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四体のスケルトンたちが、同時に飛びかかってきた。
二本の剣をもっており、攻撃の手数も多い。
普通のスケルトンより、剣のスピードも速いので、攻撃を捌き切るのは難しいが、俺もアウターに来て魂力の力を手に入れ、かなり強くなった。どれだけ速く手数が多くても、対応できるだけのスピードがある。俺は、次々くる攻撃を剣で受け止めたり、避けたりする。
新しく出てきたスケルトンだけに意識を取られてはいけない。
キングスケルトンの方の攻撃は、非常に威力が高い。
こいつの攻撃は絶対に喰らわないように、ちゃんと見ておかないといけない。
難しい状況だが、まずは新しく出てきたスケルトンたちを、蹴散らさないと、キングスケルトンは倒せない。
攻撃を回避しつつ、隙を窺う。
割と動きには無駄があるので、隙はすぐに見つかった。
鎧で守られている胴体を俺は斬り裂こうとする。
硬そうな鎧ではあったが、剣の力が勝り鎧ごとスケルトンを斬ることが出来た。
一体倒した時、キングスケルトンの矛が俺の頭に迫る。
何とか転がって回避する。
しかし、体勢を崩してしまったため、ほかのスケルトンに狙われた。
数回斬られてしまう。
「ぐっ」
俺の防御力は魂力で強化されているので、大怪我はしなかったが、軽い切り傷は負った。
痛みは多少はあるが、この程度問題にはならない。
再び攻めようと思っていると、
「はあああああ!!」
仲間の声が聞こえてきた。
声が聞こえた方を向くと、シラファとルナとルイが、雑魚スケルトンを蹴散らしながら、こちらに向かってきていた。
「お前ら! どうして!」
三人にはスケルトンたちを
「スレイが親玉のスケルトンを倒しにいったから、私たちの方に来たスケルトンが少なくなった。そいつらを倒して、援軍に行ったんだ」
そうか。キングスケルトンも、自分の危機を感じ取り、守りに重点を置くため、スケルトンたちを自分の近くに集結させようとしていたのか。
確かにそれなら三人がこっちにきても、問題はないわけだ。
シラファはまず二本剣を持ったスケルトンと戦い、槍であっさりと倒した。
ルイとルナは少し手こずったようだが、それでも一対一なら負けることはなく、倒したようだ。
普通のスケルトンたちが迫ってくる。
ルナがスケルトンたちを押しとどめるため、斧を振り回す。
彼女の持つ斧は大きく、弱い敵を蹴散らすのには、非常に向いていた。
ルナがスケルトンたちの攻撃を防いでいる間、俺とシラファとルイで、連携してキングスケルトンを仕留めに行く。
キングスケルトンは、矛を振り回して応戦してきた。
ただ、三人で攻めても倒せない、というほど、強敵ではない。
俺がキングスケルトンの矛を受け止め、その隙にシラファが背後に回り込んで、首を斬り落とした。
キングスケルトンの頭が地面にころりと落ちる。
ほかのスケルトンたちは、頭を砕いたり斬り落としたりした場合、動かなくなるのだ、キングスケルトンは頭を失った状態でもまだ動けるようで、矛を振りましている。
首を斬り落とした時点で、倒したと思って油断していたので、危なくこっちが斬られるところだったが、何とか回避した。
頭はないが胴体だけで、俺たちのことが見えているように攻撃してくる。特に頭部がなくても、強さには変化がない。
どうやら、このキングスケルトンにとって、頭は飾りのような部位だったようだ。
「……倒せる?」
ルイが珍しく言葉を発した。頭を斬ったのに倒せず、本当に倒せる相手なのか、疑問に思っているようだ。
「流石にどっかに急所があるだろうが……パッと見、どこにあるかは全くわからないし……まずは足を斬って動きを止めた方がいいだろうな」
俺が意見を言うと、シラファとルイは頷いて賛同した。
ルナは斧で近づくスケルトンたちを斬り倒してくれているが、斧を振るのは当然疲れるので、いつまで体力が持つかは分からない。
早くキングスケルトンを倒さないと。
俺たちはキングスケルトンの足を狙って攻撃をする。
敵もこちらの狙いは理解して、避けてはいたが、三人で攻撃するので、当てることはできた。
最後は、俺が足を剣で切った。
キングスケルトンは足を失い、動けなくなる。
これであとは急所を攻撃するだけだと思ったが、足がない状態でも上半身だけで矛を振り回して、攻撃してくる。
必死で振り回しているので、中々近づけない。
簡単にはやられてくれないようだ。しぶとい奴だ。
なら腕も斬り落とすまでだ。
狙いを矛を持つ腕に変えて、攻撃する。
足元とは違い、腕は防御しやすいので、中々攻撃が入らない。
だが、こちらも三人がかり戦っているので、キングスケルトンも完全に隙を作らず防御するのは、至難の業である。
俺が斬りかかり、キングスケルトンが防御したところ、シラファが横から隙を突くように短槍でキングスケルトンの腕を斬り飛ばした。
一本腕がなくなったが、それでもキングスケルトンは矛を振り回そうとする。
しかし、一本腕がない状態なので、矛を振る速度は遅くなっており、簡単に見切ることができた。
もう一本の腕も俺が切り落とす。
流石に手足を失った状態では、動きようがない。
とりあえず鎧でガードしてある、胸の部分を斬ってみた。
鎧は硬い素材で出来てはいるが、今の俺なら斬り裂く事も可能だった。
胸に急所がありそうだと思ったのは正しくて、斬りさいた直後キングスケルトンは、ボロボロと砂のように崩れていった。
キングスケルトンを倒した後、ほかのスケルトンたちもピタリと動きを止めた。
そして、同じように砂となって崩れていく。
戦略的に攻撃するのを止めるために、キングスケルトンを先に倒したのだが、どうやら倒したらほかのスケルトンたちも倒せるようになっていた。
そんで、スケルトンたちを倒し終えたってことは……
『試練達成です。おめでとうございます』
と空から声が聞こえてきた。
「やったー!」
とルナが両手を上げて喜んだ。
ルイは無言だが、一緒にバンザイしている。
俺はほっとしていた。
前の試練が割と楽勝だったから、今度も簡単にいけるだろと思っていたが、結構やばかった。
出てきた敵の強さ自体は、前の試練並みかそれ以下だった。
俺自身はダメージはほぼ受けなかったが、卵にだいぶ大きなヒビを入れられてしまったから、下手すれば失敗するところだった。
今回の試練は個人の戦闘力を試すと言うより、集団でいかに統率の取れた戦い方ができるかを試すような試練だったのだろう。
まだまだ、仲間たちと一緒に戦った期間は短いけど、ちゃんと連携が取れて試練をクリアできたのは良かった。
その後、門が出現し、俺たちは門を潜って小悪魔の森へと戻る。
森に戻ると、あの小悪魔が扉の前にいた。
「くすくす、試練クリアしたんだね。おめでとう」
祝いの言葉を言ってきたが、こいつらに対する心象は大きくマイナスなので、はっきり言って祝われても全くうれしくはない。
試練をクリアしたので、もう小悪魔の森には用はない。
俺たちは急いで、ファースト・シティに戻った。