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現実主義者の俺が青春ラブコメに巻き込まれる  作者: 小西 悠人
いじめられっ子吉田拓郎
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【2話】幼馴染ヒロインの登場


 インターホンの画面を見ると、そこには案の定いつもの邪魔者が立っていた。


 「カズ、早く学校に行くよ!」


 「分かってる。今行くからちょっと待て」


 読んでいた本を本棚に戻し、リュックサックを背負い、家を出る。


 玄関のドアを開けるとそこには、一人の可愛らしい少女が小悪戯顔で佇んでいた。


 「遅いよカズ!今日から二年生なんだからしっかりしないと」


 「別に、そんなに急がなくても余裕で間に合うだろ花菜(かな)


 彼女の名前は朝比奈(あさひな)花菜(かな)。彼女とは家が隣同士で、幼稚園からの付き合いだ。いわゆる幼馴染というやつだ。


 少し小柄な可愛らしい体型で、そんな中でも体の凹凸がはっきりしていため目のやり場に困ることも多々ある。そんな可愛らしい体を包み込む新学期を迎えた少し軽めの春の制服はとても彼女に似合っていて、その制服の隙間から確認できる彼女の肌はとても白く、太陽の光を反射して輝いている。彼女のあどけなさの残った可愛らしい顔と、少し赤みがかった茶髪のショートボブの髪形がとてもマッチしていて、元気で活発な少女であることが誰でも見て取れる。いつも見ているのに、いつまでたっても見慣れることはない。


「今日はクラス発表があるんだから早く確認したいの!早くいくよ」


 彼女は俺の手を取り、学校へ向かって駆け始める。


 そういえば俺の自己紹介がまだだったな。俺の名前は笹原(ささはら)一真(かずま)。今日から高校二年生になる高校生だ。


 幼馴染の花菜と違って特段特徴はなく、容姿は普通である。


 俺たちは、公立高校である黎明(えいめい)高校に通っている。一緒の高校のため、一年のころから花菜と一緒に登校している。


 黎明高校は一応県内では進学校の部類にはいる。学校の偏差値はそこまで高くはないが、俺の家から徒歩圏内でかつ、公立の割には施設や教育環境が整っているため、この高校に決めた。元々、ある程度の学力があったため余裕で合格して、この学校に通い始めた。


 ていうか、俺は元々一人で登校しようと考えていたんだが、俺が家を出る前に必ず花菜がインターホンを押し迎えに来るため、一緒に登校させられているという表現の方が正しいが…


 「そんなに急がなくても間に合うよ。歩いて行こう」


 「それもそうだね」


 通学路を駆けていた二人は、スピードを落としゆっくりと並んで歩き始めた。

 

 季節は春。寒い冬耐え抜き、迎えた春。


 心地よい暖かい気候に、こちらの気分も温かくなる。


 そして目に入るのは通学路の沿道にある神々しい桜だ。


 今までの冬の閑散とした少し悲しい風景を払拭するような、華やかな桜。桜以外にもツツジやスイセン、菜の花をはじめとした春の花がモノクロだった冬の景色に色を付け、カラフルな風景を作り出す。


 「綺麗だね!」


 「ああ、そうだな」


 この華やかな景色は、新入生を迎えるためか。それとも、俺たち2、3年生を初心に戻すためかは分からないが、この美しい景色は俺たちを歓迎していることだろう。


 そして、横で歩く花菜に視線を向ける。


 彼女は、春風にさらわれた桜の花びらを子供のように取ろうと手を伸ばす。


 そんな彼女と春の風景のセットはとても映えていて、まるでそこだけ神秘の空間のように感じられる。


 通学している新入生や在校生の多くもそんな彼女に目を奪われてしまっている。


 彼女は振り返り、俺の方を見た。


 「カズ何見てんの?まさか私に見とれてたとか」


 「まさか。いつまで経っても子供なんだなと思って見ていただけだよ」


 「ムー、私を子ども扱いしないでよ」


 腕を後ろで組みながら俺に近づき、両頬をリスのように膨らまし、ふてくされた様子で上目遣いで俺のことを見つめる。


 こんな態度でも彼女は可愛らしく映る。


 すると、鋭い殺意を持った視線が多方から、俺に突き刺さる。


 俺はこの視線の原因を知っている。


 「分かったから、離れろ。俺は殺されたくないんだよ」


 「えー、そんなこと言わないでよ。私達の仲じゃん」


 彼女はさらに俺に近づき、俺の腕に腕を絡めてくる。


 殺意の持った視線が、一層強まる。


 「おい!離れろって、お前分かっててやってるだろ」


 「さぁ、なんのことか。私全く分かりません」


 くそ、わかってるクセにこいつとぼけた顔しやがって。


 先ほども言った通り、花菜は優れた容姿と明るい性格から非常にモテる。実際に高校に入ってから10人以上に告白されている。なぜかすべて断っているらしいが。


 そのため花菜は学校ではアイドル的な存在になっていて、男女とも人気がある。聞いた話によるとファンクラブのようなものもあると聞く。


 そんな彼女と公衆の面前でこんなスキンシップをしていれば、羨まがられ、嫉妬され、殺意を向けられるのも当然なのだ。


 「いいから離れろ」


 そんな彼女を突き放し、ようやく離れ、また並んで学校に向かって歩み始める。


 春の素晴らしい華やかな風景とそれと対照的な殺意のある視線に囲まれながら学校に向かった。


 隣のこの女はなぜか満足そうな顔をしているが、気にせず歩み続ける。

 



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