【29話】体育祭(5)
ちょっと長めになりましが、投稿しました。
体育祭は次の話で終わりです、
ぜひ、ブックマーク、感想、評価待ってまーす
黒瀬から昼休み、午後の部で行うはずだった仕事の内容を聞き、俺は保健室を出て、仕事に向かう。
「あとは、俺がやっとくからしっかり休んどけよ」
「分かったわよ」
「じゃあ、先生、黒瀬のことよろしくお願いします」
「任されました」
先生に念を押すことで、黒瀬が保健室を抜け出して、仕事をすることはないだろう。
コイツ責任感強いから、体調悪くても、治ったとか言って働きそうだし。
「あなたにそんなことを言われる筋合いなんてないわ」
「へいへい」
保健室を出て、俺は考える。
さて、
仕事多すぎだろ!
どんだけ仕事抱えてたんだよ!あいつ!
こりゃあ、倒れるわけだ。
1人分の仕事量じゃない。
元々、風紀委員会は体育祭に協力する予定はなく、あくまで手伝いという形の参加だった。
だから、風紀委員会に割り当てられた仕事は少ない。
だけど、風紀委員の大半の生徒が体育祭の準備を言い訳にあまり参加しなかった。
俺もその1人だ。
その分、黒瀬が一人で抱え込んでしまったんだろう。
委員長としての責任感と生徒のためにという使命感を果たすために、
もし、俺がこの引き受けた仕事をこなすことができなければ、黒瀬は気を落とすことだろう。
俺に対してではなく、倒れてしまった自分にだ。
だから、俺はこの任された仕事を完璧に遂行しなければならない。
「さて、それじゃあ。まずは」
俺は手元のスマホでメッセージを飛ばして、その足で生徒会室へと向かう。
ドアを軽く、ノックして生徒会室へと足を踏み入れる。
咲空先輩を含む生徒会のメンバーが和気藹々と食事をしていた。
「すいません。何度も頼ってしまって」
「気にすることではないよ。なんせ、私は君が尊敬する先輩だからね」
軽口を言いながらも引き受けてくれる先輩に感謝だな。
「そうだぜ!委員長が倒れて大変なんだろ。俺たちも手伝うのは当たり前だろ」
「そうそう、元々私たちの仕事だったんだから、気にしないで」
他の生徒会の人も協力してくれるそうだ。
生徒会に入ってる人たちだけあって、みんなが他人のために頑張れる人たちなのだろう。
「それよりも、黒瀬さんは大丈夫かい?」
「はい、軽い熱中症みたいで。さっき目を覚まして、今は保健室で休んでもらってます」
「そうか。なら、よかった」
「ということで、さっきのメッセージのことお願いできますか?」
「もちろんだ。風紀委員会がやるはずだった来賓のお客様への対応は生徒会が引き受けるよ。元々、生徒会の仕事だったしな」
「ありがとうございます。この埋め合わせは必ずしますので」
「いいよ。私はもう君から貰ってるから」
「え?」
「尊敬されている先輩って称号をね」
ほんとに、この人はなんて眩しい人なんだ。
「それでも、何かあったら頼ってください。俺にできる範囲ですけど」
「分かったよ。そんな時が訪れたら君に頼むとしよう」
俺は、黒瀬みたいに完璧に仕事をこなすような器用さを持ち合わせてない。
だから、俺は人を頼る。
その方が効率的だからだ。
入学当時、俺は、極力人とは関わろうとはしない。
人と関わる分だけ、その人にリソースを割かなければならないからだ。
効率的に、自分第一主義者の俺には無駄な労力が生まれてしまう。
だから、いつも一人だった。
でも、高校生活を送るにつれてその考えを改め始めた。
人との繋がりは大きな資産になることに気づいた。
圭人と仲良くなることで、クラスでの情報が入ってきやすくなる。
咲空先輩と繋がることで、生徒会ぐるみで助けてもらえる。
圭人と仲良くなったのは偶然。
咲空先輩に勉強を教えてもらったのも偶然。
それでも、その縁を大事にすることが重要なのだ。
もちろん、俺が頼るだけでなく、頼られることもある。
でも、それは無駄なリソースなんかではない。
人との関係を続けるために必要なコストだ。
俺は無条件に自分を犠牲にして、誰かを助けることはできない。
それでも、人と繋がるために、効率的に生活をするために、自分のためになら助けることはできる。
だから、黒瀬を助ける。彼女との縁を無駄にしないように。
今は、あまりいい縁とは言えないが、将来的には分からないから。
「いいってことよ。でも、笹原くん。この仕事を私たちがやっても、まだたくさん仕事があるけど、大丈夫なのかい?」
「はい、大丈夫です」
「そうか、君がいうなら間違いない」
「それでは、生徒会の皆さんよろしくお願いします」
俺は深々と頭を下げで、生徒会室を後にして、次の目的地へと進む。
2階の空き教室。
いつも、風紀委員会の定期的な集会に使ってる教室だ。
ドアを開けると、すでに何人かの生徒がいた。
風紀委員会の一年生と二年生の生徒だ。
さっき、グループラインで集まるようにとメッセージを飛ばした。
3年生にとっては最後の体育祭のため、元々仕事を割り当てていない。
それにしのびないしね。
来たのは半数ぐらいだけど、それだけで御の字だ。
「ごめん。みんな待たせたね」
「別に大丈夫ですけど、何のようですか?早く、教室に戻りたいんだけど」
「ごめんね。すぐ終わらせるから」
少し、苛立つ生徒たち。
本来なら、教室で友達と騒ぎながら昼飯を摂っていたはずだ。
苛立つのも仕方ない。
彼らの苛立ちが募る前に、本題に入ろう。
「午後の部の保護者の誘導の手伝いをして欲しい」
「え、それって、委員長と副委員長がやるはずだったんじゃないんですか?」
「委員長がこの前の集まりの時、そう言ってましたよ」
なに!あいつ、勝手に俺のことを頭数に入れやがってたのか。
でも、黒瀬のことだからそれは人を確保した言い訳で、1人でやろうとしていたのだろう。
「その予定だったんだが、黒瀬が体調を崩して、人手が足りなくなったんだ。頼む」
頭を下げる俺に対しての答えはない。
少し、雑談の声がするが、明確な答えは出ない。
みんな、躊躇している。
俺も含めて、黒瀬は風紀委員からはあまりいい印象を持たれてない。
それは、去年と比べて、黒瀬が色んな活動をして委員会活動が忙しくなったからだ。
多くの生徒は俺と同じように楽だからと風紀委員会を選んだのだろう。
そのため、仕事を増やす黒瀬は友好的に見られてない。
そんな彼らが、わざわざ仕事を引き受けることをするはずがない。
だから、俺は手を打つ。
「実は、黒瀬。これ以外にも色んな仕事抱え込んでて、倒れて、今は保健室で休んでるんだ」
「「「え!」」」
俺は黒瀬が体調を崩したとは言ったが、倒れたということは伝えていなく、驚いた様子の彼ら。
「俺は、同じクラスで副委員長なのに黒瀬がそんなに仕事を抱え込んで無理してることに気づかなかった。ほんと情けないよ」
俺は下を向きながら、そう話す。
黒瀬が倒れてしまった責任が俺にあり、それを悔やんでるように
「だから、午後は黒瀬の分まで仕事をすることを決めた。生徒会にも協力を頼んだから、ある程度は大丈夫になったけど、保護者の誘導だけは、俺も出る競技があるからずっとはできない」
午後の競技で、俺は騎馬戦と学年対抗リレーに出ることになってる。
「俺は本当は騎馬戦にも出る予定だったけど、黒瀬に任された仕事があるから別の人と変わった。だから、少しでもいいから協力してほしい」
戸惑う、彼ら。
俺は騎馬戦を辞退したと言ったが、厳密にはまだしてない。
する予定だけど、
残念そうに騎馬戦を辞退するように言ったけど、実際は休める口実ができてラッキーと思っているのは内緒だ。
あくまでも、目的は、彼らに副委員長の俺が楽しみにしていた競技を休んでまで、仕事をするという献身さをアピールすることだ。
そうすることによって、もし、彼らが俺からの頼みを断ったら、少しの罪悪感を感じながら体育祭を過ごすことになる。
そうなるぐらいなら、少し手伝う方が賢明な判断だ。
「私はいいよ。午後出る競技ないし」
1人の女子生徒が勝手でてくれた。
「俺もいいよ」
「私も」
「少しなら大丈夫」
それに続いて、他の生徒も引き受けてくれた。
作戦成功だ。
「ありがとう、みんな。なら、他の仕事も任していいかな?黒瀬まだ、引き受けていた仕事があって」
「「「大丈夫だよ」」」
「ありがとう」
人は一つの要求を吞むと、次の要求も呑みやすくなる心理作用がある。
俺はこれを利用した。
それに、ここで協力することで、今後の風紀委員会の活動も多少はしやすくなるだろう。
そして、俺は仕事の振り分けをして自分の仕事に戻る。
さぁ、これから忙しいぞ。
「会長、彼とはどんな関係なんですか?」
唐突に副会長の木内くんが聞いてきた。
彼とは、一年の頃から生徒会が一緒で共に活動してきた。
今、笹原くんに任された仕事を生徒会役員でこなしてる最中だ。
「よく、彼と一緒に勉強しているようですし、それにも色々交流してると聞きますし。会長がそんなに彼を構うのは何でかなーと思いまして」
確かに、妙な関係かもしれない。
私は、この学校の生徒会長で、成績優秀、運動神経抜群。
それに加えて、明るい性格と整っている容姿をしているため、この学校で1番注目を浴びる存在だろう。自慢じゃないよ笑
それに対して、彼は勉強はできるが、それ以外に特段、優れたことはなく、あまり人と関わらないようにする性格から下に見られる。
そんな私と彼の関係。
「私と彼の関係、それはただの可愛い後半と尊敬できる先輩だよ」
「なんですか?それ、茶化さないでくださいよ。どうして彼と交流を持つようになったんですか?」
もう一度、問われる。
どうして、私は彼と関係を持つようになったのか
「そうだね。強いて言えば、本当の私を見つけてくれるかもしれない。そんな彼に託したんだ」
納得いってない感じで首を傾げる木内くん。
私もまだ、この答えに確信を持てない。
それでも、君なら、私を見つけてくれる。
そんな気がしたんだ。




