12 わかられると噂
「そもそもわたくしの噂って言っても、“良縁”と、“踏み台”しかないのじゃない?」
「え、うちのクラスで一人、可愛いなぁって言ってる人いたわよ?」
「……かわっ?!」
縁遠い単語に目が白黒する。
ふわふわウェーブのかかった琥珀の髪に、くりりっとして艶やかな知的好奇心を映した黒い瞳。
ちょんとのった鼻にぽってりした唇は桜色で、入学早々周りがざわざわしたのは記憶に新しい。
そんな彼女がわたくしのことをかわいいだなんていうものだから、作り話で慰め「作ってないからね?」
……わたくしの考えていることが、わかられた?!?!
「じゃあきっと、飼っている猫とか犬とかに似ていたんだわ、わたくし」
「相変わらずなのねぇメルティったら」
まぁ良いけど、と言いながらメメットはずぞぞぞぞと飲み物を吸い込みきった。
そんな彼女にわたくしは、今朝お兄様から告げられた秘密のようなものを打ち明けることにした。
「そうではないのよメメット。今朝お兄様からお話があって、王子殿下は思い人との良縁を願っておいでのようなの。荷が重いだろうからわたくしには逃げても良いと、助言もあったわ」
「え、王族なんだから直で言っちゃえば良くない?」
「そこは…………よく、わからないのだけれど」
確かにそうだわ。
上の立場で請われれば、ほとんどは受け入れられるだろう。
では、何故…………?
……何かが起ころうとしてる――そんな予感がして、わたくしは思わず胸の上に当てた手を、ぎゅっと握った。