【14話】作戦の予行練習(上)
長くなってしまったので14話は上下で分けます。
下は今日中に投稿するのでお楽しみに
ブックマーク、感想お待ちしております!
あと、少し題名いじりました。
俺たちは、俺の行きつけのカフェを訪れていた。
このカフェは俺が普段読書や勉強で利用しているカフェで、他のカフェよりも値段が安く、また、席が仕切りで分けられているため、周りの目を気にせず集中できるため、俺のお気に入りだ。
また、四人掛けの座席の個室があることやテラス席があることも魅力的だ。
俺は、その個室に三人を連れてきて、座らせる。
俺たちは適当にメニューを見て注文する。
ちなみにみんなが座っている座席は、俺と圭人が向かい合わせで俺の隣に花菜、その向かいに吉田だ。
ほんとは吉田は俺の隣に座ろうとしていたのだが、花菜が割込みし俺も隣に座ったため、仕方なく、花菜の前に座るしかなかった。
女性耐性のない陰キャな吉田にとって、花菜のような可愛いくて明るい陽キャな女子に耐えられることなんてできず、常に目線を机のメニュー表に移している。
「まぁ、とりあえず吉田に自己紹介ってことで、こっちが工藤圭人で、こっちが朝比奈花菜」
俺は二人を指して、吉田に説明していく。
「知っています、二人とも有名人だから」
圭人はテニスの大会で全国に出場するほどの実力者でイケメンで、花菜も持ち前の明るい性格とその容姿から人気があり、おそらく学校内の知名度ではナンバー3には入るだろう。
「で、こっちが吉田拓郎。今日の主役だ」
「よろしくね、吉田くん!」
「よろしく、吉田君」
「よ、よろしくお願いします」
陽キャ二人の圧に押されている陰キャ吉田であった。
そして、注文したメニューが来て、俺はコーヒーを飲みながら早速本題に入る。
「さて、今日は明日からの吉田いじめ脱出計画の内容とその準備、予行練習を行う」
そして、俺はいじめ脱出計画の内容を話していく。
「先に言っとくけど、吉田。これはあくまでも吉田がいじめられるのを無くすだけで、お前が圭人みたいなカーストトップな陽キャになるみたいなラノベ的な展開を期待するなよ」
「そんな事期待してないです。僕はただいじめられる自分を変えたくて、それに僕一人の方が好きですから」
一人の方がいいか。俺も一人が好きだ。人と関われればその分行動が制限されたり、時間を割かなければならない。
「一人の方がいい、確かに気持ちは分かる。俺も友達とカラオケに行ったり、遊びに行ったりするの苦手だしな。だけど、学校という環境にいる限り一人でいることは害悪でしかないぞ」
「え、」
「学校という環境にいる限り、団体行動という理念が俺ら生徒に義務付けられているからな」
日本の学校では、団体行動という概念が深く根強いている。つまり、足並みをそろえなければならないのだ。一人が勝手な行動するのは許されない環境にいるのだ。
「それに、一人で学校生活を過ごすことは非常に効率が悪い」
「どういうことですか?」
「一人でいることはすなわち何も自分一人で行わなければならないということ。学校で起こるトラブルや問題を一人で解決しなければならない」
例えば、教科書を忘れた時、友達がいなければ誰かに借りることもできないし、宿題をやり忘れた場合では誰かに写してもらうことさえできない。
また、一人では情報も入ってこない。明日の授業変更があるとか、持ち物に何が必要かも友達がいなければ入ってこない。
一人で学校で起こるすべての問題を解決するなんて到底不可能なのだ。
「だが、別に俺は放課後や休日に遊びに行くような友達を作れとは言わない。俺も基本は一人で過ごす方が好きだからな」
「じゃあ、どういうことですか?」
「俺が言いたいのは、学校という環境の中で情報を共有することができる友達を作れってこと。その後に休日遊びに行くような友達に発展しても別に良いが、とりあえずは学校内で話せるコミュニティを作ることだ」
俺にとっては、それは花菜や圭人のこと。学校外で遊ぶこともあるが基本的には学校という環境の中でのコミュニティだ。
「もちろん、その役割を俺や圭人に任せることも可能だが、それはこちら側の恩情であり、対等な関係ではない。あくまでこっちが吉田に譲歩しているか形だ」
俺たちが吉田の友人になって、いじめを助けるのは簡単だ。だが、それは依存でしかなく、吉田の成長にはならない。
「つまり、僕は学校内で話せて、情報を共有できる人を自分で見つける必要があるってことですか?」
「そういうこと」
俺は、親指を立てて、吉田に向ける。
「でも、僕コミュ障で陰キャだし、会話も続かないし、友達なんてつくれるのかな」
誰かが言った、友達は作るもんじゃない、勝手にできるものだと……
そんなわけあるかい!
会話をしなければ、コミュニケーションを取らなければ、行動を起こさなければ友達なんてできない。
「まだ、新学年になってから一週間ほど、完成しているコミュニティはほとんど少なく、入る余地は十分にある」
友達を作るには環境が変わり、始まるときに限る。それは、まだコミュニティが完成していないからだ。完成しているコミュニティに割り込んで参入するのは陽キャであっても難しい。
「そんな吉田のために今日、この集まりを開いたってわけだ」
俺は、花菜と圭人に視線を向ける。
「やっと私たちの出番ってわけね」
「そうだな」
二人が勢い良く立ち上がる。今までずっと黙っていたからな。陽キャ特有の騒ぎたい欲が抑えられなかったのであろう。
だが、急に動くのはやめてほしい。吉田も驚いてるだろ。
「そういうこと。学校で屈指のカースト上位の陽キャ花菜と圭人会話できれば、他の人間なんて会話お茶の子さいさいだ」
そう、今日の集まりは吉田にコミュニケーションを慣れてもらうためだ。
「じゃあ、まず圭人と話してみ」
「あ、はい」
吉田と隣に座っていた圭人は会話をするため向かい合いとなる。初めから花菜のような可愛い異性はハードルが高すぎるからな。陽キャでも比較的に話しやすい圭人でまず肩慣らしだ。
「じょあ、吉田このまえのテストどうだった?」
「えっと、確か100位くらいだったと思います」
「へーそんなんだ」
「・・・・」
終わってしまった。会話のキャッチボールはたったの一往復して、圭人が投げたボールを吉田が受け取らず終わってしまった。
「おい、もう終わりかよ!」
「だって、なに話したらいいかわからないですし」
「いま、圭人が学校のテストの話を振っただろう。それにお前が答えて、圭人が頷いた。会話はキャッチボールなんだ。会話は常に質問と回答で成り立つものだ。おまえは同じ質問を返してやればいいんだ」
「えっと、工藤君はどうだったの?」
「俺は確か、23位だったな」
「す、すごいね。………」
また、会話が止まった。まぁ、とりあえず、ボールの返し方が分かっただけでも進歩か、
「会話はキャッチボールっていうことを学んだ。このまま、会話を続けに必要なのは話題の派生だ。今はテストの話をしていたから、それに関連すること。例えば、今の会話の流れだと、圭人の順位が高かったから、普段どういう勉強をしているのか聞くとかだな」
「な、なるほど」
吉田は、そのあと、テストの話題から勉強の仕方、どれくらい勉強しているか?、普段の休日の過ごし方と発展して会話が進んでいった。
まぁ、この会話が続いてるのはコミュニケーションの高い圭人のおかげなのだが、吉田の方も会話のリズムを学びつつある。
「それじゃあ、今度は吉田から話を振ってみよう。圭人普段学校で友達と何の話をしてる?」
「そうだなあ、基本的には学校の話とか、部活のこととか、流行ってる音楽の話とかだね」
「そう、学校で話す話題は基本的に学校のことか、共通の話題の二つだ」
ここで、その人の幼少期の話とか、将来の進路の話とかは会話が成立しない話題だ。基本的に人は他人に興味を持たない。会話をする目的は、会話自体がコミュニケーションだと感じているか、情報収集のためか、自分の話をしたいかである。
「さっきは、学校のことを話題で会話したから、次は共通の話題でやってみて。ちなみに吉田は、アニメ好きのオタクで、圭人もたまにアニメを見たりしてるだろ」
「そうだね、スポーツ系のアニメはよく見てるよ」
「そうなの!?」
吉田が驚いた様子でいる。
「てっきり、工藤君みたいな人はそういうもの見ないと思ってた」
「それは、偏見だよ。俺の友達でもアニメや漫画を見ている人結構いるよ。ただ、男子高校生はかっこつけたい質だから、あんま人前だと話さないことがあるけどね」
「そうだったんだ」
「ということで、さっきの会話のキャッチボールを生かして会話してみ」
「うん」
それから、吉田と圭人の会話は30分ほど続いた。アニメの分野は吉田にとってホームグラウンドのため、話がすごく弾んでいた。俺が止めなかったら、あと1時間は続いていただろう。
ちなみに、俺と花菜は手持ち無沙汰だったため、このカフェの人気のスイーツの食べ比べをしていた。
このカフェのスイーツは基本的に小さく、安価であるため、たくさんの種類のスイーツを味わうことができる。俺は、ほとんどのスイーツを制覇しているため、期間限定のイチゴと桜のロールケーキを食べていた。
桜の練りこまれた柔らかい生地と芳醇な甘みを持つクリームが絶妙に合い、鼻に透き通る桜の風味は春の訪れを感じさせる。また、トッピングで載っている少し酸味の効いたイチゴと一緒に食べると、甘みを抑えた優しい味に変わる。
うん、美味である。今度来た時には、これと一緒に同じく期間限定の「さくらのミルク紅茶」を頼んでみよう。
花菜は俺がおすすめした少し苦みの効いたガトーショコラを食べている。花菜が注文したミルクコーヒーととても合うため、俺が勧めた。
満足そうな顔をして、ガトーショコラを頬張っているためよほど美味しかったんだろう。よかったよかった。




