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第12話 美人局? 性悪サキュバスを捕えよ!(下)

 レビはベッドの上で跨っていたテレンスから降りると、その黒光りするドレスをゆっくりと纏って(あたし)に向かって右手を(かざ)した。すると、(あたし)の身体から淡い光が立ち昇ったかと思うと、その光がすぅ、とレビの掌に吸い込まれてゆく。


 ガタン!


 (あたし)は思わず膝をついた。全身の力が抜け、頭がぼんやりとしてくる。すると、レビは(あたし)に近づき、(あたし)の頬を強く張った!


「痛ッ……何すんのよ!!」


 (あたし)は逆上しレビに掴みかかろうとするが、力が入らない。それを嘲笑うかのように、レビは(あたし)の顎をクイッと掴むと再び頬を張る。


「くぅッ」


「残念ね。何も男からしか精気を吸えないわけじゃないのよ。ただ、アンタたちみたいなそのへんの女どもの精気を吸うだなんて本当ならアタシのプライドが許さないけどね!!」


 倒れ込んだ(あたし)を、意地の悪い顔をしながら黒いヒールで踏む。リーヴァイが部屋へと踏み込もうとするが、入り口に結界を張ったのか先へ進むことができない。


「ううっ、ぐうっ……」


「サラ!」


リーヴァイが結界を拳で叩くがびくともしない。レビはケケケと不気味な笑い声を上げて、(あたし)を蹴り上げる。そのはずみで、(あたし)は窓際へ転がった。


「意気揚々と踏み込んできたまではよかったけど、所詮そこまでね。アタシは性格がいいの。ボロ雑巾になるまで甚振(いたぶ)ってあげる。外野は指をくわえて見てることね!!」


 レビはドSな笑みを浮かべて(あたし)の胸ぐらを掴んだ。大きく振りかぶって再び(あたし)を張ろうとしたその瞬間、突然身体に力がみなぎる。レビの手を振り払うと、バク転をした勢いで(あたし)はレビの顎を蹴り上げた。


「ギャッ!!」


 レビは大袈裟にその場に倒れる。その瞬間、結界が解かれリーヴァイが部屋の中へと駆け込んでくる。


「サラ! 大丈夫ですか!?」


「ありがとうリーヴァイ……大丈夫」


 よろめいた隙に(あたし)飛刃剣(スライサー)、リーヴァイに毒矢を向けられ、レビはその場に固まった。その口の端から、真っ青な血が滴っている。


「ア……アンタはアタシに精気を吸われたはず……それがどうして……!?」


 (あたし)が答える代わりに、エイプリルが部屋へと入ってくる。


「あなたの絶叫(あえぎごえ)を延々と聞かされたのは正直心外だったけど、この宿が安普請(やすぶしん)だったのはわたしたちにとって不幸中の幸いだった――入口に結界を張るのに精一杯で、壁の穴までは気が回らなかったようね」


「……!!」


 レビが悔しさのあまり声にならない叫び声を上げる。エイプリルの言葉どおりだ。さっき、レビがテレンスと情事(コト)に及んだのを覗き見た壁の穴――レビが、結界の向こうのリーヴァイに気を取られていたその隙に、エイプリルは壁越しに(あたし)治癒(ヒーリング)をかけていたのだ。ここがボロ宿でなければ、レビの言うとおり(あたし)は今頃ボロ雑巾にされていたに違いない。


「観念なさい……性悪サキュバスさん♪」


 エイプリルに束縛(バインド)で動きを封じられたレビの後ろ手を(あたし)は縛りつけた。レビはわなわなと震えていたが、窓の外に見える真っ赤な月を目を見開いて睨みつけながら絶叫した。


「畜生……ちくしょおおぉッ!!」


 サキュバスというモンスターは、レビのように人間と大差ない知能を持つ者もいる代わりにさほど強い戦闘能力を持たない。そのため、他の力の強いモンスターと群れて行動していることが多いが、今回のようにまれに人間と結託するようなこともあるらしい。おそらく、ダンカンもレビに魅了されて利用されていたのだろう。だが、頼みのダンカンがいなくては、攻撃力に乏しいサキュバスは隙を見せたら最期(アウト)だ。青筋を立て、ギリギリと歯ぎしりをするレビの顔は、(あたし)への怒りに満ちていた。




 かくしてレビとダンカンは王国の地下牢に投獄された。無論、レビは男どもと一緒にされる訳もなく、さらに地下深くの独房へとその身を投じられたというが、その後彼女がどうなったのか知る者はいない。


「それで……あの後、テレンスはどうしたの?」


 (あたし)が訊くと、エイプリルは呆れて肩をすくめた。


「俗世への未練をこれっぽっちも断ち切れていないと今回の一件で分かって、寺院を破門になったそうよ……最近ギルドにも顔出さないけど、どうしたのかしら」


「あ……ああ……」


 レビに精気を残さず吸いつくされ、カピカピに干涸らびたようにベッドに横たわり、白目をむいて気絶していたテレンスの姿を忘れることはないだろう……さらに破門とあっては、しばらくこのギルドにも顔を出さないのではないか。思わず(あたし)は溜息をついた。


「お邪魔するメロ! おつかれメロ!」


「メロン?」


 突如メロンが飛んできて、(あたし)の頭上をクルクルと飛んでいる。カサカサという羽音がうるさく、思わず(あたし)はメロンを握りしめた。


「ギュウ……」


「来るなら来るで静かにしてよね、メロン。それで、今日はどうしたの?」


 メロンはフラフラと机の上にへたり込むと、蚊の鳴くような声でつぶやいた。


「国王様がお呼びメロ……すぐに王宮まで来てメロ。この前、スパンキーが言ってた黒幕……ダライアスの手がかりが分かったメロ」


「ダライアスの?」



【つづく】

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