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現実主義者の俺が青春ラブコメに巻き込まれる  作者: 小西 悠人
アスリート氷織鈴華編
81/91

【71話】最後のチャンス


 残り時間は一分を切っているだろう。


 相変わらず、黒岩高校の集中砲火の攻撃をなんとか持ちこたえている。


 俺も守備に戻りたいが、この痛めている足で自陣まで戻るのは難しいし、もしボールを奪ってもそこから攻撃に参加してゴールを決めることはできないだろう、


 だから、俺は仲間を信じて前線に一人残ることが最善だ。


 だからと言って何もできないわけではない。


 「三宅!左サイド六番フリーだぞ!」

 「林田!中盤のパスコースを切りながらボールを奪いに行け!」

 「いま、ディフェンスラインを上げろ!」


 一人前線に残ることで、フィールド全体を見渡してディフェンスの指示をすることができる。


 今も俺が指示を出して何とかボールをクリアするが、そのボールは不幸にもゴール前の鬼丸に渡る。


 「これで終わりだ!」


 ペナルティエリア付近でシュートモーションに入る鬼丸。


 彼のシュート力では、全然ゴールに届くだろう。


 「シュートブロック!」


 叫んだ俺に反応して、ゴール前の三宅がシュートコースに入って、シュートを阻もうとするが、


 「引っかかったな」


 鬼丸はシュートをするふりをして、ボールを運びなおして三宅を抜く。


 キーパーと一対一。


 「これで本当に終わりだ!」


 やばい、決められる!


 再びシュートモーションに入る鬼丸が放ったシュートは何かに阻まれる。


 背後から気づかれないように、スライディングした三宅の足に当たって、その威力を失ったボールをキーパーがキャッチする。


 「なに!」


 「残念だったな、シュートフェイントはどっかの天才になんども騙されてるから織り込み済みだ」


 三宅の視線が前線の俺をとらえた。


 毎回、部活の練習で三宅をおちょくってシュートフェイントで騙しているのを根に持ってたらしい。


 「行くぞ!カウンターだ」


 ゴールキーパーが大きく蹴り上げたボール左サイドから上がった林田に渡る。


 そのままスピードに乗って進むが、相手のディフェンダーが追いついた。


 「くそ、」


 「こっちだ、林田!」


 ディフェンスから一人上がってきた部長がボールを要求する。


 この試合ずっと相手の攻撃を耐えて、守備して体力だって限界なはずなのに、


 「部長!」


 林田から部長にパスが通る。


 ハーフラインを超えて、もう少しで俺のところまで来る。


 それを警戒してか、古澤が攻撃から戻って俺のマークにつく。


 「さっきみたいには、行かせないからな」


 部長がドリブルでボールを運ぶが、戻ってきたディフェンス二人に挟まれる。


 「行かせないよ」


 ボールを奪われる寸前で、最後の力を振り絞ってシュート性のパスを俺に出す。


 「あとは頼んだぞ、笹原!」


 そのパスは俺の正面に向かって進んでいく。


 古澤は俺の体勢を崩すために、後ろから押してプレッシャーをかける。


 「こんな強いパス、足を痛めている君にトラップできるはずがない」


 そう言いながらも、あくまで警戒レベルを下げない古澤。


 優秀なディフェンスだ。


 確かに足を痛めて、思う通りにプレーするのは難しいだろう。


 だけど、ワンプレーだけなら全力を出せる。


 そして、俺ならワンプレーで十分だ。


 俺はその強いパスのをアウトサイドでトラップして、そのボールは勢いが弱まりながらも俺と古澤の頭上を越える。


 いきなりのシャペウに古澤は反応できず、体勢を崩してしまい、倒れた・


 シャペウを使って古澤を華麗に抜き去る。


 これでキーパーと一対一。


 相手のキーパーの佐久間は準備できていない。


 準備が整う前に浮いたボールをダイレクトでこのまま左足のボレーシュートを決める。

 

 左足を振り上げて、シュートモーションに入ったが、痛めていた右足の力が入らずに体勢を崩す。


 やばい。


 右膝に力が入らなくて、軸足としてシュート打てない。


 早く打たないと、佐久間と古澤に追い詰められる。


 

 やっぱり、俺はここまでなのか、



 「カズ!決めろ!」


 観客席の方から声がした。


 振り向くと、そこにいたのは幼馴染の花菜と、



 「頑張れ!笹原!」


 昔、同じ夢を見た鈴華だった。


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