【66話】ハーフタイム
今日も私は朝からいつもの公園でバスケの練習をしている。
全国を目指すんだ。一日も無駄にはできない。
中学の時からの思い出が詰まっている公園。
あの時、笹原との約束をしてから一日も欠かさずここで練習してきた。約束を果たすために。
なのに、あいつは逃げた。二人の約束を忘れて、
今日試合を見に来るように言われたけど、逃げたあいつの試合なんて見に行くもんか!
だけど、いつも通り、練習に取り組んでいるつもりだが、ドリブルが手につかない。
シュートが入らない。
笹原のことが頭にちらつく。
あー、もう!
試合は来週なのに、集中しないといけないのに
気を取り直していつも通り、スピードを上げてゴール下に切り込みシュートを放とうとする。
「スズー!!」
いきなりの呼びかけに驚いて、指がかかりすぎて放ったボールが大きくゴールを外れる。
「ごめん、ごめん驚かせちゃったね」
「いきなり大きな声で呼ばれたら驚くでしょ、花菜」
学校で人気者で私みたいな人でも仲良くしてくれる、数少ない友人。
裏切者の笹原と幼馴染らしく、付き合ってるのではないかと噂されているが、そんなはずはない。
こんなに可愛くていい子が笹原の彼女なわけない。
「てか、どうしてこの場所知ってるの?」
「さっきスズの家に言ったら、スズのお母さんが出て、スズがいつもここで練習してるって聞いたからもしかしてここかなーって」
「なるほど、で、何の用?」
転がったボールを拾い、ボールを地面に弾ませてドリブルを始める。
「今、カズ達サッカー部が試合してて、試合に来てほしいってカズが、」
「知ってるよ、誘われたし」
「じゃあ、行こうよ!」
「行かないよ、あんな裏切者の試合なんて」
私は他人の試合を見ている暇はない。
白崎高校に勝つために、葉月に勝つために、
「いいから、行こうよ。今、まだ0対0でみんな頑張ってるんだから」
サッカー部のやつから聞いた話だと、今日の相手は市内では強豪校らしく、勝つのは難しいらしい。
別に笹原の試合が気になったとかじゃなくて、単純にサッカー部のことが気になっただけだし、
「行かないよ。どうせ勝てないだろうし」
弱小チームが強豪校に勝つなんてフィクションの世界だけの話、
実際はただただ、実力の差を見せつけられて、心が折れるだけ。
私たちのチームもそうだ、
私を除いて、戦う前から、白崎高校に勝てないと思ってる。
「もう、とにかくくるの!じゃないと、スズの部屋が可愛いぬいぐるみでいっぱいなのクラスメイトのみんなに言いふらすよ」
「な、なんで知ってるの?!」
「さっき、スズのお母さんに教えてもらった」
クソ母親のやつ、私の秘密をばらしやがって、帰ったら覚えてろよ。
そのまま花菜に手を引かれながら、私たちは駆け足で駅に向かう。
それでも、やっぱり私の心は晴れない。
「あんな裏切者の試合なんて見たくないよ」
「さっきからカズのこと裏切者って言ってるけど、何かあったの?」
「あいつ、私との約束破ってサッカー諦めたんだよ。もう膝の怪我だって完治しているのに、また、怪我がするのが怖いって。あの臆病者が」
手を引いていた、花菜の力が弱まる。
驚いた様子でこっちを見つめ、衝撃的なことを口にする。
「スズ、知らないの?」
「何が?」
「カズの足の怪我、完治なんかしてないんだよ」
「え、」




