【8話】いじめられっ子キャラの登場
今回は文字ばっかですいません!
今日頑張ってもう一話投稿するつもりなのでよろしく!
コメント待ってます。
新学期が始まってから一か月ほど経ち、新しいクラスになったり、二年生に進級したことで少し浮ついていた空気も少し落ち着いてきた。
今は、四限の授業が終わって昼休みだ。
クラスには、それぞれグループができ始め、コミュニティがある程度完成する。
このコミュニティは、今後の学校生活を左右するとても重要なものだ。
このクラスで一年間どのような生活が送れるか決定するものである。
花菜や圭人はクラス委員でもあり、持ち前の容姿とコミュニケーション能力の高さから、クラス内のほとんどの生徒と仲良くなり、クラスカーストのてっぺんを獲得している。今もたくさんの友達に囲まれながら昼食を取っている。
鈴華は、その性格のクールさから女子から人気があり、よく体育系の部活の女子たちと一緒にいることが多い。クールだけど脳筋なとことがあるからなあ、鈴華は。実際、頭良くないし、この学校もギリギリ受かったぐらいだし
黒瀬は、その正義感の強い優等生的な性格から、男子とは仲良くせず、ある程度の女子とは仲良くしているのも見受けられるが、やはり、一人でいることが多い。休み時間や昼休みも常に勉強しているため、会話や交流することができないのも一つの要因だ。
高校では、友達とつるんでいることが正義とされ、一人でいることは悪とみなされる。そして「ぼっち」という蔑視された烙印を押される。そんな価値観が学校という狭いコミュニティには根強く定義されている。
この定義でいえば、黒瀬は一人でいるため、ボッチと烙印を押されるとが普通だが、持ち前の正義感や努力で得たであろう学力、それに凛とした姿勢から、彼女は「孤独」ではなく、「孤高」であると見なされている。
ちなみに俺はこのクラス内では「ぼっち」と定義されているが、特に気にしていない。
俺も黒瀬と同様、時間は基本的に無駄にしたくない質であるため、休み時間や昼休みは基本、英単語帳や古文単語長などで勉強している。
もちろん、たまには親友の圭人と話したり、幼馴染である花菜と昼食を取ったりしている。鈴華にも話しかけたりしているが、基本無視される。これは悲しい。黒瀬は嫌っているため話しかけたりはしない。
ともあれ、俺は俺で充実した学校生活を送っているため、全然ぼっちではないのだ。
ぼっちとは、たぶんああいうことのやつを言うのだろう。
俺は視線を俺と反対の廊下側の一番後ろの席に目を向ける。
そこには、両耳にイヤホンをつけてまるで教室の空間を切り離すようにしながら、うつむいてお弁当を黙々と食べている男子生徒がいる。
その生徒の名前は、吉田拓郎。何時ぞやの放課後教室の前で俺とすれ違った眼鏡をかけた男子生徒。黒髪で長く伸ばした前髪で顔はよく見えない。今年から同じクラスになったが、一言も話していないため面識はないに等しいい。
てか、クラスで誰かと話しているところを見たこともない。
一度、圭人が持ち前のコミュニケーション能力で話しかけたが、返事は「ああ」とか「うん」とかで全く会話のキャッチボールが成立していなかった。しまいには、トイレに逃げ込んでしまった。
ということもあってか、クラスの誰も吉田に誰も話しかけないし、もちろん自分から話しかけることもなく、ぼっちに定義されてしまっている。
まぁ、それはおいといて、四限の授業は始業式後に行われた一年の総復習のテストの返却だった。
俺の結果は学年2位。1位はいつも通り黒瀬だった。
俺は数学以外の教科は満点だったが、数学のテストは一問計算ミスをしていたため、96点だった。それに引き換え、黒瀬は全教科満点だった。
また負けた!俺は、前の座席にいる黒瀬に視線を向けると、黒瀬はこちらを向いてニヤリと薄ら笑みを浮かべていた。
クソ、あの野郎。俺のことをあざ笑いやがって。あのどこが優等生だよ!嫌みったらしいったらありゃしない。
ちなみに圭人には「また負けたのか」と苦笑され、花菜には「もう、黒瀬さんを追いかけるのはやめて私に乗り換えなよ」と揶揄いながらスキンシップを図ってきた。
俺は全力で拒否したが、クラスの男子にはいちゃついて見えてしまったため、「ムカつく」とか「死ねばいいのに」など明らかに聞こえるような陰口に心傷んだ。
花菜はそれを見て大爆笑している。
絶対わざとだ。あいつ、俺をおもちゃにして遊んでやがる。
なんで、こんな性格になってしまったのか。昔は素直で優しい子だったのに。今は悪戯好きの小悪魔にしか見えん。可愛いのもあるけど。
そして、放課後になり、今日も気分が乗らないため、嘉人にラインで部活を休むことを連絡する。
結局、新学期始まってから一度しか部活に顔を出していない。そのため、後輩とは一度しか顔を合わせしただけで、後輩からはサボり魔みたいな扱いをされているらしいと嘉人から聞いた。
ぶっちゃけそうだし、俺以外のサッカー部の部員は休むことなく活動しているため俺がサボり魔であるのは事実である。だが、見下されているのは癪に障るので今度、実力で黙らせよう。
そして、例によって俺は図書室に訪れた。また例によって、先輩も席に座って本を読んでいた。
俺は勉強し、先輩は本を読む。ときどき、今日あったことや最近の流行、読んだ本の感想など会話しながら過ごす、先輩と二人きりのこの時間。俺はとても気に入っていた。
「今回も2位だったんだね。ドンマイ」
「2位だったことはしょうがないんですけど、黒瀬に笑われたことは許せないですね」
俺は黒瀬にテストで負け、笑われたことを話す。
「ふふ、黒瀬がそんなことするとはあまり信じられないな」
「いや、あいつ意外と腹黒いんですよ。俺に嫌がらせするときもあるし、テストで負けた時は笑ってくるし、副委員長まで押し付けられたんですよ」
みんな、黒瀬の優等生の一面に騙されている。俺には魔王に見えるわ。倒せないくらいに強いし、邪魔はしてくるし。
「ふふ、黒瀬は笹原君にしかそういう一面を見せないんだね。黒瀬さんは笹原君のことを一番信用してるのかもしれないね」
「そんなんじゃないですよ。第一あいつは俺のこと嫌いだろうし」
「まぁ、とりあえずはそういうことにしてあげるよ」
「なんですかそれ」
そんなことを話した後は、勉強に集中し、先輩も小説の世界に入り込んだ。
しばらくして、下校時刻になったため帰る準備をする。
「今日はどうする?」
「今日は使わない参考書置いていくので、教室に寄ってから帰ります」
「じゃあ、ここでお別れだね。さようなら」
「さようなら」
先輩と別れ、教室に向かう。
教室が見えると、三人組の男が教室から出てきた。彼らは同じクラスでバスケ部に所属しているザ・陽キャラである。クラスカーストではコミュニケーション能力と運動がまぁまぁできるため、上位にいる。俺からすれば教室で何かと騒がしく、うるさいので嫌っている。
始業式の放課後と似たような構図だな。この前、すれ違ったのは吉田だったけど。
そんな、彼らとすれ違い、教室に着くとドア付近の机が荒らされていて、それを一人の生徒が涙を浮かべながら片付けていた。それは、吉田だった。
この光景を見ただけで、一瞬で想像がつく。これは、いじめだ。
嫌がらせで、机を荒らされ、揶揄われて、悪口を叩かれて、暴力を振るわれる。ただ、性格が合わないとか、空気が読めないとか、陰キャとか、ぼっちとかそんな理由で。
そんな理不尽が、学校という狭いコミュニティでは普遍的に存在している。
だが、関わるのは面倒だし、俺には関係ないので特に関与しない。
俺は、そんな吉田の横を通り過ぎて自分の席に向かって、バックから参考書を取り出し、ロッカーに入れる。
吉田は教室に入ってきた俺に気づき、視線を向ける。
俺は、それを無視して参考書を置いて、ロッカーを整理し、教室を出る。
グッと制服の袖を掴まれた。吉田は地べたに這いつくばりながら俺の制服の袖を引っ張っていた。
「なんのようだ?吉田」
要件は分かっている。だが、決して俺の口からは言わない。
面倒ごとが嫌いだからだ。こいつを助けたところで俺に利はない。時間の浪費だ。
だが、俺にも少しの良心はある。もし、吉田が俺を頼ってきたらその時は、
「さ、笹原君。僕のことをた、助けてほしんだ」
俺は、全力でこう答える
「断る!」 と