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現実主義者の俺が青春ラブコメに巻き込まれる  作者: 小西 悠人
いじめられっ子吉田拓郎
23/91

【18話】作戦四日目(下)

少し長くなってしまってすいません。


ついにクライマックスです。


ぜひ、ブックマーク、評価、感想待ってます。


 七時間目を迎えて、全校生徒が全校集会のために体育館に集合していた。


 多くの生徒が興味をなさそうに友達と話していたり、スマホをいじっている。


 それはそうだ。生徒会と風紀委員会の集会なんて絶対に面倒なものだとわかる。


 せっかくの楽しい七時間目がこんな集会に潰されてしまっては愚痴が出てしまっても仕方ない。

 

 俺だって嫌だし。


 だが、この集会は俺が発案し、生徒会と風紀委員会に持ってきたものだ。吉田のいじめ脱出計画に協力するためにも、この学校からいじめをなくすためにも、俺が効率よく学校生活を送るためにも、俺は全力でこの集会に取り組む。



 俺は体育館のステージの裏に移動し、黒瀬と共に風紀委員会と生徒会の人と合流する。そこには今日のことを最初に依頼した生徒会長の咲空先輩を見つける。


 「咲空先輩、今日はすいません。協力してもらって」


 「全然気にしないで、少し大変だったけど生徒のためだからね」


 そんな風に人を助けるのが当然かのようにいう咲空先輩は女神にしか見えない。ほんとこの人よりs晴らしい女性はいるのかと思わせるようなひとだなあ。


 俺が咲空先輩に見とれていると、隣から俺の脇腹に肘打ちが飛んでくる。


 「はやく、準備をするよ」


 黒瀬からの攻撃だ。こいつなぜか俺にだけ暴力を振ってくるんだよな、なんか寂しいわ


 「はいはい分かりましたよ、委員長」


 俺は早速準備に取り掛かる。他の委員もそれぞれの持ち場について準備を始める。


 


 ざわめく体育館の中、予鈴が鳴り、七時間目の授業が始まる。


 「生徒の皆さん、お集まりいただいてありがとうございます。今日は生徒会と風紀委員会によるいじめ防止集会を始めます。司会は私、生徒会長の立花咲空と」


 「風紀委員会、委員長の黒瀬沙羅です」


 「「よろしくお願いします!」」


「「「「オーーー!!!!」」」


 体育館に歓声が響く。掴みはばっちりだ。


 学校で男女ともに人気である生徒会長の咲空先輩と女子から絶大の人気を誇る正義感の塊の黒瀬が視界を行うことで華を持たせ、生徒の注目をこの集会にまず集める。


 いじめ防止教室なんて生徒は何度も経験している。それでもいじめが無くならないのはいじめの恐ろしさを理解できていないからだ。もしくは自分には関係ないととらえているからだ。


 今回の集会のシナリオは全部俺が書いて、咲空先輩と黒瀬に協力してもらったものだ。


 今回の集会で俺が全生徒にいじめのくだらなさ、恐ろしさ、残酷さを教えてやる。


 俺がステージ裏から咲空先輩に目で合図を送り、進行を進めてもらう。


 「最近でも、いじめは大きな社会問題になっています。いじめ件数は年々増加していて、全国の小、中、高校でいじめ件数は60万件にも昇ります」


 ステージのグラフを見せながら説明する。


 図やグラフを利用することで調査内容が目でしっかりわかるようにして印象付ける。


 その後も咲空先輩と黒瀬が交代しながら進行していじめについての調査内容や今現在どのような対策が行われているかを説明していく。


 10分ほど説明をしただろうか、俺は生徒の方を見ると多くの生徒がもう集中が途切れ、友人と話したり、顔を伏せて寝ていたりと話半分に聞いている。


 10分間も長い、それに自分に関係ないと考えている話が続けば、飽きてくるだろう。


 そんなことは想定済みだ。


 また、咲空先輩にもう一度合図を送り、次の進行に移る。


 「それではいじめが実際にどう行われ、どんな結末を迎えるかを見ていきましょう!みなさん、どうぞ大勢を楽にして見てください」


 生徒が再びステージに視線を移す。普通のいじめ防止教室ならば、教材のDVDを流すところだろう。


 だが、そんなのは生徒全員は見慣れているし、何よりインパクトがない。


 だから、少し違った方法でいじめを再現する。


 「では、演劇部によるいじめの再現演劇をご覧ください」


 スライドが上がり、ステージ上には演劇部四人が現れる。


 俺が選んだのはいじめの演劇だ。咲空先輩に頼んで演技部にも協力を仰いでもらった。


 誰かもわからない人が出ている再現DVDなんて興味を示さないが、同じ学校の生徒が出る演劇では少しからず、興味を持たせることができる。


 今回の設定は、性格の暗い女子の一人が陽キャ組の三人にいじめられるという設定だ。


 ステージでは女子三人組が女子の一人を物を隠したり、からかったり、悪口を行ったりなどしていじめている。また、時には物を壊したり、軽い暴力も振るっているシーンが演じられる。


 さすが演劇部だな、クオリティが高い。


 また、時には登場してくる女教師が女装している演劇部の男子部員などでコメディ要素を取り入れて笑いを取る。この演劇の最終目標はあくまでいじめの恐ろしさを教えることだ。


 それを実行するためにもまずは生徒という観客の注目を集める必要がある。


 だから、コメディ要素も入れて笑いを取りながら演劇に意識を集中させる。


 実際、ほとんどの生徒が演劇に見入っている。


 演劇はいじめられた女子生徒が先生や両親に頼るがいじめは解決できず、どんどんいじめがエスカレートしていく。


 さて、クライマックスだ。


 いじめにあい、どんどん精神が追い詰められていく女子生徒。


 ステージでは、いじめられている女子生徒がひとりうつむいて立っている。


 生徒の視線がその女子生徒に集まる。


 そして小さく、その女子生徒がつぶやく。


 「どうして、私がこんな目に遭わないの」


 すると、突然、体育館の照明がすべて消え、体育館は真っ暗な闇に包まれる。


 生徒たちは突然の停電に動揺する。


 「なに、停電!」

 「これって演出?」

 「てか、暗くて何も見えないんだけど」


 生徒の意識が突然の停電に錯乱し、混乱する。動揺が広がり、不安が募る。突然、暗闇にすることで人のマイナスの感情を増幅させる。


 さて、頃合いだ。


 俺は、ステージ裏から体育館の管理室にいる生徒会の生徒に合図を送る。


 その合図ですでに下ろされていたスライドに白黒の砂嵐が表示される。


 よくホラー映画で使われる表現だ。


 暗闇だった体育館に突然照らされた、淡い光に生徒の視線が集まる。まるで、光に寄せられる虫のように


 砂嵐が止み、先ほどまでいじめられた女子生徒が映し出された。


 彼女はどこかわからないが暗闇の部屋に一人でいる。


 そして繰り出される。


 「どうして!!私だけがこんなめに!!どうして!!どうして!!あいつらが憎い!!うざい!!死ねよ!どうして!!誰も助けてくれないんだ!!どうして!!どうして!!」


 そんな女子生徒の悲痛の叫びがスライドに映される彼女の絶望とした顔とともに、大音量で体育館全体に響き渡る。


 彼女のいじめに追い詰められて、精神が崩壊し、この世に絶望した苦痛にまみれた表情。


 彼女のもう泣き枯れたようなかすれた悲痛の叫び。


 そんな残酷なものが暗闇の静寂からいきなり現れた。体育館の生徒には驚き、恐怖に慄いていることだろう。実際、何人かの女子の悲鳴が聞こえているしな。


 これで、十分なインパクトを与えることができたが、まだ足りない。


 本当のいじめの恐ろしさはこれからだ。


 「ああ、もうどうでもいいや、生きててもつらいだけだし。もういいや」


 スライドに映しだされる女子生徒はうずくまった状態から立ち上がり、部屋を出て、階段を上がっていく。


 そして、スライドの映像が消え、また体育館は暗闇に閉ざされる。


 また、動揺が広がり、先ほどの映像の余韻が残ったままマイナスの感情がさらに増幅していく。


 いい感じに体育館があったまって、いや、涼しくなってきた。


 さて、最終局面だ。


 そして、体育館の後方の照明だけが付き、後方の二階部部のキャットウォークが舞台のスッポトライトのように照らし出される。


 そこには先ほどの演劇部の女子生徒らしきシルエットが映し出される。


 生徒の注目がそのシルエット一点に集まる。


 何が起こるのか不安になる生徒たち、


 「もう、どうでもいいの」


 そう静寂の体育館に静かにつぶやきが広がる。


 そしてそのシルエットがゆっくり動いて、二階のキャットワークの柵に立つ。


 生徒のみんなに動揺がさらに広がる。まさかと考える生徒たち、


 そう、そのまさかだ!


 「さようなら」


 そう言い残し、そのシルエットは二階のキャットウォークから飛び降りた。


 グシャッ!


 と何かの潰れた音とともに


 「「「キャーーーーー!!!」」」


 と悲鳴の声が体育館を駆け巡る。生徒たちに動揺が広がり、パニックに陥ている。


 うん、計画通り、


 初めにコメディ要素を取り入れた演劇で生徒の注目を集めながら、笑いを取り緊張をほぐし、当然の停電で集中していた意識を錯乱させる。


 そして、錯乱した意識をスライドに集め、女子生徒の悲痛の叫び声と映像で恐怖に落とし、とどめの飛び降り自殺。


 これで、生徒たちには十分いじめの恐ろしさが伝わっただろう。


 そんなふうに自分の作戦成功に感心していると、後ろから、頭をはたかれた。


 振り向いてみると、黒瀬だった。


 「ちょっと、早くこの事態を収束させなさいよ」


 「そうだった、しっかり忘れてた」


 自分の作戦成功に酔っていたな。


 「じゃあ、咲空先輩と黒瀬、よろしくね」


 「了解したよ」


 「はいはい」


 二人はステージに上がっていく。


 それと同時に体育館の照明がすべてついて、暗闇に閉ざされた空間から明るい空間に変わる。


 「みなさん、落ち着いてください。これは全部演出なので大丈夫です。後ろをご覧ください」


 そんな先輩の優しい声に従って後ろを振り向くと、長髪のカツラを被った男子生徒が立っていた。


 「先ほど飛び降りたのは、うちの体操部部長の町田君です。彼と演劇部の素晴らしい演技にどうか、皆さん拍手を」


 そう、先ほど飛び降りたのは演技部の女子生徒ではなく、体操部の部長の先輩である。


 もちろん、下にはマットを敷いており、安全面は確保してある。


 後方にあられた体操部部長の町田先輩と演劇部の登場で、あれが全部演技で演出だとわかり、生徒たちは安堵し、素晴らしい演技に拍手を送った。


 「さて、次にいじめの加害者はこれからどうなるかをスライドの映像を見て学んでいきましょう」


 また、スライドに映像が映し出され、加害者がどうなっていくかを説明していく。


 加害者はいじめていた生徒が自殺したため、暴行罪や傷害罪に問われ、ネットでは個人情報が拡散し、デジタルタトゥーという負の歴史を背負いながら、一人の人間を殺してしまったという罪悪感に苦しみながら一生を過ごしていく。


 その映像と説明を生徒の多くはしっかりと聞いている。


 さきほどの演技でどれほどいじめが恐ろしいものか実際に体験し、そうならないためにも真剣に説明に耳を傾けている。


 そして、映像と説明が終わり、最後に咲空先輩と黒瀬が司会として締めくくる。


 「この集会を通して、いじめの重大さをわかっていただけたでしょうか。私たちの学校では、いじめゼロを目指します。もし、いじめや他にも学校で何か困ったことがあったら生徒会や」


 「風紀委員会を頼ってください。私たちはみなさん、生徒の力になります。ご清聴ありがとうございました」


 パチパチ、パチパチ


 全校生徒の拍手と共に咲空先輩と黒瀬がステージから降りて、集会が終わる。


 生徒たちは体育館から教室へと戻っていく。

 「すごい演出だったね」

 「ほんと、マジで飛び降りたかと思った」

 「泣いてるやつもいたしね」

 「私もびっくりしてさけんじゃったもん」

 「いじめって改めて怖いと思ったね」


 そんな感想を言いながら教室へと戻っていく生徒たち。


 これで、三つ目の条件のいじめが許容されている空気を換えることが完了した。


 この集会を通して、生徒の多くにいじめに対して恐怖の感情が改めて印象に残っただろう。


 少なくとも、近くでいじめを目撃したら傍観せずに先生や生徒会に報告ぐらいはするようにだろう。


 もし、吉田がいじめの標的から外れても他の人間がいじめられることは難しくなっただろう。


 司会を終えた咲空先輩と黒瀬がステージ裏にいた俺のもとへとやってくる。


 「お疲れさまでした、先輩。いろいろ今日まで頼み事してしまってすいません」


 「笹原君もお疲れ様。いや、私達生徒会もこの集会のおかげでより良い学校にすることができたと思うからwinwinだよ」


 「いえ、それでも俺のわがままを聞いてくれたことには変わりません。今度ご飯でも奢りますよ」


 「なら、素直に奢られてやろう」


 今回は生徒会にたくさん頼ってしまったし、演劇部や体操部の部員にも声をかけてもらったからここはしっかりと恩を返さなければ。


 「ちょっと、私にはねぎらいの言葉はないわけ」


 不満そうに言葉をぶつけてくる黒瀬。黒瀬は風紀委員会の委員長だし、どちらかっていうとこっちが頼み込んだっていうより勝手に計画に参加したのだから、咲空先輩よりは感謝は薄いのはしょうがないと思うのだが、


 まぁ、一応感謝はしている。


 「おう、黒瀬もサンキューな。てか、なんで風紀委員会を頼ってって言ったんだ」


 「もちろん、風紀委員会の活動を増やすためよ。今回みたいに生徒会と協力するのもいいかもしれないわね。これからも生徒会と仲良くやりましょう咲空会長」


 「こちらこそ、風紀委員会を頼らせてもらうね。笹原君は嫌な顔してるけど」


 「もちろん、笹原君も副委員長なんだから協力するようにね」


 今回の計画に風紀委員会を巻き込んだのは間違いだったかもしれないな。黒瀬のせいで生徒会と合同で何かやることで仕事が増えそうだな。


 「分かってますよ」


 しぶしぶ、俺は返事をして二人と一緒に体育館を後にする。


 それから放課後までは、集会のことで話題は持ちきりとなり、吉田をいじめていた三人組は少し肩身が狭いのかいつもと違ってすぐに教室を出て行って、帰ってしまった。


 俺は吉田と一緒に今日あったことを話しながら駅まで帰って行った。


 


 

 


 

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