【15話】作戦一日目
一日目を終えました。
なんかどんどん文字数が増えてますが、頑張って読んでください。
どんどん、ブックマーク、感想、評価待ってまーす
よろしくお願いします
月曜日を迎えた。
今日から一週間吉田のいじめ脱出計画が始まる。
俺は、いつもと変わらない朝のルーティンをこなし、花菜が迎えに来るのを待つ。
今日の吉田がすることは至って単純、昨日身に着けたコミュニケーションを使って、何人かと会話をし、自分のコミュニティを作成する準備をすることだ。
いきなり、自分が所属するコミュニティを作ることは難しいだろうが、これはこの一週間で完成すれば成功なのだ。
もちろん、昨日練習したからと言って、今まで陰キャでぼっちだった奴がクラスメイトと交流を求めるのは不自然に他のクラスメイトから移るかもしれないが、まだ、クラスができて一週間で土日も挟んだため、吉田に対する認識はそこまで固定されていないだろう。
また、俺や圭人、花菜がサポートすることでその不自然さをかき消す。
つまり、今日は肩慣らしみたいなもんだ。
気楽にやればいい、と思っているんだが。今朝から俺のスマホがしつこく鳴っている。
原因は俺のスマホの画面に写る大量のメッセージから察することができるだろう。
「ねえ、笹原君、本当に大丈夫かな?」
「会話の話題ってこの前のテストことでいいかな?」
「朝は、早めに登校した方がいいの?」
こう言ったメッセージがすでに20件近く俺のスマホを鳴らしている。
どんだけ、臆病者なんだよこいつは、
正直返事を返すのは面倒だけど、このまま無視してたら、こいつ学校に来ない可能性もあるからな。
仕方ない、少し手を貸してやるか、俺はスマホのメッセージアプリを開き、吉田にメッセージを飛ばす。
「最寄り駅に8時10分に集合。今日だけは一緒に行ってやるよ」
すると、間もなく既読が付き返事が返ってくる。
「わかりました!ありがとうございます、笹原君!」
はぁ、少し先が思いやられるが仕方ない。
「おはよう!カズ、学校に行くよ」
「悪い、花菜。今日は吉田と一緒に登校することになったからパスで」
「えー、じゃあ私も一緒に行こうか?」
「遠慮しときます」
たたでさえ、俺と花菜のコンビは歪なのに、そこでさらに陰キャぼっちの吉田が加わって一緒に登校するとか、カオス以外の何ものでもない。
その点、吉田と、陽キャでない地味な俺とではつり合いが取れている。何の違和感もない。
言ってて少し悲しくなるが、これが現実なのだ。受け入れるほかない
「分かったよ、じゃあ今日はクラスの友達と行くね。じゃあ、お先に」
「おう、また学校でな」
花菜は颯爽と俺の家から学校に向けて出発した。
さて、俺も行くか。
駅に着くと、学校の最寄り駅のため多くの生徒であふれかえっていた。みんな何人かで一緒に登校することが好きなんだろう。俺は、花菜と一緒に登校することも多いが、基本は一人の方が良い。
花菜に無理矢理一緒に登校させられているだけで、花菜が寝坊かなんかで俺の家に来ない時は一人で登校している。小説を読むか、単語の勉強をしながら登校することで時間の効率化ができる。
俺は、その多くの生徒から吉田の姿を探す。
すると、あっさり見つかった。改札の近くのベンチに座ってうつむいている。
なんかあそこだけ雰囲気が違う。暗い、明るい春の朝なのにあそこだけ負のオーラがある。
近寄ってみると、なんか小声で繰り返しているが小さすぎて聞こえない。
「お~い、吉田大丈夫か?」
「あ、笹原君。だ、大丈夫」
顔は少し青ざめているし、小刻みに震えていて大丈夫そうに見えんが、そこに突っ込むと時間がかかりそうなので、さっさと学校に向けて歩み始める。
吉田はそんな俺の少し後方を連れられているように歩く。なんか奇妙に見られるな。
「早く来い。話しながら行くぞ」
「うん」
「そんなに緊張するな。昨日の練習の通りにすれば問題ない」
「そうなんだけど、緊張しちゃって」
「別に失敗しても気にすることない。クラスのみんなもお前が会話苦手な陰キャであることは知ってるから何のリスクもない。あと、昨日も言った通り、背中を丸めない、背筋を伸ばす」
俺は、吉田の丸まった背中をバシッと叩く。その衝撃で吉田の背筋が伸びる。
「分かりました。あと、痛いです」
「別におしゃれになる必要はないが、最低限の身だしなみは気を付ける必要がある。」
そう、人の第一印象の八割は外見で決まるという。だから、少なくとも自分の外見を清潔にしなければならない。
陰キャなぼっち共は背筋が丸まっている、小太りである、髪がぼさぼさである、など外見のマイナス要因が多数存在しているため、その人の八割は清潔でないと判断されてしまう。
だから、昨日花菜にも協力してもらい、吉田に姿勢の矯正や髪型の軽いセットを教えた。
実際、吉田はいつものぼさぼさの髪でなく、目にかからない程度の長さの髪が綺麗に整えられていた。
「吉田、今日することは三つ。一つは朝の挨拶をすること。二つ目は休み時間中必ず誰かと話すこと。三つ目は誰かと昼食をとること」
とりあえず、今日は実践で会話に慣れてもらう。拙くても数で場数を踏んでもらう。勉強やスポーツと一緒だが何事も基礎を何度も反復練習することで結果に結びつくのだ。
「分かってる。頑張るよ」
吉田から先ほどまでの異常な緊張は感じられない。適度な緊張だ。
「俺や圭人、花菜も手助けするから心配するな、あと、一週間帰りは俺と帰ってもらうからな」
この一週間中でもいじめは続く。休み時間や昼休みはクラスメイトと話すことでやり過ごせるから、放課後はそうはいかない。だから、同じ帰宅部である俺と一緒に帰ればいじめられることはないだろう。
その後、俺たちは会話の話題や挨拶の仕方など今日すべきことを話しながら学校に向かった。
学校に着き、教室に向かう。
俺はドアを開けると同時に、友人と話す親友である圭人を見つけた。
「おはよう、圭人」
「おはよう、一真」
俺と圭人は挨拶をかわし、他の友人たちとも俺は挨拶をかわす。
俺は別にぼっちではない。ただ積極的に話に行くことが少ないだけで、圭人以外との友人ともグループ活動や日常会話程度は普通にしている。
遅れて入ってきた吉田も圭人に挨拶をする。
「おはよう、工藤君」
「おはよう、吉田」
その後も、吉田は俺と挨拶をした流れで他の友人たちとも初対面ながら挨拶することができた。
とりあえず、第一ミッションクリア。
その後の休み時間も俺や工藤を通して、三、四人の友人と軽いコミュニケーションをすることができた。話題は専ら、学校のことでこの前のテストのことや四限の体育だるいとかあの先生いつも出席番号順で指すから後ろの番号のやつ良いなとかだ。
全く持って生産性のない話だ。そもそも高校生に生産性を求めるのは間違っているんだ。彼らは生産性、将来性のために会話をしているんじゃない。会話というコミュニケーションを楽しむという無駄なプロセスに意義を感じているんだ。
だから、会話の話題なんてどうでもいいことでいいんだ。
それを共感できるか、否かだ。
俺は効率的に学校生活を過ごし、現実的に良い大学を目指す俺にとっては無駄な作業であるため一人を好むのだ。
まぁ、それは置いといて、今のところ順調に吉田は会話の実践を積んで、通常のコミュニケーション能力を身につけつつある。
第二ミッションもクリア
昼休み誰かと食事をとることの第三のミッションも圭人がクラスのアニメ好きの二人を紹介して、圭人を含めた四人で食事をしている。
圭人の補助もあるが、しっかり会話は成立していて、何より好きなアニメの話をしているため楽しそうに会話できている。
会話をするのは、コミュニケーションをとるものであるが、それより重要なのは楽しむこと。自分が楽しむことができない会話なんて時間の無駄でしかない。
さて、昼休みは俺にもミッションがあるため働かなければならない。
憂鬱だな。あいつと仕事をするのは
「ほら、いくよ笹原君。あなたが放課後時間無いって言うんだから」
「分かりましたよ、すいませんね。時間もらっちゃって」
「そうよ、私の時間をもらうんだからしっかり働いてもらわないと」
「はいはい、わかりましたよ」
俺と黒瀬の二人は咲空先輩が待つ生徒会室へ向かった。
話し合いを終え、ある程度やることが決まって今日のミーティングは終わった。
教室に戻ると、そこにはまだ友達と楽しそうに話す吉田の姿がある。
圭人はそのグループにはもういなく、恐らく他の友人と体育館でスポーツでもしているんだろう。圭人はテニスだけでなく、他のスポーツもそつなくこなすことができる運動神経の持ち主だ。だから、よく昼休みには他の運動部の友達とスポーツをしている。
圭人には、なるべく吉田の自主性を尊重してくれと頼んでいた。その意図をしっかり組んでくれてフェイドアウトしてくれたのであろう。
ともあれ、第三ミッションもクリア
吉田は五限、六限の休み時間も誰かしらと話してコミュニケーションを図れた。
作戦一日目は終了。
上出来な成果だ。
このままいけば、一週間でいじめられない条件の一つ学校内でコミュニティを形成することが可能になるだろう。
明日からは、二つ目の条件、キャラの作成に入る。
俺は、吉田と今日のことを振り返りながら帰路に着いた。




