【17話】作戦三日目(下)
おはようございます!
朝の投稿になってすいません!
このいじめられっ子吉田編は今週中には完結するつもりです!
ぜひ、ブックマーク、感想、評価待ってます。
四限が始まり、俺は黙々と作業を始める。
となりの吉田も黙々と作業を続けている。
となりで吉田の作品を見ていると、さすがという素晴らしいイラストだ。
描かれいているのは先程紹介された主人公の友崎くんと陽キャヒロインが一緒にイタリアン的な店で食事をしているシーンが描かれている。
二人のキャラはそのキャンパスから今にでも出てきそうな臨場感があり、主人公のちょっと戸惑っている表情やヒロインの小悪魔的に笑っている表情から、ヒロインが主人公を面白おかしく揶揄ってる様子がうかがえる。
背景のおしゃれなイタリアンのお店は細かい装飾やこじゃれたインテリアまで細かく書かれており、繊細な作業までしっかりと行っている。その店の明るく、暖かい照明がそのキャンパスいっぱいを照らして全体的に穏やかな作品となっている。
授業で描く絵としてはどうかと思うが、吉田の趣味が全面的に出ている素晴らしい絵だ。
俺も俺なりに頑張って作品を書いているが、どうやっても吉田のような輪郭の鋭さ、キャラの表情、色付けのの繊細さを表現できない。
それは当たり前だ。俺と吉田では絵にかけている時間と努力が違う。
俺が勉強に時間と努力を賭けているように、吉田はそれをイラストに費やしている。
さて、作戦を始めるか、
そんな素晴らしいイラストに感心しながら、俺は今も楽しそうに友人と会話をしている花菜に目線を飛ばす。
吉田に定着させるキャラは「イラストを描くことが好きなアニメオタク」キャラだ。
もちろん、このキャラは学校という環境では下位に位置づけられる陰キャに分類され、いじめの標的になりやすい。
だけど、イラストを描くのがうまいというのが武器になる。
他の人にはない誇れる特技があれば十分それがその人のキャラになる。それが例え、歌が上手とか、字が綺麗とか、足が速いとか、そんな特技でもその人の個性であり、キャラとなる。
なぜなら、それは他の人よりも時間と努力を費やした誇れるものだからだ
それに花菜も気づき、俺に簡単に目配せをする。
そして、花菜はゆっくりと女子の友人を何人か引き連れてこちらの方に向かっていく。
目的は俺ではなく、隣の吉田だ。
「え、すごーい!」
花菜が数人の友人と吉田の席を通り過ぎる際に、驚いたように声を上げる。
その友人も花菜に釣られて吉田の席に視線を向ける。
「見て!この絵すごく綺麗じゃない?」
花菜は吉田の作品を指さしながら、友人にその作品を見せた。
「あ!ほんとだ。綺麗だね」
「ほんとほんと、プロみたい」
「これって陰キャラ友崎くんでしょ、俺アニメ見てるわ」
「すごい上手、これって吉田が書いたの?」
花菜の感想に他の友人が同調して、すばらしいと賞賛の感想を述べる。
これは、吉田の作品が素晴らしく、人の興味を引く魅力があるのも、もちろんだが、花菜の影響力もその一端だ。
学校という集団では、花菜というカースト上位の意見に少なからず影響される。
花菜には事前に作戦を伝えて、わざと友人数人と吉田の席の方を通り、作品を褒めるようにと伝えていた。まぁ、誉め言葉は演技じゃなくて本心だろうが。
花菜やその友人が吉田の席に集まっているのに気づいた他の生徒も吉田の席に何か何かと集まってきた。
「うん、実はこういうアニメのイラストとか描くのが趣味でよく書いてるんだ」
少し照れながら吉田が答える。おそらく人生で一番注目された瞬間であろう。
「へー。そうなんだ。じゃあ、いろいろな絵を書いてるの?」
「うん、今は持ってないけど、教室に戻ればいつも書いてるスケッチブックがあるよ」
「ほんと!昼休みに見に行ってもいい?」
「う、うん、いいよ」
「ありがとう」
吉田と花菜が自然と会話を交わす。よし、練習通り、花菜という陽キャ女子とも会話ができているな。
「えーマジ!?私も見てみたい」
「俺も見に行ってもいい」
「もちろん、いいよ」
「なんか吉田君って意外と話しやすいね、もっと暗い性格だと思ってた」
そんな感じで吉田の周りを囲って何人かの生徒と作業をしながら楽しそうに話している。今までいつも一人でいた吉田にとって絵という自分のテリトリーで友人たちと話すのがとても楽しいことなのだろう。
その後は花菜に連れられて、吉田は席の中央に席をほとんど強制的?に移動させられて授業をしていた。少し居づらそうだが、それでもたくさんのクラスメイトに囲まれながら、楽しそうに美術の時間を過ごしていた。
そのため、俺はひとりで黙々と作業に取り組み、四限が終わる前に作品を完成させて提出した。これで次回の美術の時間は勉強に使うことができる。
四限が終わって昼休みになっても吉田は自分のスケッチブックを見せながらアニメやイラストのことについて熱弁していた。
女子たちは吉田のスケッチブックを取って「この絵綺麗だね」「このキャラ知ってる!」「これ吉田が書いたの!?マジで天才じゃん!」っと吉田の臨場感あふれるイラストを見ながら賞賛していた。
男子たちは吉田と今放送しているアニメの話をしながら盛り上がっていた。
これで二つ目の条件、吉田のキャラの周知が完成した。
キャラというのは英語で『特徴』、その人の特技、性格が由来するものである。運動ができる人、頭がいい人、性格が明るい人、天然な人のなど、多種多様なキャラが存在する。
このキャラが確立することでクラス内での立ち位置が決定する。
圭人でいえば運動神経抜群で勉強もできる天才陽キャラ、黒瀬でいえば学力が高く規則にも厳しい優等生キャラ。
このように全ての人はキャラによって成り立っていて、クラス内での立ち位置が決定する。
学校という環境では陽キャは上位、陰キャは下位に位置づけられる。だけど、キャラが確立していなく、周知されていなければ下位どころか、認知されずその環境から除外されたような扱いになる。
なぜなら、キャラがない人に人は興味を持たないからだ。そもそも、キャラとは自分で確立するものでなく、他人に自分のことを評価、認知してもらうことで確立するものだ。
だから、自分の特徴、性格、特技をクラスメイトに知っもらい、キャラを確立する。
今までの吉田は自分を主張する作業を怠ってきた。だから、キャラが確立せず、クラスメイトに認知されていなかった。
吉田は今日までで自分が「アニメや漫画が好きなオタクで、イラストを描くのが大好きだ」ということを主張し、その主張をクラスメイトが受け止め、キャラが確立された。
この後も、吉田は誰かしらのクラスメイトとコミュニケーションをし、三日目を終える。
放課後は今日、俺が用事があるため、吉田には圭人と花菜と一緒に帰ってもらった。
この三日間で吉田は大きく成長した。
苦手ながらも、クラスメイトと積極的にコミュニケーションを図り、阿部という会話の波長の合う友人を作り、イラストという自分の特技を披露し、自分という人間を知ってもらいキャラを確立した。
さて、明日は俺の番だ。
俺はこれからある会議に向けて黒瀬と共に教室を後にする。




