10 浸透と不信
メメットの知るところによると、わたくしの噂は、親から子にそれとなく伝わっているらしかった。
――ただし、子ども特有のからかいめいた言葉と共に。
多数の婚約解消は“良縁の為”から、“わたくしが至らないから”と。
他者と比べるのにちょうど良い指標――踏むのが当たり前の踏み台の様だと、いつからか踏み台令嬢と二つ名がついたようだ。
「それも最近少〜しかわってきてるのよね。どうも第三王子殿下が、メルティの事『“春告げる君”はどの子だい?』だなんてさがしてたらしくって」
予想外というか、そうであってほしくなかったというか――。
数日前にあったあの出来事を思い出してむせかける。
わたくしの紅茶はわたくしがお守りするわ――!
自分でもよくわからない使命感で吹き出すのを死守すると、多分真っ赤になってるだろう頬が緊張感を無くさせている顔を、どうにかきりりとさせてメメットの方を向き口を開いた。
「そ、その噂って、どのくらい浸透しているのかしら?」
「えーっと、…………ほぼほぼ?」
目線を左上にし、右人差し指を頬に当てメメットが答える。
その声は何だか人ごとのようでしかも少し楽しそうだ。
まぁ、確かに彼女にとっては人ごとだけれども。
「……ということは、殿下にあったが最後、わたくし殿下の恋の橋渡しとして全力を尽くさなくっちゃいけなくなる、って事よね……」
「え、何でそんなことになるの。もしかしたら噂を聞きつけて良い子だからって今度こそ本気の求婚かもしれないじゃない!」
メメットのその言葉に思わず顔がすん、となる。
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