【26話】体育祭(2)
バイト前に書き上げました。
じゃあ、バイトで死んできます。
競技待機場所に着くと、借り物競争に参加する花菜と100メートル走を走り終えた鈴華が二人で楽しそうに話したり、鉢巻をリボンにして写真を撮ったりしていた。
「あ!カズ。遅いよ。鈴華ちゃんと写真撮りたいからカメラよろしく」
俺は、スマホを受け取り、ダブルピースをしている二人にレンズを向けてシャッターを切る。
二人ともほんとに絵になるな。
「ありがとう、カズも一緒に撮る?」
「俺は良いよ。鈴華も俺と撮るの嫌だろうし」
「そんな事言わないの。鈴華ちゃん、カズと一緒に写真撮ろう!」
「別にいいけど」
「ほら、大丈夫。写真撮ろう」
結構渋々って感じだったけど
写真を撮った後、すぐに借り物競争の競技が始まった。
鈴華も参加する。
初めは女子からだ。
第一レース、花菜が参加するレースが始まった。
花菜は特段運動神経が言い訳問うわけじゃないが、借り物競争はぶっちゃけ運動能力というより、運で決まる。
花菜は8人中現在4位。借り物が書かれている紙を広げて、内容を確認する。
ちなみに、お題が無理そうだったら二回目までチェンジすることができる。
花菜はお題の紙を確認して、すぐさま来た道を戻り、待機場所に向かってきた。
「カズ、来て!」
「え!おれ?」
「そうだよ、早く」
「分かったよ」
俺は花菜に手を引かれたまま、ゴールを目指す。
「「「ブー」」」
学校内でアイドル的人気を誇る花菜に手を引かれて、走る俺に、応援席からブーイングが飛ぶ。
同じ白組からもブーイングされてないか?
同じチームなんだから応援しろよ。
俺たちは一着でゴールした。
体育祭のアナウンスを担当する放送委員会の女子が駆け寄ってくる。
「一着おめでとうございます。それでは、お題の方を確認しますね」
「はい、どうぞ」
そういえば、俺が該当するお題ってなんだ?
一番付き合いが長い人とかか?
「えーっと、お題の方は、なんと好きな人です」
「「「えー-!」」」
「えー!」
俺も驚くわ!
ニヤリとしてやったりとした顔を浮かべる花菜。
「驚いたカズ! ということでよろしく」
「お前揶揄ってるだけだろ」
「そんなことないってー私がカズのことが好きなのは事実だし。友達としてだけどね」
だろうな
「私は別に私に好きって言われて、他の男子から殺されるカズを見て、面白がろうなんて思ってないから」
「100%それ目的だろ!」
小悪魔のような笑みを浮かべながら、花菜は一着の旗のもとに駆けていく。
俺は借り物競争があるため、待機所に戻る。
その際に、男どもの鋭い視線や殺意のこもった空気が俺をとらえる。
「俺の朝比奈さんを!」
「許すまじ!」
「さーてどうやって殺そうか」
なんか聞こえちゃいけない言葉が聞こえたが、気にしない気にしない。
待機場所に戻っても殺意の視線からは逃れられない。
待機場所にいる鈴華を前方で見つけて、助けを求める。
「鈴華、この空気どうにかならないか」
「死ね」
殺意から逃れようとしたのに、直接言われたわ。
「じゃあ、私の番だから」
そう言って、レースの場所に向かっていた。
少し憐みの視線が増えて少し安堵する。ちょっと複雑だけど
鈴華のレースが始まった。さすがの運動神経。
100メートル走の時と違って、他の参加者は特段足が速いというわけではない。
だから、ダントツ一位だ。
借り物のお題の紙を確認すると、すさまじい勢いでコースを逆戻りしてくる。
てか、速すぎて少し怖いな。
すると、また俺の手を強引につかんで鈴華が走り出す。
「え、また俺!?」
「そうだよ、早く行くよ」
手を強引に引かれて、走り出す。
さっきの今で、注目を浴びる俺。
鈴華も花菜までとは言わないが、男子から人気がある。
またもや、やじやブーイングが飛ぶ。
「遅いよ!速く!」
「お前が速すぎんだよ!どうせ一番なんだから少しゆっくり行こうぜ」
そんな俺の声に耳を傾けるはずもなく、トップスピードのまま一着でゴールした。
「またもや同じ生徒が借りられてきましたね。それではお題を確認します」
こいつのお題も何なんだ?
疲れて頭回らない。
「お題は、に、苦手の人です」
「「「あー---」」」
「あー」
納得だわ。てか、さっきからお題に悪意ないか?
ほとんど借り物人だし。もう、借り人競争に解明すれば?
鈴華も鈴華だ。なぜこのお題をチェンジせずに俺を連れてきた。
俺がうらめしそうに鈴華を睨みつける。
「なに?なんか文句あるの?」
「逆にないと思ってんのか?」
「だって、あんたが花菜にデレデレしてんのが悪いんじゃん。何舞い上がってんの?」
「別にデレデレなんかしてねえし!花菜のはいつものいたずらだよ。俺を見て楽しむための。え、なに、鈴華嫉妬してんの?」
そんな風に揶揄うと素早い蹴りが俺の脇腹をとらえる。
「は、そんなんじゃねえし。いいから早く帰れよ」
「連れてきておいてなんだよ、はいはい、戻りますよ」
蹴られた脇腹を抱えながら、俺は待機所に戻る。
さっきとは違い、鈴華に苦手だと校内中に言われたため安堵の目で見られている。
「いい気味だ」とか言ってるやつもいたけど。
やっと女子にレースが終わって、男子の番だ。
2レースが終わり、三レース目俺の番だ。
鉄砲の音と同時にスタートする。
俺は、部活動したり個人的にもランニングしているので他の生徒と比べて比較的に速い。
だけど、正直俺は花菜と鈴華に連れて行かれたので、もうへとへとだ。
俺だけ、無駄に2レースは知ったようなものだ。
一着で借り物の書いてある紙の場所にたどり着き、紙を開く。
書かれていたのは「好きな人」
うん、無理。
すぐさまチェンジして違う紙を開く。
書かれていたのは「気になっている人」
うん、これも無理。てかほぼ一緒だろ!
なんでしかも全部人なんだよ!借り物だろものにしろよ。
そうこうしているうちに他の生徒も紙がある場所にたどり着いて、借り物を探し始めている。
チェンジは二回まで。つまりこの次で決まるわけだ。
俺が選んだ最後の一枚に書かれていたのは「尊敬している人」
またもや人。だが、このお題なら心当たりがある。
俺は、体育祭本部に急いで駆け込む。
目当ての人物見つけた。
「咲空先輩!一緒に来てください」
「私か?」
「はい、お願いします」
「後輩の頼みだからね、仕方ない」
俺は咲空先輩の手を引き、ゴールを目指す。
咲空先輩は容姿が抜群に良くて、さらにわが校の生徒会長だ。
校内の人気では花菜と並んでトップに入る。
そんな先輩と一緒に走っているため先ほどと同様に視線が集まる。
殺意のこもっている視線もいくつかあるが、
「先ほどから君は可愛い女子生徒ばかりと一緒に走っているからね。羨ましがられて当然だね」
「俺が望んだんじゃないですけどね」
「そういえば、何のお題だったんだね?」
「そ、それはゴールしたらわかるので、それまで秘密です」
「そうか」
そのまま俺と咲空先輩は一着でゴール。
例のごとく、放送委員の司会がお題を確認する。
「えーと、お題の方は尊敬している人でーす」
「ほう、君は私を尊敬しているのか」
「尊敬してますよ。損得勘定なしに人助けするところとか、何も言わずに手伝いをしてくれるところとか。俺にはできない、俺の憧れです」
これは、俺の本当の気持ちだ。いつも俺の勉強の面倒を見てくれたり、何も言わなくても人を助ける。
俺にはできない生き方だ。
「そうなのか、悪い気はしないな」
「そうですよ」
「ただ、私は君が思うような人じゃないよ」
消え入りそうな声で何かをつぶやいた先輩
「何か言いました?」
「いや、何も。じゃあ、私はこれで」
「はい、ありがとうございました」
こうして、借り物競争は終わった。
はぁー、疲れた。




