【59話】鈴華と一真の過去 中編②
お久しぶりです。
忙しくて大変なんですが、ちょこちょこ書いていくつもりなので暖かく見守ってください
右膝前十字靭帯断裂
試合中ドリブルで相手を華麗に抜き去った後、相手ディフェンダーの後ろからの悪質なファールをくらい、上手く着地ができず、そのはずみに怪我を負った。
日常生活を送る分には不都合はないらしいが、サッカーのような激しい運動量を伴うスポーツは難しいらしい。
手術をする必要があり、成功したとしても半年から一年の長期期間のリハビリが必要で、後遺症が残るかもしれない。
前と同じようにプレーするのはできないかもしれない。
彼はいつもの放課後、公園で右膝に痛々しい包帯を巻き、松葉杖をつきながら私にそう伝えた。
私は、涙が出そうになった。
私は彼がどれだけサッカーに費やしてきたか知っている、どれだけサッカーを好きか知っている、どれだけサッカーを愛しているか知っている。
そんな彼がこんな理不尽な形でサッカーを奪われるなんてひどすぎる。
でも、一番悲しいのは彼なのに、私が泣くなんて許されない。
私は泣くのを必死にこらえる。私以上に悲しいはずの彼の顔が見れない。
絶対に泣いてるはず、落ち込んでるはず、絶望しているはず。
そんな彼の顔を私は怖くて見れない。
頭の上に私より少し大きくて、暖かい手が乗った。
「そんな顔をするなよ」
彼の顔は絶望に打ちひしがれてなどいなかった。
「一真はどうして平気なの?好きなサッカーができなくなったかもしれないんだよ」
「まぁ、少しは凹んだけどな。それでも手術を受けてしっかり治療してリハビリすれば、またサッカーできるようになるしな」
彼はもう前を向いていた。
新しい未来に、
「まぁ、でも治療とかリハビリで復帰するのは下手したら高校生になってからかもしれないけど」
彼も本当は悲しいはず。
それでも、自分の未来のために前を向いている。
私は彼に希望をもらった。素敵な夢をもらった。大切な時間をもらった。
そんな私が彼にできることは、
「わかった。私、一真が戻って来るまで待ってるから。」
今度は私が一真の希望になるんだ。
いい選手になって、彼の隣に立っても恥ずかしくないように、
「おう、待ってろよ。必ず戻ってくるからな」
「その間に私はもっと練習して、一真を超える良い選手になるからね」
「期待しているよ」
こうして私の一真の秘密の時間は一度、中断になった。




