13 護身術の授業
メメットと話した次の日。
相変わらずのちょっと遠巻きな空気のなか、学院の護身術の授業を受けていた。
男子は長剣、女子は体術をそれぞれ習う。
そんな中わたくしだけ、どうも浮いてしまっていた。
「エルンスタさん、貴方どこかで体術を習っていたの?」
「ええと……習っていたというかなんといいますか……、わたくし、諸事情で剣術と体術は身につけております」
「あらそうなの? それは素晴らしいわ。……けどどうしましょう、ペアを組むに難しいかもしれないわ」
「先生、力加減は心得てますので、体術の方ご一緒させていただきたいですわ。長剣はきっと足手纏いになってしまいますし」
「そうね、ではボヌルバさんのお相手を頼めるかしら?あの子ちょっと……、そう、しっかり付き添ってあげたほうが良さそうなの」
まだ年若い体術の先生に了承の返事をして、各々二人一組で型の確認をしている学友の間を縫うように歩く。
マリアンヌ様はどこかしら?あ、いたわ。
鍛錬場の端の方に何やらギクシャクと右に左に揺れている彼女がいた。
その動きを見ながらどういった声の掛け方がいいか思案していると、わたくしは視界の右端で足を滑らした男子生徒を捉えた。
「!!」
わたくしは瞬時に近くの男子に失敬と声を掛けながらマリアンヌ様目掛けて走り出した。
「マリアンヌ様しゃがみなさい!!!」
彼女は突然のことにぱっちりお目目をこぼさんばかりに驚きつつも、指示に従った。
その様子を見てとり安堵しつつ、わたくしは辿り着いた先で少し右に向けつつ手に持った得物を上段から叩っ斬るようにして振り下ろした。
ガキィィィィィン!!
金属音がして飛んできた長剣が地面に転がる。
暫くぶりだとやっぱり程度が落ちてますわ――。
だいぶ痺れる手に心の中で独りごちる。
周囲を見まわしてもう何もないことを確認したところで、わたくしはマリアンヌ様が無事かを確認するために、振り向いて片膝をついた。
不躾かしらと思いつつ彼女の無事を頬、肩、二の腕と、手のひらでも確認してゆく。
「マリアンヌ様、どこも痛いところはない? 触れたところは特にお怪我はないようですけれど、院医にもきちんと見せましょう」
「は…………はひ」
怖かっただろう彼女に安心してもらえるよう微笑みつつも、先生に声をかけ医療室へ向かう算段をつけた。