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現実主義者の俺が青春ラブコメに巻き込まれる  作者: 小西 悠人
アスリート氷織鈴華編
64/91

【54話】熱意のプレー


 延長後半残り5分。


 点差は1対2で負けている。


 相手チームは三宅を含めて現役サッカー部が4人もいるのに対して、こっちの経験者は引退した高橋先輩一人。


 俺が来てから試合を見ていたが、ずっと押されている展開。


 何とか必死に守って、二点で抑えている。


 得点も相手がミスをして、たまたま入ったラッキーシュートだったらしい。


 時間もなく、1点ビハインド。


 ちんたらしている余裕はないな。


 「高橋先輩、俺、ポジションフォワードでいいすか?」


 「ああ、」


 「先輩たちはボール奪ったら前の俺にパスしてください。どんなパスでもいいので」


 「わかった」

 「任せる」

 「頼むぞ」


 「はい」


 バスケでいい感じに体が温まったから、ベストコンディション。


 速攻で決めてやる。


 俺が助っ人として三年生のチームとしてコートに出る。


 「誰だあいつ?」

 「三年生じゃないよね」

 「うん、確かに二年生の」


 「えー、三年生の一人が怪我で退場して人数が足りなくなったため、助っ人として二年生の笹原君に出てもらいます」


 咲空先輩が本部にあるマイクを使って校庭にいる生徒に伝える。


 「なお、笹原君は現役のサッカー部でとても上手いらしいので、皆さん期待してくださいねー」


 「おおーそうなのか」

 「笹原って言えば確か」

 「体育祭でも活躍してた子だ」


 咲空先輩、余計なことまで言って、


 ハードルが上がってしまったではないか。


 まぁ、決めるとしますか


 「おう、笹原。決着をつけるぞ」


 「お前が俺に勝てるとでも。」


 「ああ、俺たちで勝って、お前には大会に出てもらうからな」


 「ふん、やってみろ」


 ピピー!


 試合が再開する。


 ボールは相手に渡って、攻撃が始まる。


 三年生は点数を取られないよう全員べた引きでゴールを守る。


 俺は一人前線に残ってボールが来るのを待つ。


 「笹原、お前には決めさせないぜ」

 「そして大会に出てもらう」


 俺にはサッカー部の二人が密着マークしている。


 サッカー部の生徒には俺のサッカーの能力値が知られているから、警戒されるのも当然か。


 「こっちも勉強のために負けられないんだよ」


 三宅がシュートを放った。

 

 そのシュートはディフェンスに当たり、ボールがこぼれる。


 そのボールを高橋先輩が拾い、


 「笹原!」


 シュート性の強いパスを俺に出す。


 俺はそのままターンをしようと体を相手のゴールに向ける。


 それに反応してマークの一人が俺のターンの進路妨害をしてくるが、俺はそれをあざ笑うように踵のヒールで進行方向との逆方向にトラップして、一人目を躱す。


 「な!」


 俺からボールが離れたのを見て、二人目がボールを奪いに来るが、俺は振り向きざまアウトサイドで相手の股を抜いて、二人目も抜く。


 「マジか」


 そしてゴールキーパーとキックフェイントでこれも躱し、無人のゴールにシュートを決める。


 俺の鮮やかなゴールにコートは沈黙し、


 「「「おおー!」」」


 一気に歓声が上がる。


 「上手すぎる!」

 「かっこいい!」

 「あいつ何者だよー!」


 俺はその歓声に耳を貸すことはなく、そのままボールを持ってハーフラインに置き、


 「さ、早く始めるよ」


 時間は残り2分。


 心もとない時間。早く試合を開始しなければ、


 「クソ、さすがだな」


 「マークどうする?二人がかりでも無理だったけど」


 相手は俺のマークについて話し合いをする。


 正直二人なら何とかできるが、三人マークされたらきつい。


 「いや、マークは俺が付く」


 三宅が申し出た。


 「二人は攻撃に参加して、残りの時間で決めてくれ。笹原は俺がマンマークして止める」


 「分かった」

 

 「任せるよ」


 試合が再開し、またもや押し込まれる。


 俺には三宅一人がマークに着く。


 「いいのか、三宅だけで」


 「ああ、よくよく考えれば、この試合は俺の本気をお前に見せるためのものだ。俺が止めなきゃ意味がない」


 なんとも熱い男、不合理な考え方だ。


 このチームで脅威なのは俺だけなのだから、俺に人数をかければ俺たちに勝つ手立てはないのに、


 そのまま、攻め込まれ、残り一分。


 このままでは俺にボールが来ないまま試合が終わってしまう。


 「仕方ない」


 俺は一人前線に残っていたが、ボールを取りに下がる。


 それに驚いた相手ーチームの一人がミスをしたところを俺が奪う。


 「笹原からボールを奪え!」

 「こいつにボールを持たせてちゃダメだ!」


 俺からボールを取りに来る相手二人。


 俺はそれを冷静にボディフェイントと足技で抜き去る。


 正直初心者のディフェンスなんて相手にならない。


 「「「おー!」」」


 大規模の歓声が上がる。


 昔もこんな感じだったな。


 俺のプレーを見るたびに歓声が上がる。


 その後も一人、二人と抜き去り、残りは三宅とキーパーのみ。


 「ここで止める」


 「じゃあ、止めてみろ」


 俺は両足でボールを跨いでシザースを繰り出し、相手を揺さぶる。


 そして、アウトサイドで右側に抜こうとして、一瞬でエラシコを繰り出しインサイドで左側を抜く。


 「クソ!」


 そしてそのまま左足でシュート、


 「させるか!」


 抜かれながらもスライディングをして、シュートブロックをしてくる。


 だけど、それもフェイク。


 俺は途中でシュートをキャンセルして、ボールを持ち直して、完全フリーでシュートを放つ。


 「まだだ!」


 スライディングで倒れたままの鈴華は倒れたままボールに食いつき、俺のシュートを顔面でブロックする。


 「な!」


 ボールは大きくゴールを外れ、


 ピッピー!


 試合は終了した。


 「おい、大丈夫か!」


 俺はシュートを顔面で止めて見せた倒れている三宅に手を伸ばす。


 「ああ、大丈夫だ」


 「鼻血出てるじゃん」


 三宅の鼻から血が垂れる。


 「鼻血くらい平気だよ」


 手で血をぬぐい、元気そうに振舞う。


 「もう、たかが球技大会なんだからあんまり無理すんなよ」


 「あはは。でもこれで俺の本気は伝わっただろ!さ、PK戦で決着をつけるぞ」


 延長でも試合が決まらなかったら、PK戦で勝敗を決めることになっていたはず。


 しかし、


 「えーと、サッカーは時間が押してまして、今回はPK戦無しの引き分けとします」


 本部にいた先生からのアナウンスがあった。


 「「「えー-!」」」


 観衆からはブーイングが上がったが、もう4時過ぎ。


 当初の予定では3時には試合が全部終了する予定だったのにもう1時間も過ぎている。


 こうなっても仕方ない。


 「け、じゃあ優勝というわけにはいかなかったか。仕方ない、助っ人の件はなしでいいよ。お前にも点数を決められたからな」


 そう言って、優勝できなかったからときっぱり諦める三宅。


 潔い男だな。


 「で、どうするの?笹原君」


 「うわ!」


 背後からいきなり現れた咲空先輩に声をかけられて驚いた。


 「驚かせてごめん。で、君はいいの?大会でなくて」


 「それは、」


 「私は君がサッカーしている姿がとても楽しそうに見えたよ。でも、ちょっと何か引きずってるようにも見えたよ」


 痛いところを突かれる。


 「それに、」


 先輩が振り返ると、


 「笹原やっぱりうめーな」

 「高橋の後輩強すぎ!めっちゃ助かった」

 「むしろ怪我してくれた海斗には感謝だな」


 一緒にプレーした三年生がおれに感謝の言葉を投げかけてくれる。


 「君は自分が力になれないって言ってたけど、そんなことはやってみないと分からないと思うな」


 「俺は、」



 こうして球技大会は幕を閉じた。



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