15 握手の効果
困惑している間にも、ちらほら登院してくる生徒が増えてくる。
廊下にちらりと目をやると、数日前に爆弾を落としていったあの方のキラキラした髪が見えた気がした。
目の前のマリアンヌ様はまだとうとうととにかく素晴らしさを語っている。
わたくしのことではないようでいたたまれなく、口を挟むことにした。
「――その微笑みは天使様とみまご「マリア、その、それはよくわからないけれど、このご親切の理由を伺っても?」
え、何でわかってもらえないの?!とぶつぶつ言いつつも、理由を話していなかったことに気がついた彼女は、要点をまとめて話し始めた。
「実は昨日医療室で想う方から色良い返事をもらえたんです! これもメルティアーラ様のお力添えのおかげです!」
なのでお礼をさせていただいたのですが、昨日のこともありますし……と、ぽぽぽぽぽとまた頬を染めながらマリアはもじもじしている。
「わたくし、昨日以外貴方に特に親身になったりは「そのお手自らで私に良縁を運んでくださいました!!!」
ふんすと令嬢としてはマイナスとも言える興奮っぷりでずずいとこちらに体を近づけると、彼女は言葉を続ける。
「数日前に握手していただきましたよね? 実は、以前から“良縁”のお噂をきいていまして……。私は女ですから婚約はできませんが、少しでもお力添えいただきたくて……神様の石像を触るように、メルティアーラ様のお手を握らせていただいたんです」
マリアの言葉にまわりの級友達からどよめきが上がる。
そこかしこで、「握手で……」「本当に?」等々ぼそぼそヒソヒソ言う声が聞こえた。
これは……とても、まずいわ。
「マリア、あのね――」
その言葉を否定しようとしたその時、無情にも授業開始のベルが鳴ってしまった。
ザワザワしながらもみんなが席に着いてゆく。
わたくしは次の長めの休憩時間を思って少し、いやだいぶ憂鬱にならずにはいられなかった。