【53話】助っ人は俺
試合終了。
突然の助っ人だった鈴華をなんとか止めて、優勝。
これでうちのクラスは男女共にバスケで優勝した。
十分すぎる成果だろう。
「よっしゃー!勝ったぜ」
「一真もお疲れ様」
「ああ、圭人と大久保もおつかれ」
バスケのメンバーで優勝の喜びを分かち合う。
こうやって仲間と喜び合うのも懐かしいな。
ベンチに戻ると、試合を見たていたクラスメイト達が拍手と共に暖かく迎えてくれる。
「みんなお疲れ!」
「工藤くん、カッコよかった」
「てか、笹原バスケ上手いね」
クラスメイトに囲まれないよう俺はゆっくりとベンチから離れる。
「お疲れ様」
横からスポーツ飲料水のペットボトルが現れる。
「ああ、黒瀬か。ありがとう」
朝比奈と同じバレーボールに出ていたから、その後はバスケの試合を見ていたのだろう。
「笹原って意外に運動できるんだね」
「意外とはなんだ?」
「なんかガリ勉の印象しかなかったんだけど」
「お前と一緒にするな。てか、体育祭で見なかったのか。俺の活躍」
「見てないよー。保健室にいたから」
ああ、そうだった。
働きすぎて体調崩して、保健室にいたんだった。
「ちょっとカッコよく見えたよ」
少し顔を赤らめながら、俺のことを褒めてきた。
「ちょっとかい!」
でも、前はいつも冷たくあしらわれていた頃と比べると随分打ち解けたもんだな。
最近は、勉強だけじゃなくて友達とも仲良く遊んでいるらしいし、もう完全に立ち直ったな。
「いいの?あっちにいかなくて」
あっちていうのは、今バスケの優勝チームの写真撮影と新聞部によるインタビューを受けている。
「いいよ、面倒だし。それよりめっちゃ動いたからもう帰りたい」
勉強の息抜き程度の気分だったが、誰かさんの登場のせいでとても疲れた。
「そういえば氷織さんもいないね」
あいつもいないのか。
まぁ、インタビューとか苦手そうだし、俺に負けたのが悔しくてどっかに行って反省会でもしてるんだろう。
「じゃあ、俺は教室に戻るから」
「うん、私はみんなと一緒に戻るから。またね」
「おう」
黒瀬は近くにいたクラスメイト達と合流して楽しそうに話をしている。
体育館を出たすぐ先にある、水道に鈴華はいた。
頭から水を被り、熱した脳を冷やしている。
横から見えた鈴華は下唇を噛み、悔しそうな表情をしていた。
女子バスケが優勝しても、俺に負けたのを悔やんでいるんだろう。
元々、チーム力に差があるし、点差もあったから勝てなくても仕方ないのに。
やっぱり、今日の鈴華のプレイを見えいる限り、苦しそうで、どうにも独りよがりに見えた。
パスすれば一点の場面で無理矢理、1人で仕掛けたり、仲間に指示すればいいところを1人で止めようとしたりとなんでも1人でプレイしようとしていた。
鈴華は好戦的な性格でキレやすいこともあるが、常にチームの勝利を優先してプレイするアスリートだ。
なのに非合理的に1人で勝とうとしていた。
それはなぜだろうか?
この前の昼休みに揉めたことと何か関係があるのか?
まぁ、俺にとって知ったことではない。
俺が知らない限りは何もしない。
あいつの戦いなのだから、
教室に戻る途中でふと、三宅との約束を思い出した。
もし、この球技大会で三宅のクラスが優勝したら、今度の大会に俺が出るという約束。
ほとんど無理矢理だったけど、
そんなことで少し気になったから校庭に寄っていこう。
もう、時間的に試合は終わってるかもだけど
校庭に着くと、まだ試合が行われていた。
対戦チームは三宅率いる2年のクラスと3年生のクラス。
球技大会のサッカーは8人で行われていて、コートも通常の半分。
10分間、前半後半で行われる。
「うおー!!」
「決めたー!」
コートから観客達の歓声が上がる。
どうやら2年生のクラスがゴールを決めたらしい。
俺は校庭に設置されている、球技大会本部の方に行き、今何回戦か、スコアはいくつか確認する。
「おや、笹原くんじゃないか?」
「あれ?咲空先輩。なんでこんなところに」
「生徒会長として球技大会の実行委員の手伝いをしてるんだよ」
「そうなんですか」
さすが先輩。
いつでも素晴らしい会長だな。
「で、この試合は何回戦なんですか?」
「この試合は決勝戦だよ。前半後半で1対1で延長戦に入ったところ。で、今2年生のクラスが一点決めて2対1」
なるほど、延長戦に入ったからまだ試合をしていたのか、
それにしても三宅達のクラスが決勝に進むとは。
しかも、今勝っているということは俺の大会に出ることが決定しそうだ。
最悪。
「そういえば、バスケでは大活躍だったんだね」
「どうして、知ってるんですか?」
「生徒会の1人が試合を見てて、さっき教えてくれたんだよ。すごい活躍で優勝に導いたって」
「大袈裟ですよ」
俺は決勝しか出てないし、圭人と大久保、それに他のメンバーがいなかったら勝てなかっただろう。
「あと、この試合三宅くん達のクラスが勝てば、笹原くんは大会に出るんだっけ?」
「本当によく知ってますね」
「まぁ、これでも生徒会長ですから」
茶目っ気いっぱいで胸を張りながら言う先輩。
こう言うところにも好感が持てる。
「半ば強引の約束ですけどね」
「でも、約束なんでしょ?」
「まぁ、」
残り延長後半3分。
このままいけば、三宅達の優勝だろう。
すると、
「大丈夫?!」
「誰か、保健室に連れてってやって!」
慌しくなるコートや観衆たち。
「どうしたんですか?」
近くにいた試合を見ていた生徒に尋ねる。
「なんか接触プレイで足を捻ったらしいよ」
倒れている三年生がどうやら怪我をしたらしく、そのまま保健室へと運ばれた。
なんかデジャブ?
試合は一時中断され、二分間の休憩の後に始まるそうだ。
すると、三年生のクラスのベンチが慌しく、やっぱり8人しかいなくて交代がいないらしい。
それに気づいた咲空先輩が、
「ちょっと笹原くんきて!」
「先輩、良からぬこと考えていないですよね?」
「さぁ、なんのことでしょう」
先輩は無理矢理俺の腕を引っ張って三年生のベンチに連れてかれる。
「この子が代わりに出るよ」
やっぱり。
「あれ?笹原じゃん?」
「え、高橋先輩。試合出てたんですか?」
高橋先輩。一つ上の学年のサッカー部。
受験のために今年の年明けに引退した。
「引退したとはいえ、サッカー部だからね」
「と言うことで、助っ人として笹原くんを入れるのはどう?」
咲空先輩が高橋先輩達3年生に聞く。
「おう、ぶっちゃけ笹原、めっちゃ上手いから大歓迎!」
高橋先輩の声を口切りに他の先輩も俺が入ることを許可してくれた。
俺の意志は聞かれていないが、
それに、
「相手のクラスが良いって言わなければ無理じゃないんですか?」
三宅は俺のサッカーの力量をある程度知っている。
だから、わざわざ相手のチームに入れて負ける確率を上げるようなことはしないはず。
だから、助っ人は認められないだろう。
「え、もう許可ならとったよ」
「え?」
咲空先輩の指差す先に、グッとポーズをとる三宅がいた。
「なんでも、せっかくだから笹原くんを倒して説得したいらしいよ」
なんとも三宅らしいな。
仕方ない。
「わかりましたよ。その代わり、出るからには勝ちに行きますよ」
「「「もちろん!」」」
「私も笹原くんのサッカーする姿見てみたいな」
俺は高橋先輩からビブスを受け取り、助っ人として出る。
勝ちに行く。




