で十組、……いいえ、さっき増えたから十一組ね……いったいわたくしの何がこう、引き寄せるのかしら?」


 少し不貞腐れた面持ちで、令嬢にしてははしたなく頬杖をつきながら独りごちる。

 そう、もうすでに十二度ほどわたくしは婚約を結んでいてその全てを解消している、理由も全部「他に好きな人ができたから」。


 思えば(ここの)つの頃から婚約者がいて、最初の頃は自分の王子様! と思って一生懸命好かれたくてお茶会を開いてみたり、お好きなものを差し入れしようとお話を頑張っていた。

 噂を知ってからは、何がそうさせたのかわからなくてでも期待されていて、兎に角同じ効果がありますように、と祈りながらそれ以前にした行動をやっぱり一生懸命頑張って……。


 最初の婚約から六年…切れもせずに十二組もよく縁組が来たものだけれど……


「少し、疲れたわ……」


 ぽつりとこぼした小さな呟きは、ミルク渦巻く紅茶に吸い込まれていった。

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