【63話】試合当日
あの練習試合からあっという間に一週間が経ち、サッカー部の夏の大会初戦を迎えた。
この一週間、サッカー部は今日の試合に勝つために俺が指揮を執り、作戦を組み立て徹底して練習に取り組んだ。
最初は幽霊部員である俺が、いきなりしゃしゃり出てチームをまとめることに反発が起こると思っていたが、三宅の説得、俺の実力、そして俺が頭を下げて、
「晴人部長のためにも力を貸してほしい」
と頼み込んだこともあってすんなり俺はチームに馴染むことができた。
まだ六月後半だけど、気温は高く、湿度も高くて体力を消耗しそうだな。
「今日はよろしく頼むぞ笹原」
試合前のアップを終えて、給水している三宅。
「ああ、決して勝率が低い戦いじゃないからな」
「笹原の作戦がはまれば勝てるもんな」
俺は鈴華に戦うことを約束した後、何度も黒山高校の練習や過去の試合の動画などを見て徹底的に分析した。
どういう戦術で来るか、どんなプレイヤーがいるか、ストロングポイントは、弱点はどこか徹底的に調べ上げて、作戦を組み立てた。
「まぁ、最大限のことはやったからあとは本番で勝つだけだ」
久しぶりの試合に心躍っている自分がいる。
「おーい、一真応援しに来てやったぞ」
グラウンドの外から声が聞こえてみると、圭人、花菜、吉田、黒瀬の四人が応援に来てくれた。
「圭人と花菜はともかく、吉田と黒瀬も応援に来てくれるとは思わなかったよ」
吉田は引きこもりだし、黒瀬はめんどくさがって来なそうと思ってた。
「僕が笹原君の試合を見ないわけには行かないでしょ、イラストの参考にさせていただきます」
吉田の手元にはスケッチブックがあり、趣味であるイラストを描くために来たのだろう
応援半分、趣味半分てとこかな。
「私は純粋に応援しに来たのよ、この前の球技大会で笹原のプレー凄かったから」
そうか、黒瀬はあの時の球技大会の試合を見ていたのか。
「今日も頑張っていい試合にしてみせるよ」
「うん、期待してる」
しかし、試合を見に来るように言った鈴華の姿はなかった。
「鈴華は来てないか?」
「鈴華ちゃん?見てないよ」
「そうか」
やっぱり来てはくれなかったか。
嫌われてるもんな。
「今日はカズのために精一杯応援するから絶対勝ってね!」
「おう、最善は尽くすよ」
俺は四人から激励の言葉をもらって、コートに戻る。
試合前のミーティングを行う。
一週間練習してきたこと、作戦の最終チェック。
一通り確認したあとに、最後に全員で肩を組み、円陣を作って晴人部長からの言葉。
「今日まで僕についてきてくれて、ありがとう。正直相手は格上だけど、今までの練習通りにすれば必ず勝てる。勝つぞ!」
「「「オーーー!」」」
晴人部長の掛け声から盛り上がるチームメイト。
コートに入ると見知ったやつから声を掛けられる。
「久しぶりだな、笹原元気してたか?」
「久しぶりだな、鬼丸。まぁ、ぼちぼちやってるよ」
やつは鬼丸海斗。
同じ地区でサッカーをしていたのでよく知った中だ。
一時期、県選抜で一緒にプレーしたこともある。
「怪我した後、サッカー引退したと思ってたよ」
「引退したんだけど、やり残したことがあってね。今日は勝つよ」
「ふん。やってみな!」
そして、試合のホイッスルが鳴る。
「誰があいつの試合なんて見に行ってやるもんか」




