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遠くの方に大量のスケルトンが見えて、俺は目を疑った。
あれは下手すれば千以上はいる……
種類は今まで出てきたスケルトンが大方いた。
翼スケルトンも飛んでいたし、弓スケルトンたちも大量にいる。あれだけいては、視界を煙で遮られるのは、防ぐことが出来ないだろう。
恐らくこれが最後ではあるのだろうが、流石に卵を守り切れるかどうか、分からないくらい大量に出てきやがった。
そして、よく見るとやたらデカいスケルトンが一体いた。骨の馬に跨っており、長い矛を持っている。王冠を被っている。
あれがスケルトンたちの王という事だろうか。キングスケルトンとでも呼ぼう。ほかのスケルトンより風格があり、流石にあいつは結構強そうである。普通のスケルトンほど、楽々とは倒すことは多分できないだろう。
周りの数は多いが、もしかするとあいつを討ち取ると、統率が取れなくなって、みたいになってくれるかもしれないが……まあ、可能性はあっても他のスケルトン無視して、やつを攻撃するのはリスクが高いし、できない作戦だけどな。
キングスケルトンが矛を上げたと同時、スケルトンたちが動き出した。
今まではスケルトンの動きは単純と言えば単純だった。
卵だけを狙って俺たちを無視して攻撃したり、逆に卵には一切行かずに、俺たちだけを狙ったり。
だが、今度の攻撃では、卵と俺たちは同時に狙いに来た。
翼スケルトンは卵を狙い、ほかのスケルトンたちは俺たちを狙っている。
出来れば、俺たちだけを攻撃してくれた方が、やりやすくはあったが、こうなると色々考えて対処しなくてはならない。
「セリアは翼スケルトンを撃ち落としてくれ! 俺たちはそれ以外を倒す!」
「分かりました!」
セリアは元気よくそう返答した。
弓スケルトンが一斉を弓を放ち、煙で視界を塞いだ。
セリアの視界が防がれていたら、かなりやばい。何とか煙からすぐ抜け出して、翼スケルトンどもを撃ち落とせるようにしてほしい。
俺たちは近づいて来る通常のスケルトンたちを次々に倒していく。
弱いが物凄く数が多く、視界が塞がっているため何回か攻撃を喰らった。
攻撃力が低いのでほとんど痛くないため、特に攻撃を貰っても問題はない。ただ、それは普通スケルトンで、大剣スケルトンも普通のスケルトンに混ざって出てくる。
こいつの大剣は、流石に結構痛そうなので、とにかく大剣にだけは絶対に当たらないよう注意しつつ、スケルトンたちに対処していった。
弓スケルトンたちを狙う余裕はなかったため、視界を塞がれ続けたが、煙玉が切れたのか数分すると、煙が完全に晴れた。
卵の様子を見てみると、ヒビが大きくなっている。
セリアはちゃんと対処しているようだが、翼スケルトンの数が多すぎて、倒しきれていない。
「ブロズ! セリアの援護に行ってくれ!」
「うん!」
セリア一人ではまずいと思い、ブロズに救援に行くよう指示を出した。
ブロズはセリアが放って、スケルトンを撃ち落とした後、地面に落下したと思われる矢を拾って、それをスケルトンに向かって投げた。当たる頻度はやはり多くないが、それでもブロズがいるのといないとでは、大きな差がある。
やはりあのキングスケルトンがいるから、敵が厄介な攻め方をするようになっているのだろう。
ここは奴だけを狙って倒した方が良さそうだ。
倒したらほかのスケルトンは撤退するか、そのまま攻めて来続けるかは不明だが、これだけのスケルトンに、効果的な攻め方をされ続けたら、卵を守り切るのは、かなり難しい。
「俺はほかのやつを無視して、王冠かぶっているやつを狙う! シラファと、ルナ、ルイは、迫ってくるスケルトンたちを食い止めてくれ!」
「何!? 一人で行くのか!?」
「全員で行くと、スケルトンたちが一斉に卵に寄ってくるかもしれない。危険すぎる! 俺だけが行くしかない!」
俺は近寄ってくるスケルトンを倒しながら、そう叫んだ。
キングスケルトンは、状況を見て攻め方を変えてくる可能性がある。
ここにいるみんなで、スケルトンを無視して、キングスケルトンのところに向かったら、チャンスと見て、一斉に攻めてくるかもしれない。
卵のヒビはただでさえ広がっているので、そうなるとあっさりと壊されるかもしれない。
キングスケルトン自体は、強そうではあるが、俺も魂力でだいぶ強化された。
負けることはないはずだという自信もあった。
シラファは最初俺の作戦が正しいのか迷っていたようだが、
「分かった! ほかの奴らは何とかする!」
と納得してくれた。
キングスケルトンを狙うにしても、どうやって狙うか。
やつは後方にいる。
スケルトンたちを無視して、奴の下へと行く方法は……
俺は考えていい方法を思いついたので、実行に移すことにした。
ジャンプして、スケルトンの頭を踏みつけ再びジャンプする。
こうして、スケルトンたちを踏んでジャンプしながら、キングスケルトンの下へと向かう。
途中、弓スケルトンが放った矢が飛んできた。
煙玉はついていない、普通の矢である。俺を仕留めるために放った矢のようだ。
それほどスピードは速くないので、俺は剣で斬り落とした。
その直後、何本も何本も矢が飛んでくる。
俺はジャンプして移動していたので、剣を振り回すには、不安定な状態ではあったが、それでも斬り落とし続けた。
俺の足場にされているスケルトンたちも、黙って足場にされ続けるのではなく、着地する俺に向けて、剣で突き刺そうとしてきた。
ただ、このスケルトンは全然攻撃力が高くないので、無視してもダメージは入らない。
足が斬られたが全然痛くはなかった。全く気にせず、スケルトンの頭を足場にジャンプをし続ける。
そうしているうちに、キングスケルトンがいる場所まで、たどり着いた。
遠くから見て、結構大きいと思っていたが、近くで見るとその大きさがよく分かる。
キングスケルトン自体も大きいのだが、馬に乗っているためその大きさがさらに際立っている。
キングスケルトンは、矛を振る。
それがスケルトンたちにとっては、何らかの合図になったようで、一斉に動き始めた。
俺の背後にいたスケルトンたちが、一気に押し寄せてきた。
何が来ようと俺はキングスケルトンを退治するだけ。
迫り来るスケルトンたちを無視して、キングスケルトンに斬りかかった。
矛で攻撃を受け止められる。
俺は力任せに、矛を弾き飛ばそうと思ったが、キングスケルトンもかなり力が強かった。均衡して、一旦下がって体勢を立て直す。
やはり思った通り、普通のスケルトンとは比べ物にならないくらい、強いようだ。
キングスケルトンの攻撃に警戒していると、矢が飛んできた。
次々に来る矢を避けていたが、同時にキングスケルトンも矛を上から振り下ろし、俺の頭を斬ろうとしてきた。
同時に対処は不可能。
矢より矛の方が攻撃力は高いだろう。
ノーガードで受けた場合、死ぬ可能性が高い。
俺は、矢を無視して、矛を剣で受け止めた。
矢が俺に当たるが予想通り、あまり痛くはない。
これなら、わざわざ避けたり剣で斬り落としたりする必要はなかったようだ。
キングスケルトンは、俺を押しつぶすような勢いで、矛に力を込める。
上から来るので、俺は不利な状況に追い込まれていた。
何とか力を込めて、矛を押し返そうとする。
その時、ほかのスケルトンが俺に群がってきた。
こいつらは、全く攻撃力がないので、そこまで脅威的な存在ではないが、この状況だと話が変わってくる。
ちょっと気を抜いたらキングスケルトンにやられてしまいそうなこの状況で、攻撃を受けると、痛くはないが、当たりどころによっては少し力が抜けてしまうということも考えられる。
俺は群がってくる前に、何とか矛を押し返すため、全力で力を込めた。
何とか押し返すことに成功した。
群がってくるスケルトンたちを、追い払うため、俺は回転しながら剣を振った。
回転斬とでも命名するか。
とにかく、周囲にいたスケルトンを一気に倒すことに成功した。
このキングスケルトンを倒すには、馬を最初に仕留めた方が良さそうだ。
上から攻撃してくるので、普通に戦うよりパワーが増しているような感じがする。
俺はそう決めると、素早く馬の足元に潜り込み、馬の足を全て斬った。
足が斬られ、馬は地面に伏せる。
もう走ることはできないだろう。
キングスケルトンは、馬から降りた。
流石に移動できない状態になるのは、まずいのだろう。
馬から降りても十分俺より大きかった。
三メートルくらいはあるかもしれない。
キングスケルトンは、矛の柄頭を地面に思いっきり叩きつけた。
すると、地面から何かが出てくる。
スケルトンが四体出てきた。
普通のスケルトンではない。
堅牢そうな鎧を身につけており、手には二本の剣を持っている。
全て同じ装備だ。
装備が違うだけでなく、大きさも普通のスケルトンより大きい。
キングスケルトンほどの大きさはないが、俺よりも身長は高い。
間違いなく普通のスケルトンより、手強い敵ではあるだろう。
ここにきて本気で俺を殺しにきたという事か。
状況が厳しくなろうと、後ろ向きになってはいけない。
どんなに相手が強かろうと、勝てると信じて戦うだけだ。