【79話】鈴華の試合 後半戦②
インターバルのあと第四クォーターが始まった。
なんとか第三クォーター終了間際15点差まで追い上げたもののまだ点差は大きい。
開始早々、葉山にボールが渡る。
「周りから崩そうかなって思ったけど、いいや。真正面から潰すよ」
葉山が仕掛けてきた。
これ以上点差を広げるわけにはいかない。
スリーポイントを最警戒して間合いを詰めると、素早いドリブルで抜かれる。
さすがの速さ。
だけど、負けるわけには行かないんだよ。
私は抜かれた後、後ろからボールを取りに行く。
しかし、あっさりと躱されシュートモーションに入いられる。
「まだまだあなたじゃ、私を止められないよ」
「私だけじゃね」
「オラーッ!」
死角からマイがボールを弾き、シュートブロックに成功した。
「なに!?」
、「よっしゃー!」
「ナイス、マイ!」
今度は私たちの攻撃。
私はボールをもらうと、ドリブルを仕掛けて一人を躱す。
そのままゴールに迫るが、葉山に進路を塞げられてしまう。
急停止して、すぐさまジャンプシュートに入るが反応されてブロックに跳ばれ、放ったボールは葉山の指先に触れ、リングに当たってゴールから外れる。
「だから、あなたじゃ無理だって言ってんでしょ」
私は一人じゃない。
リングに当たって跳ねたボールをルミが相手を押しのけてリバウンドを拾う。
「よし!」
「ルミ!こっち!」
マークを外してフリーになったアヤナがパスをもらってジャンプシュートを決める。
「ナイシュー!」
「あと4ゴール差」
「絶対に勝つぞ!」
ミナミ、マイ、アヤナ、ルミ、ベンチにいるチームメイトの士気が上がっていく。
笹原は私に教えてくれた。
私にしかできないリーダーを、
私はプレーでチームを引っ張っていく!
私の熱意あるプレー、捨て身の姿に感化されチームメイトも士気を取り戻し、動きが良くなっていくチームメイト。
もう負けてもいいなんて思っている奴はいない。
絶対に勝つ!
「いいね、面白い」
それに当てられてか、葉山のギアがもう一段階上がった。
残り5分。
チームメイトの士気も上がり、点差も9点差と一桁差まで詰め寄るがあと一歩足りない。
チームメイトは奮闘してくれている。
これはエースの私と葉山の差だ。
こいつを超えない限り、私たちに勝ちはない。
「いいチームだね。確かに中学の時とは違うみたいだね」
「まだ減らず口叩く余裕があるんだ」
「まあね、」
ボールを持った葉山に対して先程と同じように間合いを詰める。
「だから、通用しないって」
間合いを詰めた瞬間にドリブルで抜かれるが、想定内。
そのままレイアップシュートを放つ葉山と同時に跳んでシュートブロックに入る。
葉山が強いのはここからの空中戦。
長い滞空時間で上手くブロックを躱してシュートを決める。
「止めてみなよ」
「止めるよ。こざかしいやり方でね」
私は葉山が放つボールをブロックするのではなく、伸ばした手は葉山の顔面の方に伸ばした。
「なに?」
ボールをブロックしようとしても躱される。
だから、葉山の顔面に掌を障害物として、葉山の視線を遮り、ゴールを見えないようにした。
どんなに上手い選手でもゴールを見ないでシュートを決めることはできない。
もちろん、ゴールを見ずとも感覚で決めることもできるが、成功率はがくんと下がる。
案の定、葉山の放ったシュートはリングに当たって入らず、リバウンドをルミが拾い、ミナミが速攻でカウンターを決める。
「やってくれたね」
笹原を見習った相手を分析して、いやらしくこざかしいディフェンス。
完全に止めることはできないが、ある程度抑え込むことができる。
次はオフェンスだ。
特訓の成果を見せる時。
私は味方からパスをもらうとすぐに葉山がマークに付く。
チームメイトは上手く私と葉山との一対一を仕掛けるスペースを作り出し、アイソレーションを行う。
「頼んだぞスズ!」
「決めろよ」
私を信頼してくれて、託してくれたチームメイト。
「随分と信頼されているみたいだけど、簡単には抜かせないよ」
隙のない良いディフェンス。
それでも私はここまでついてきてくれたチームメイトに応えないといけない。
「今までの私とは違うよ」
私はドリブルで切り抜くフェイントをしてスリーポイントラインの外側からシュート態勢に入る。
「スリーか、打たせないよ」
私のシュートモーションにすぐに反応して、ブロックに跳ぶ。
だけど、
「遅いよ」
私は葉山のブロックが届く前に、シュートを放ちそのボールは見事リング掠ることなくゴールに吸い込まれる。
「よしっ!」
「「「オーー!!!」」」
「あの葉山から綺麗にゴール決めたぞ!」
「あの子凄い!」
「氷織すげー!」
葉山から華麗にシュートを決めた鈴華に歓声が上がる。
「くそ、やられた。まさかクイックリリースとはね」
そう、私が打ったシュートはクイックリリース。
通常、ジャンプシュートは跳躍し、最高到達点でシュートを打つのものだが、クイックリリースはジャンプすると同時に放つシュート。
私の弱点は、アウトサイドからのシュート率の低さ。
それはシュートを打つための長い溜めと打点の低さが原因。
ジャンプシュートより打点は低いが、ジャンプと同時に打つ分飛距離は伸び、さらに溜めからシュートを放つまでの時間が短くブロックしずらいという利点がある。
このシュートは中学の頃から練習していた武器だ。
中学時代に伸び止んでいた私に笹原がアドバイスしてくれたもの。
私は観客席にいた笹原の方に目線を送ると、それに笹原がピースサインを返す。
それに少し照れながら私も小さく右手でピースを返す。
また、なんとか葉山の攻撃を止めて、私にボールが渡って一対一。
「さっきみたいなクイックリリースはもう通用しないよ」
先ほどより間合いを詰めて、私のクイックリリースを止めに来た。
だけど、それも想定通り。
私はまたドリブルで切り込むフェイクを入れてクイックリリースを打とうとする。
先ほどよりも素早い反応で葉山がブロックに入る。
私はそのシュートもフェイクで態勢を低く、素早いドリブルで抜き去る。
「ダックインか!?」
そのままトップスピードのままゴールに迫り、ゴール下の相手を躱してゴールを決める。
「「おーー!」」
「また決めた!」
「あの葉山と対等にやり合ってる!」
私が見せたのは、ダックインと言い、ショットフェイクなどでディフェンスを飛ばせる、もしくは上体を上げさせた後に、その横をくぐるようにステップインしてゴールを決めるドリブル業だ。
これも中学の時からの特訓の成果である。
「アウトサイドはクイックリリース、インサイドはダックインでゴールを決める。この二つの武器がきみの秘策なんだね」
この二つの武器で私は葉山を超えて、日本一になる。
それにはまず、こいつらを倒す。
「みんな、絶対勝つぞ!」
「「「「おーーー!」」」
この試合に勝つ!




