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 ファースト・シティに戻り、試練成功を祝うため、俺たちは店で飯を食べることにした。


 ファースト・シティでも評判のいい酒場にいった。


 今回、小悪魔の森では金になる物をあまり入手できなかったので、収入ほほぼゼロである。ただ、からくりの塔で稼いだ分があるので、金自体は持ってはいた。


 ルナとルイの二人は、あまり金を持っていなかったので、食事代はおごることになった。


「いやー、ごめんね、お金持ってなくてー。今度返すからさ」


 ルナは申し訳なさそうにそう言った。


 そこまで大金ではないので、返してもらわなくてもいいのだが、ルナはその辺、きっちりしないと我慢できなさそうなタイプな気がしたので、変に遠慮はしないでおくことにした。


 高めの金を出したので、かなり美味そうな料理が次々に運ばれてくる。


「美味しそうですね〜!」


 とセリアは目を輝かせている。

 シラファは何も言わずに、一人で料理を食べ始めた。


 かなりの勢いである。一人で全部食ってしまいそうなくらいだ。


 こいつ意外と食い意地張ってるよな。


 シラファに全部食べられたらたまらないので、俺も急いで料理を食べはじめた。


 料理は美味しかった。


 食べ終わった後、満足そうに、


「美味しかったー」

「ですねー! こんな美味しい料理初めて食べましたよー」


 ルナとセリアが満足そうにそう言った。


 初めて食べたってほどではなかったが、確かにかなり美味しかった。評判になるのも頷ける。


「特にミートソースのスパゲッティが美味しかったね」


 ブロズが感想を言った。


 シラファは、「おかわりはしないのか?」と言っている。


 結構な量あったのに、まだ満腹じゃないのか。


 体は細いのに胃袋は大きいんだな、シラファは。


 これまでそんなにガッツリ食べていなかったような気がしたが、遠慮していたようだな。


 シラファは結局おかわりをして、満足したようだ。


「さて、次はどこに行けば良いんだっけ?」


 小悪魔の森から帰ってきたばかりだが、俺は次の冒険の話を始めた。


「何とかの神殿って場所じゃなかったですか?」


 セリアが思い出しながらそう言った。彼女はうろ覚えのようだ。


「目覚めの神殿よ」


 ルナがそう答えた。


 彼女は俺たちより早くアウターに来ており、アウターのことに関しても詳しい。

 目覚めの神殿がどんな場所か尋ねてみることにした。


「どんな場所か知ってるか?」

「うーん、小悪魔の森は次行く場所だから、調べてたけど目覚めの神殿は調べてないわね」


 どうやらルナも知らないようだ。

 まあ、それもそうか。


 普通は小悪魔の森を攻略してから、目覚めの神殿に関する情報は調べるか。


「でも、噂程度なら聞いたことあるよ。アウターってのは1stは物凄く楽な世界だけど、2ndからは一気に過酷な環境になるから、目覚めの神殿は2ndでやっていけるのかを計る場所だから、それはそれは厳しい場所なんだって」

「そうなのか……」

「でも、私たちって小悪魔の森のSランクの依頼もこなせたし……あれもめっちゃ難しいって言われてたからね。案外何とかなるんじゃないの?」


 ルナは割と慎重派な感じだったが、今回は珍しくポジティブだった。


 小悪魔の森攻略が、言われているほど難しくなくて、考え方が少し変わったのだろう。


「てか、スレイさんはもう次のこと考えてるんですかー。わたしはちょっと休みたいですよー。からくりの塔も大変だったし、そこから休まずに小悪魔の森も攻略しましたからねー」


 セリアはだいぶ疲れている様子だ。


「確かにアウターに来てからずっと冒険してたし、ちょっとは休んだほうがいいか?」

「私は別に疲れてないぞ。早く次の冒険に行くべきだ」


 俺がそう尋ねると、シラファはそう返答した。

 彼女はどうも戦うのが好きっぽいから、すぐにでも冒険に行きたいようだ。


 俺も早く次の冒険をしたくてたまらないが、疲れを抱えたまま行くと死ぬリスクが高まるし、一旦休むのも良いかもしれない。

 それこそ目覚めの神殿が難しい場所なら、準備もしっかりと行って行くべきだろう。


「俺は早く目覚めの神殿に行きたいけど……でも、あんまり焦るのも良くないし……」


 ブロズは間を置くことに賛成するかと思ったが、どうやら早く目覚めの神殿に行きたいようだ。


 意外だな。


 早く先に進まなければいけない理由が、何かあるのかもしれない。


「目覚めの神殿に行くのは五日後にしよう。それまで休憩したり、情報を集めたり、色々やって最高のコンディションで目覚めの神殿に挑めるようにしておこう」


 俺は考えた結果、休むのがベストだと思ってそう言った。


 シラファとブロズも、完全に納得したかは分からないが、一応その方針に従ってくれるようだった。


 食事を食べて方針を決めた後、俺たちは宿へと向かった。


 ルナとルイは、いつもは俺たちとは違う宿を使っていたので、違う宿に泊まる。


 俺はベッドに入り、次の冒険のことについて考えていた。


 アウターは1stはかなり楽な場所で、2ndから一気に難易度が上がる。

 次に行く目覚めの神殿は、そこに行けるかどうかを試すため、物凄く難しいのだという。


 その話を聞いて、俺は恐がるのではなくむしろワクワク感を感じていた。


 今までの冒険もそこまで簡単ではなかったが、それ以上のものが待ち受けているのか。


 死ぬのは怖い。

 しかし、それでも先に何が待ち受けているのか見てみたいという、ワクワクが勝っていた。


 早く冒険に行きたいと思うと、中々眠れなくなるのだが、何とか気持ちを沈めるよう努力して、俺は眠りについた。


 ○


 翌日、俺はまず情報収集を始めた。


 本来、何も知らない状態で攻略に臨みたいのだが、それは死ぬリスクが高まる。


 目覚めの神殿で終わりではなく、アウターにはもっともっと先がある。


 その先に行くのが、一番の目標だ。

 目覚めの神殿で死ぬわけにはいかない。


 ファースト・シティの住民に話を聞いていく。

 この町で暮らしている人たちの多くは、昔冒険者として生きていて、引退した人たちだ。


 目覚めの神殿まではクリアしたが、2nd以降あまりにも環境が変わり、引退することにしたという人も少なくない。


 目覚めの神殿自体の情報は知っている人たちが多かった。


 目覚めの神殿は、ファーストシティの北側にあり、かなり遠い場所にあるようだ。


 入り口に大きな扉があり、試練を二つクリアしていないと、その扉は開かない。

 俺たちはクリアしたので、問題なく開くだろう。


 中に入ると大広間があり、そのど真ん中に門がある。


 試練を受けるための門なのだが、開くことはない。


 この門には普通にはない鍵穴があり、鍵を探して開けなければならない。


 鍵は神殿の地下にある、迷路に存在する。


 かなり複雑な迷路で、さらに定期的に迷路の形が変わる。


 鍵の場所は目覚めの神殿に誰かが入るたびに、変わるような仕掛けになっており、その場所は分からない。


 定期的に形が変わるので、鍵を見つけても出られなくなったりするようだ。大量の食料を持って行くべきだと助言された。そうじゃないと時間掛けすぎて、そのうち餓死してしまう恐れがあるようだ。


 迷路にはガーディアンと呼ばれるモンスターがうろついているようだ。


 かなり強いモンスターだが、倒せないレベルではないという。


 ただ、一体だけ絶対に倒せないレベルの、やばいガーディアンがうろついているから、そいつとは絶対に勝負はするなと助言された。


 そのガーディアンは、2ndや3rd、4thなどにも出てくるのだが、そこまで進んだ熟練の冒険者でも、とてもじゃないが倒せないのだという。

 5thまで行けばようやく倒せるようになるようだ。


 それを聞けば確かに倒すのは難しいかもしれないと思った。


 あまり大きくはなく、人間と似たような姿をしているので、甘くみて戦いを挑んだらすぐ殺されるので、そこだけは絶対に気をつけないといけないと、念を押されるように言われた。

 俺が話を聞いた冒険者は、痛い目にあったのだろうか。


 その特別なガーディアンは、基本的には動かないで、周囲を見回しているらしい。


 視界に入ると襲ってくるというから、なるべく視界に入らないよう気をつけて進めばよさそうだ。


 とりあえずある程度情報は集めた。


 念のため4、5人に話を聞いたが、同じような話が多かったので、嘘をつかれたということはないだろう。


 からくりの塔では騙されたし、親切そうな人でも、完全に信じ切ってはいけないからな。


 情報を集めたから、あとはゆっくり休憩するか。

 装備はある程度整えたし、特にすることもないからな。


 宿に俺は戻った。


 〇


 宿でゆっくりした後、仲間と昼食を取る。


 その時、集めてきた情報を全て話した。


「なるほど、小悪魔の森より、からくりの塔にどっちかというと近い感じかな」

「確かに、迷路とかからくりっぽくはあるな」


 ルナの言葉に俺は同調した。


「ガーディアンって通常のモンスターとは違うって話でしたけど、どんな感じなんでしょう?」


 セリアが尋ねてくる。


「基本的には全身鉄で出来ていて、そして倒しても魂力は吸収されないらしい。その代わりに倒したら、確実に魂石を落すようだ」

「へー、それだと魂石を入手したら、まだ溜まってない人に上げることも出来ますね」


 確かにそういう方法もあるな。今、セリアやブロズなど、魂力が満タンになっている者が、モンスターにとどめを刺しても、魂力が無駄になってしまうが、ガーディアンだとその心配はない。


 モンスターもとどめを刺す人を選べばいいんだが、中々器用に瀕死の状態まで追い込むことは難しい。

 よほど実力差があって余裕で倒せるというのなら別だが、そんなモンスターを倒してもあまり魂力は増えてくれない。


「結構難しい場所らしいし、先輩冒険者も仲間をここでを失った人とか多かったけど、俺たちはからくりの塔も小悪魔の森も、普通にクリアしたわけじゃなくて、無駄に難易度を上げた状態でクリアしたわけだからな。何とかなるんじゃないか?」

「目覚めの神殿も無駄に難易度が上がる可能性、ありませんかね……?」


 セリアが不穏事を言ってきた。


「た、多分大丈夫じゃないのか? ガーディアンの中には恐ろしく強い奴がいるようだが、明確な対処法があるし。何とかなるだろ」

「その対処法がきかない不測の事態が発生したりして……」


 ブロズまで不吉なことを言い出した。


「口に出したら本当にそうなりそうだから怖いわね……」


 ルナも不安を感じているようだ。


「冒険に行く前にそんなネガティブになるな。大丈夫だって」

「不測の事態が起きようがどうしようが、今まで通り切り抜ければいいだけだ」


 シラファはやたら自信満々に言った。


 流石に三度も不測の事態が起こったら、次は切り抜けられない可能性が高い。

 もう二度とそんなことは起こらないと信じるしかないだろう。


「それで実際に目覚めの神殿に行くのは、数日後ですよね。それまで何して過ごしましょうか? 休憩といっても、ずっと部屋でだらだらしてるのも、よくないと思うんですよねー」


 セリアの言葉に一理あると思った。


 流石にずっと部屋で寝ていたら、体も鈍るし、適度に運動などもした方がいいだろう。


「どこか行くなら温泉行ってみない? 体を休めるには最適な場所だよ」


 温泉っていえば、地下から湧くお湯で作った浴場のことだったな。


 俺の国にもあったが、入ったことはない。そもそも城の外には、そう簡単には出られない立場だったからな。


 温泉は城から遠い場所にあったので、俺は行くことはできなかった。


 俺の兄弟は、貸し切って厳重な警備の上で、温泉に行っていた。


 正直、特に入りたいと思ったことはなかったので、別に羨ましいとは思わなかったが。


 城には温泉はなかったが、大浴場はあり、それには入っていたしな。


「温泉何てあるんだ。ファーストシティの中にあるの?」

「ファーストシティからだいぶ離れたところにあるようね。レッドエリアではないから、モンスターは出なくて安全な場所よ。私たちも行ったことはないけど、いつか行ってみたいと思っていたのよ」


 ブロズの質問し、ルナが答える。


「ところでおんせんってなんですか?」


 セリアは知らないようだ。国によってほとんど温泉がない場合もあるので、無理もないかもしれない。


 俺はセリアに温泉の説明をする。


「へー、お湯が自然に湧いてくる場所があるんですか。面白そうですし、行ってみましょうよ」


 セリアは賛成のようだ。


「その温泉には、体や心の疲れを回復する効果があるっていうから、休憩にはぴったりなのよ。ほかの皆も行ってみようよ」


 そんな効果があるのか。

 正直、風呂に入るなら、わざわざ温泉に行く必要なんてないと思っていたが、それなら行っても良いかもしれないな。


「俺は賛成だ。別にほかに行きたい場所もないしな」


 賛成の意思を俺は示した。


 シラファはどっちでも良いと言ったので、温泉に行くことが決まった。



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