【3話】主人公キャラ親友の登場
花菜と春休みね出来事を話題に雑談しながら学校に向かう。
花菜は春休みにクラスメイトや友達といろんなところに遊びに行ったらしい。水族館や映画館、遊園地に行った思い出などを楽しそうに話している。彼女は学校のアイドルであるため、クラスメイトや後輩、先輩、男友達など交友関係が広いため、よく遊びに行っているし、県外に出かけることも少なくないようだ。
反対に俺の春休みは、部活以外ではほとんど外出せず、家やカフェで読者か勉強に取り組んでいたため、ほとんど話題がない。
だから、ほとんどは花菜が話し手、俺が聞き手に回っている。
花菜が楽しそうに話している様子を見るだけで、こちらの気分も癒されるように感じられる。
相変わらず、嫉妬や羨望の混ざった視線が突き刺さっているがな。
そんなこんなで、俺たちは学校にたどり着いた。ほんと、こいつと登校すると朝から疲れるな。
「ほら、早くクラスを確認しに行くよ」
花菜は学校の校門入ってすぐ左にある掲示板に駆け寄った。普段はどうでもいい情報しか載っていなくだれも見向きもしない掲示板だが、今はクラス発表表が掲載されているため、多くの生徒でごった返している。
これじゃ、見に行ったとしても確認できないな。花菜も掲示板が見えないのか、人だかりの後ろで何とか見ようとぴょんぴょんウサギのように跳ねている。
こんなのメールで生徒に一斉送信すれば、確認することが楽になるのにな。
俺はこの学校での唯一の親友にラインをする。返信はすぐに写真付きで返ってきた。
それを確認し、
「花菜。今圭人からクラス発表表送ってもらったからスマホで確認できるぞ」
その送られてきた写真をそのまま花菜のラインに送信する。
「あ、その手があったか」
花菜はスマホを確認し、俺のもとに戻ってきた。
そして一緒に写真を確認した。
自分のクラスを確認し、他にクラスに誰がいるかを確認する。そこには、幼馴染である花菜や親友である圭人の名前があった。こいつらと同じクラスだったのはよかったな。何せ俺は、そこまで交友関係が広くないからだ。
他にも、見知ったやつの名前があったため、まぁまぁいいクラスに入れたな。
学校のクラスとは、一年間同じ教室で生活を共にするため、非常に重要である。
ちなみに、一年の時はあまりいいクラスとは言えず、同じ部活のやつもいなかったため、ほとんどボッチに近い状態だった。唯一、クラスで会った圭人と親友になれたことだけが僥倖だった。
「よかったねカズ。一緒のクラスだね。カズもうれしいでしょ?」
「俺はどちらかでいうと圭人と同じクラスになれたことの方がうれしいがな」
「ふーん。そんなこというんだカズは。照れ隠しだな。まぁ、私も圭人君と一緒でよかったけど」
「馬鹿なこと言ってないで早く教室に行くぞ」
「待ってよカズ」
俺と花菜はクラス確認のため騒がしく、ごった返している多くの生徒の脇を通って教室に向かう。
教室に着くと、多くの生徒が席から立って談笑している。一年時に同じクラスだった人と親睦を深めたり、新しく同じクラスになった人とつながりを作っているのだろう。
俺が教室に入ると、クラスにいた生徒の視線が一点に集まる。
もちろん、この視線の終点は俺ではなく、俺と一緒に教室に入った花菜である。さすが、学校のアイドル。
「朝比奈さんおはよう!」
「花菜ちゃんと一緒のクラスでよかったよ」
「おー!朝比奈さんと同じのクラスになれて最高だー!」
多くの生徒が、花菜に群がり、花菜に話しかけたり、同じクラスになれた歓喜する人までいた。
そんな群れに巻き込まれないように、ささっと教室のドアから離れ、さっきスマホで確認した座席を見つけ、移動する。
俺の席は、窓際の一番後ろの席だった。うん、最高の席だわ。
端っこの席であるため、人が集まることもないし、教壇から一番離れているため、先生に見られづらいという教室での好立地な物件である。
その席に荷物を降ろし、席に座ると、前の席には俺の親友が座っていて、俺に気づいた。
「久しぶりだな、一真。春休みは元気してたか?」
この男の名前は、工藤圭人。先ほども話した通り、この学校で唯一の親友だ。花菜と同じように整った容姿をしていて、身長も高く、性格もいい。明るい性格からリーダー的存在であり、一年時にはクラス委員を務めていた。こいつも男女ともに人気であり、モテる。なぜかこいつもすべて断ってるらしいが。
え、花菜は親友じゃないのかって。あいつとは、幼馴染でただの腐れ縁。
「ああ、しっかりと勉強していたぞ」
「相変わらずだな、一真は」
「そういうお前は何してたんだよ、圭人」
「俺?俺は部活で青春を謳歌していたよ。夏には大会もあるしな。もちろん遊びに行ったりもしたがな」
圭人はテニス部に所属していて、とても優秀な選手である。この高校のテニス部は特に強豪校ではなく、決して強いとは言えず、環境もそこまでは整っていない。だが、彼だけは毎回市内大会を勝ち抜き、県大会に出場している実力者である。容姿もよくて、運動もできるとか反則だろ。アニメの主人公か。
「さすがテニス部のエース様だね」
「そんな褒めるなよ。お前こそ春休み部活はどうしたんだ?」
「ぼちぼち行ってたぞ。体を動かしに」
「お前の部活は緩いからな。羨ましいぜ」
まぁ、圭人はこんなハイスペックな男であるが、何かと性格や馬が俺と合い、去年同じクラスになったこともあってこうして仲良くしている。
「ねぇ、何の話してるの?」
花菜が俺たちの話に割り込んできた。どうやらあのむさくるしい集団との話は終わったらしい。
「いや、一真の春休みが残念なものだなって話してただけだよ」
「だよね、勉強と読書ばっかでさ。私何度も遊ぼうって誘ったのに」
「俺も誘ったのに来なかったよな」
ちなみに、花菜と圭人は俺を経由して面識が生まれて、仲良くなったらいい。何度か遊びにも行ったりしている。二人だけかは知らんが。
でも実際に、二人とも容姿が優れていて付き合っていると言われればお似合いだ。むしろ、この二人と話している俺が不純物なのである。
「何が、残念な春休みだよ。俺はしっかりと春休みを有効活用して効率的に勉強しているだけだ。てか、二人とは何度か飯行っただろ。しつこく誘ってくるから」
「ご飯じゃなくて、遊びにだよ。遊園地とか、カラオケとか」
「そんなの時間の無駄だ。勉強に時間を費やした方がよっぽどためになる」
「せっかくの高校生活なんだからもっと楽しもうよ。ねぇ、圭人」
「花菜の言うとおりだぞ。青春を謳歌しようぜ一真」
フン。
何が、青春を謳歌しようだ。高校生活で大事なのはいかに効率よく勉強していい大学に入るかだ。
遊び惚け、勉強を疎かにしている学生を俺は理解できない。
「いいんだよ。俺は、お前らはしっかり勉強したのか?今日テストあるけど」
「ああ、もちろん大丈夫だよ」
「いや、お前の心配はしていない」
圭人はこの学校では学力の高い部類に入る。ほんと、なんでもそつなくこなすやつだな。もう一度言おう。アニメの主人公か。
まぁ、俺よりは学力が低いが。もちろんこれは、負け惜しみではない。嫉妬でもない。
「俺が気にしているのは花菜の方だ」
「べ、勉強はしっかりしたよ。テストもだ、だ、大丈夫」
明らかに動揺している。絶対勉強していないな。
花菜は学力が高いとは言えない。この学校に入れたのも奇跡みたいなものだ。
「全然ダイジョブそうに見えないがな」
「すいませんでした!勉強してません。教えてください。助けてください」
「もう、間に合うわけないだろ。甘んじて結果を受け入れて反省するんだな」
「そんなあ」
がっくりとうなだれる花菜。たまに勉強を教えることがあるが、こいつは集中力がすぐ途切れる。部屋で勉強すればマンガに逃げ、カフェで勉強すればスイーツに飛びつく。
まぁ、地頭が悪いわけではないので、やろうとすればやれるやつだ。この高校も受かったしな。
「それより一真。今回は一位取れそうなのか?」
「ああ、取ってやるよ」
俺は、この学校に入ってから一度も学年一位の成績をとったことない。
なぜなら、とても大きな障害があるからだ。
「席につけ、ホームルームを始めるぞ」
担任の先生が教室に入ってきて、教壇に向かう。
「じゃあ、今年も一年よろしくな一真」
「よろしくな」
「私も」
こうして俺の高校二年生が始まった。