61
「ひゃあ!」
いきなり地面から出てきたスケルトンを見て、セリアは驚き女の子らしい悲鳴を上げた。
何の前触れもなく出てきたので、悲鳴は上げなかったが、俺もかなり驚いていた。
出てきたスケルトンは、通常のスケルトンとは少し形状が違う。
爪が鋭く尖っており、若干細身である。
別種のスケルトンと見ていいだろう。土スケルトンとでも呼ぶか。
土スケルトン達は全部で30体ほどいた。俺たちには目もくれず、その鋭い爪で卵を引っ掻いて攻撃しようとする。
油断していた俺たちは、まだ戦う準備ができておらず、卵への攻撃を許してしまう。
すぐに準備をして、土スケルトン達を倒した。強さ自体はほかのスケルトンと大して変わりはなかった。
ただ、結構卵を攻撃されてしまったのは痛い。
卵自体はまだ割れるどころか、細かいヒビすら入っていないので、今の攻撃でダメージを受けたのかは、はっきりとは分からないが、多少は受けていると思う。
「ちっ、敵が弱い分、気を抜いてしまう……」
シラファが少しイライラしたようながら様子で呟いた。
もしかしたら、そう言う作戦なのかもしれないな。
まあ、スケルトンが作戦とか考えて攻めてきているのかどうかは、分からないけど。
地面から来る可能性も考慮して、俺たちはスケルトンが出てこない時間帯も警戒を続ける。
地面からは結局出てこなかったが、今度は全く別のスケルトンが出てきた。
体は人間だが、背中から骨の翼を生やしているスケルトンが、翼をはためかせて空を飛んでいた。
翼は骨でできており、当然スカスカで、どうやってあれで空を飛んでいるんだと思うのだが、飛んでいるものは飛んでいるのだから仕方ない。
空を飛んでいるスケルトン達が、30体卵に向かって飛んできていた。通常のスケルトン、弓スケルトン、小柄スケルトンも同時に出てくる。
あの翼スケルトンは、ジャンプしても届かない高度を飛んでおり、俺では叩き落とせない。セリアの弓に狙わせるしか倒す方法はない。
「セリア! 空を飛んでいるやつを狙ってくれ!」
「わかりました!」
役割を変更して、俺は指示を出した。
俺は弓スケルトンを倒しに行く。奴は最初に倒しておかなければならない敵である。
ルナとルイも一緒に来てくれた。セリアに別の役を任せたので、臨機応変に対応してくれた。2人の判断力は中々高いようだ。
弓スケルトンを倒しにいく。
素早く斬っていき、矢を放たれる前に、倒し切ることに成功した。
ちらりとセリアの様子を見る。
正確な射撃で、翼スケルトン達を射抜いて、撃ち落としていくが、1人で全部を相手にするのは、流石に手に余っているようで、何体か卵の上まで到達し、石か何かを上空から卵に落とされていた。
結構な高度から落としているので、石が卵に当たった瞬間、ガンッ! と大きな音が鳴り響いた。割とダメージが入ってそうである。
割れてはいないようだ。
援軍に行きたいが、飛んでるやつに攻撃できる手段を俺は持っていない。
とにかく目の前にいる、倒せる敵を倒しておこう。
スピードのある小柄スケルトンは、何体か抜け出してしまったが、それは後ろにいるシラファとブロズに任せるしかない。
前でスケルトンたちを倒せるだけ倒した。
やはりスケルトン自体の強さは無に等しいので、倒すのは楽々だった。
ただ、結構な数の小柄スケルトンを撃ち漏らしてしまったため、シラファとブロズに少し負担をかけてしまった。
スケルトンを全滅させた後、急いで卵のそばに戻ると、シラファとブロズはすでに小柄スケルトンを全滅させており、セリアも翼スケルトンを全て撃ち落としていた。
倒し終えたのは良かったのだが、卵に少しだけヒビが入っていた。
「ヒビ入ってるけど大丈夫ですかねー……」
セリアが心配そうにつぶやいた。
「うーん……まあ、小さいヒビだし……まだ大丈夫なんじゃないかな……」
自信なさげな口調でルナが応える。
「今のところは多分大丈夫そうではあるけど、危ない感じがするのは間違いないな。これ以上喰らわないようにしないと」
「そうですけど……空からくるスケルトンは、簡単に対処できませんよ」
確かにセリア以外に翼スケルトンに攻撃する手段を持っていないため、完全に防ぎ切ることは難しいということは間違いない。
「セリアさんのその矢を投げるってのはどうかな」
ブロズがそう提案すると、セリアが驚いたような表情を浮かべた。
「えー? 投げるんですか? これ投げる用の矢じゃないですよ!?」
「普通は難しいかもしれないけど、魂力で強化されたなら、案外うまくいくかもしれないよ」
矢を手で投げるという発想はっきり言ってなかったが、言われてみると確かに今の魂力で強化された俺たちなら、弓で撃った場合ほどとは言わないまでも、ある程度攻撃手段として使えるかもしれない。
特にスケルトンは弱いし、それほど威力がなかったとしても倒すことは全然可能のように思える。
「ありかもな。一回試しに投げてみよう」
俺はセリアから矢を一本借りて、空に向かって投げてみた。
真っ直ぐ飛ばすには少しコツが入りそうだったが、結構スピードが出て、かなりの高さまで飛んでいった。
俺以外も投げてみたが、結構飛んでいる。
「スケルトンがいる高度までは飛んでるっぽいな」
「そ、そうですねー。あとは当たるかどうかですが、当たればこれでもスケルトンを倒せそうですね」
当てるってのが一番難しそうだな。
普段から練習しているのならまだしも、初めて投げるわけだから、そんなに精度が高いわけがないし。
まあでも、セリアしか攻撃できない相手ではない、と分かっただけでもいいかもしれない。
と、そんな感じで話していたら、地面から土スケルトンが出てきた。
二回目ではあるが、いきなり出てきたので、少し驚いた。心臓に悪いスケルトンだ。
土スケルトンはすぐに倒した。
それから数十分まつ。
始まってからどれくらい時間が経ったか。
天使は五時間守りきれと言っていた。
現時点で五時間は経ってなささそうだが、体感的に結構時間は経っていると思う。
もうすぐ終わりかもしれない。
今度は普通のスケルトンが出て来ず、大量の翼スケルトンが飛来してきた。
全部で50体以上はいそうだ。
セリアだけで相手することになっていた場合、結構厳しかったかもしれないが、今回は俺たちも矢を投げることができる。
セリアから矢を貰って投げまくった。
精度は悪いのだが、数が多かったので、狙い通りに飛ばなくても、ほかのスケルトンに当たることもあり、次々と撃ち落とすことができた。
空にばかり気を取られていたら、土スケルトンが出てきた。
ずっと空を見ていたので、気付くのが遅れる。
気づいた時には、だいぶ卵に接近されていた。
シラファがいち早く動いて土スケルトンを攻撃しにいく。
俺はどうしようか迷う。
土スケルトンは来ているが、翼スケルトンもまだまだ残っており、放っては置けない。卵を破壊する力は、翼スケルトンの方が高そうに思える。
しかし、土スケルトンの数は50体以上はおり、シラファ1人で対処できるかは微妙なところだ。
ブロズが土スケルトンを倒しに行ったのを見て、俺は翼スケルトンを狙い続けることを決めた。二人いれば何とかなりそうだ。
何回か矢を投げた影響で、コントロールも少し上がり外すことも少なくなってきた。
何とか卵に到達する前に、全ての翼スケルトンを撃ち落とす事ができた。
土スケルトンの方も、俺の予想通りブロズとシラファの二人で何とか対処できたようだ。
「面倒な攻め方をしてきたな」
シラファがそういった。
確かに一度視線を空に向けさせて、土スケルトンで奇襲をかける。
今までは向かってくる奴らをただただ倒せば良かっただけだが、今回はちょっとだけこちらを撹乱する量な攻め方をしてきた。
クリアが近くなってきて、より難易度が高まってきたのかもしれない。今回は何とか防げたが、次からも同じように、対処しづらい攻撃が続くと考えた方がいいだろうな。
次のスケルトンも、数十分後に出てくるだろうと思って待っていたら、二分くらいで次が出てきた。
また新種だ。
巨大な剣を背負っている、大柄のスケルトンが三十体向かってきた。
大剣スケルトンとでもいうか。
あの大剣に攻撃されれば、結構効きそうだが動きはあまり早くなさそうである。
大剣スケルトンを倒しにいく。
ほかのスケルトンは、俺たちに接近されても一心不乱に卵に向かっていたのだが、大剣スケルトンは違い、俺たちとも戦う気があるようだ。
大剣を振り回してくる。
遅いので避けるのは容易いが、威力は中々ありそうだ。食うと結構効くかもしれない。
確実に避けて攻撃していく。
今まで出てきたスケルトンとは違い、防御力が低くなく、一撃で倒すことができなかった。
後ろから大剣スケルトンがやってきて、挟み撃ちになってしまう。
俺はジャンプして避けた。
地面に落ちるのと同時に、大剣スケルトンの頭を斬る。
頭の中は空っぽだろうに、頭を斬った瞬間行動停止し動かなくなった。
空っぽに見える頭だが、実はスケルトンに取って重要な役割を果たしている何かが入っているのかもしれない。
頭が弱点だというのは分かったので、次からは頭を狙いすまし斬っていった。
動き自体はほかのスケルトンよりも全然遅いので、一撃で簡単に倒せるとなると、楽に全滅させることができた。
大剣スケルトンを倒したと思ったら、息を吐く間も無く新たなスケルトンたちが出てきた。
いきなり出てくる間隔が短くなったようだ。
短くなるならなるで、もっと段階を踏めよと言いたくなるくらい、いきなりハイペースになった。
出てきたのは、普通のスケルトンと小柄スケルトンそれぞれ五十体である。
こいつらは卵に向かっていくだろうと思っていたら、俺たちを攻撃してきた。
どうやら、俺たちに攻撃するというのは、大剣スケルトンの特徴というわけではなく、全スケルトンが方針を変えたからのようだ。
確かに卵を守っている俺たちを先に倒したほうがいいという考えに至るのは、おかしな話ではないかもしれない。
ただ、大剣スケルトンのように攻撃力があるのならともかく、こいつらは攻撃力が全くない。
正直斬られてもほとんどダメージは入らない。
普通のスケルトンは遅いので、斬られることがまあない。小柄スケルトンは早く、簡単には避けられないスピードの攻撃をしてくるのだが、威力が全くなくて全然効かない。
結果ほとんど攻撃を喰らう間も無く、楽に倒すことが出来た。これなら卵を狙われた方が面倒だったかもしれない。
そう思っていると、突如横に矢が突き刺さった。
煙玉がある矢である。いつの間にか弓スケルトンが出ていたようだ。全く気が付かなかった。
視界が塞がってしまう。
いきなり頭に何かが落ちてきた。ちょっとだけ痛い。
どうやら上空から翼スケルトンが、俺たちに石を落としてきているようだ。
あまり大きな石ではないが、高い場所から落とされた石なので、結構威力がある。
それこそ魂力で体を強化していなければ、死んでるんじゃないかと思うくらいの威力だ。
かなりの数の翼スケルトンが飛んでいるようで、大量の石が落下してくる。
煙のせいで翼スケルトンを見ることが出来ず、反撃のしようがない。
俺は腕で頭をガードし、煙が晴れるのを待つ。
数十秒後、煙が薄くなり空が見えるようになる。
セリアが真っ先に矢を放つ。その後、セリアの元に行き矢をもらう。
落石を受けたせいか、セリアは怪我をしていた。頭から血を流している。
セリアの防御力は俺には及ばないため、食らった時のダメージも決して少なくはないのだろう。
セリア以外も確認すると、シラファとブロズはぱっと見無傷。
ルイとルナはセリアと同じく軽い怪我をしていた。
今は人の傷を心配している場合ではない。こうしている間にも翼スケルトンは石を落としてきてる。
急いで矢をもらって、翼スケルトンに向かって投げた。
「私たちは弓持っているやつ倒してくる!」
とルナが言って、ルイとルナが弓スケルトンを探しにいった。
確かに空ばかりに気を取られてもいけない。もう一度煙で視界を奪われるわけにはいかないし、早々に倒しにいった方がいいだろう。機転の効いた行動だ。
矢を手投げする精度は皆上がっていたので、次々に翼スケルトンたちを撃ち落としていく。
見えていれば、石も避けやすく、怪我をしていたセリアもちゃんと避けながら、矢を放っていた。何度も食らったら下手したら死んでしまう恐れもあるが、これなら安心だろう。
煙玉がもう一度飛んでくることはなかった。ルイとルナが上手くやってくれたのだろう。
翼スケルトンたちも、持っていた石が切れたのか、攻撃して来なくなり、一体一体撃ち落としていき、全滅させることに成功した。
スケルトンが出てくる間隔が短くなっているので、倒した後も油断は出来ない。
警戒しながら周囲を見回す。
まだ出てきてはいないようだ。
俺たちは一旦卵のそばに戻る。
そして、しばらく時間が経過。
さっきまで連続していたのが何だったのかと思うくらい、中々出てこない。
「もしかしてさっきので終わりだったんでしょうか?」
セリアがそう呟いた、その瞬間。
ガシャガシャと大きな音が響いた。
確認すると、百や二百どころではない大勢のスケルトンが、こちらに向かってきていた。
ノベリズムにて『その劣等生、実は最強賢者』という作品を掲載しております。
作品ページへのリンクを↓に張っておりますので、興味がある方、ぜひ読んでみて下さい!




