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俺たちは小悪魔の案内について行く。
自力では絶対に試練への門には行けないという話だったが、一体どこにあるのというのだろうか?
気になりながらついていく。
数分経過、すると小悪魔が、
「くすくす、ここだよ〜」
と言った。
確認すると、目の前に門があった。
歩いたのは数分だし、どう考えても自力で探そうと思えば探し出せるような場所にあるんだが……
もしかして騙されたのか?
「これ、自力でも見つけられたんじゃないか?」
シラファは俺と同じ疑問を抱いていたようで、そう尋ねた。
「くすくす、それは無理だよー。この場所の近くには、不思議な力が働いていて、僕たちと一緒じゃないとたどり着けないようになっているんだー」
その不思議な力とやらは多分こいつらがかけているのだろう。結局、門を餌に冒険者を小間使いにしているということだ。
やっぱ小悪魔は腹の立つ連中だ。
まあ、門まで無事行けたんだ。無駄に腹を立てる必要もないだろう。さっさと試練をクリアして、ファースト・シティに戻ろう。
「よし、行くか」
全員俺の言葉に頷いた。
俺たちは門を通った。
○
門を通ると、以前からくりの塔で試練を受けた時と、似たような光景が広がっていた。
青空に、真っ白い地面。
ただ、以前にはあった柵がなかった。これは何か意味があるのだろうか?
「前と同じ感じですね〜。あの天使さんも出てくるんでしょうか?」
「分からんが、出てきそうな気はするな」
特に根拠はないが、試練を受けるときは毎回あの天使が試練を受けるかどうか聞いてくるような気がしていた。
その勘は的中し、以前と同じように光の柱が立ちに空から、天使が舞い降りてきた。
「試練を受けますか? 受けませんか? 一度受けた場合、クリアするまでここを出ることは出来ません。受けなかった場合、帰りの門が用意されます」
以前と一言一句違わないセリフを言ってきた。
いくら文句を言っても同じ返答しかしないことは、わかっていることなので、無駄な質問はせず、
「受ける」
と返答した。
「かしこまりました。それでは『防衛の試練1』を開始させていただきます。巨大な卵が出現しますので、それを今から五時間守り切ってください」
そう言って天使は消えた。以前は試練の説明など一切しなかったが、今度はした。
天使が消えた数秒後、説明通り巨大な卵が出現した。
鶏の卵を二階建ての家くらいの大きさにしたような感じだ。
恐らくこれから敵が出てくるだろうから、そいつの攻撃からこの卵を守ればいいのだろう。
以前の力の試練1のように、出てくる敵を倒せばいいだけではないので、少し難易度は上がりそうだ。
殻の硬さはよく分からない。どれだけ攻撃が喰らったら割れるのだろうか? 流石に一発でアウトとなると、難易度が高すぎる気がする。これだけデカいから、遠距離攻撃がある奴がきたら、一発は当たってしまうだろうし。
そんなことを考えていたら、
「何か来ます!」
セリアがそう叫んだ。
遠くの方から、人間の骨が剣を持って動いている不気味なモンスターが数十体、卵に向かって走ってきていた。
「あれはスケルトンって奴かな?」
ルナがそう言った。動く骨はスケルトンというのか。
見たところ全部持っているのは剣で、遠距離攻撃をしそうなやつはいない。
まずはセリアが矢を放ち攻撃する。
スケルトンの頭に命中。
防御力が低いのか、頭が完全に砕け散った。
その瞬間動きを止める。骨だけだが、頭がなくなったら動けなくなるようだ。
見た限りあまり強くはなさそうだ。数は多いがこれなら、楽に倒せるだろう。
セリアは遠距離で矢を撃ち続けて、ブロズを除くほかの者たちは全員スケルトンを倒しに行く。ブロズが卵のそばに残ったのは、念の為である。
スケルトン自体の強さは、かなり低かった。それこそアウターで戦った敵の中では、最弱だったかもしれない。
数十体いたが、すぐに全部倒した。
前の試練では敵を倒しても魂力はもらえなかったが、今回の試験でも同じようでスケルトンたちから、魂力は得られなかった。ただ、行動不能になった後しばらくすると、骨は消えるので、地面が骨だらけになっているなんてことはない。
今回の試練も楽に終わりそうな感じだな。
まあ、始まったばかりであまり調子に乗らない方がいいかもしれないが。
「思ったより簡単そうですねー」
「そうね。今のところ楽勝ね」
とセリアとルナも、少し油断しているように見えた。
割と用心深そうなルナも相手がここまで弱いと、多少油断はするようだ。
数十分待つと、再びスケルトンたちがこちらに向かって突撃してきた。
前より少し多めだったが、多少増えたところで、何の影響もなく、あっさりと倒すことができた。
「つまらん。弱すぎる」
シラファはあまりに楽勝すぎたので、だいぶ不満げなようだ。
俺は小悪魔の森で結構苦戦することもあったので、試練は楽にすみそうでホッとしているところが大きい。
特に強敵と戦いたいとかそんな願望も少ないしな。
三回目も同じくスケルトンが出てきた。
今度は前より倍くらいに増えた。正確に数えていないが、100体くらいはいるかもしれない。
しかし、1人が一体倒すのに、1秒すらかからないので、100体いようと特に問題なく殲滅できた。
もしかしたら、このまま数が増え続けるという感じなのだろうか?
天使の説明では五時間守れとのことだ。その間スケルトンがどんどん増え続けたら、千体以上になっているかもしれない。
そうなると、いくら何でもスケルトンが卵に到達するまでに、倒し切ることは出来ないかもしれない。
一発でも喰らったら卵がアウトならば、案外難しい試練なのかもしれない。
スケルトンをただただ殲滅せろっていう試練なら何体こようと平気だが、卵を守る試練となると少し話は変わってくる。
さっきまで楽勝と考えていたが、思ったより難易度は高いかもしれない。
スケルトンたちがまた出てきた。
俺の予想に反して数は増えていなかった。
だが、さっきまで全て剣を持っていたスケルトンだったが、今回は弓矢を持っているスケルトンがいる。
流石にあの弱い奴がずっと出てくるという試練ではなかったようだ。
「弓を持ってるのはわたしが狙い撃ちます!」
セリアが弓スケルトンの退治をかって出た。
矢を放ち射抜いていく。
弓スケルトンは全部で10体ほどいた。
相手が矢を放ってくる前に、五体射抜いたが残り5体はこちらに矢を放ってくる。
警戒していたが、精度が全くなく当たらなかった。腕はないようだと思っていたら、矢に何かついていた。
丸い球体だ。その球体はいきなりぼんと破裂したかと思うと、周囲に白い煙が立ち込めた。
矢についていた球は煙玉だったようだ。白い煙に視界を奪われてしまう。
「何も見えませんー!」
「ど、どうなってるんだ?」
セリアとブロズの動揺したような声が聞こえてくる。
これスケルトンも見えないのでは? と思ったが、奴らは目というものを持っていない。煙玉で視界が塞がれるのかは、正直わからない。
ガシャガシャとスケルトンが歩く音は聞こえる。歩いているということは、やはり視界は塞がっていないのだろうか? こちらからはスケルトンの姿を確認することはできない。
襲ってきた奴らを片っ端から斬るため、俺は剣を構えた。
しかし一向に襲ってこない。
足音的にかなり近くにいるはずだが……
もしかして、奴ら俺たちのことなどどうでもよくて、卵を壊すことしか考えていないのか?
可能性はある……ていうか、試練の内容からして、その可能性の方が高い。卵を壊されれば、失敗だからな。
幸い奴らは足音が大きい、どこにいるのかはすぐわかる。
俺より先にシラファが気づいたようで、すでにスケルトンを倒していた。
シラファは感覚の鋭さが俺より上だから、視界が塞がれていも全然問題なく戦えているようだ。
俺も見づらい状況で何とか攻撃をし続ける。
シラファを間違って攻撃しないよう、注意しながらスケルトンたちを攻撃する。
ルナやブロズたちも加わる。徐々に煙も晴れ、そこそこ見えるくらいにはなった。
何とか卵に到達される前に、スケルトンたちを全滅させることに成功した。
「まあ、やっぱりあの弱いスケルトンがずっと出てくるだけってことはないよね。そうだったら楽だったんだけどね」
ルナが苦笑いしてそう言った。
あの煙玉があり、さらにスケルトンの数が今より増えたら、少し面倒そうだ。
「もっと種類も増えるかもしれませんしー。気をつける必要がありますねー」
セリアが言った。確かに二種類だけとは限らない。これからもっと面倒なことをしてくるスケルトンが増えてくるかもしれない。
「何も考えずに戦うべきではないな。役割分担を決めた方がいいだろう」
「役割分担……ですか」
「後衛から煙玉を撃ってくるスケルトンを、早めに倒しにいく役とか。もし何かあった場合、最後の砦となるため、卵の近くに待機する役とかだな」
「確かにそれは決めておいた方がいいかもしれませんねー」
俺たちは話し合って役割分担を決めた。
まずシラファとブロズは卵の近くで、防衛する役になった。
ブロズは守りがうまい。シラファは感覚が鋭く、仮に煙玉が卵の周りに立ち込めても、きちんと戦えるため、近くで防衛する役にした。シラファ本人は不服だったようだが、説得したら渋々であるが受け入れてくれた。
俺とセリアはスケルトンが来たのを発見したら、即座に倒しにいく役目だ。
セリアは遠距離から弓を撃ちながら、徐々に近づきながら弓を放つことにした。
敵は卵しか狙っておらず、あまり積極的に俺たちに攻撃は加えてこないので、多少距離をつめても大丈夫なためだ。
卵の近くから狙うと、煙玉に視界を防がれて、矢を放てなくリスクがあるため、それを考慮しても近づいて矢を放った方がいいだろう。
ルナとルイは、遊撃隊のような役割だ。その場その場の状況によって、臨機応変に戦ってもらう。
これからスケルトンの種類が増えるのか、増えるとしたらどんな種類のスケルトンがくるのか、まだ分からないところが多いので、臨機応変に動く役も必要だ。
役割を決めた後、スケルトンが来るのを待つ。
「来ました!」
目のいいセリアがいち早くスケルトンの到来に気がついた。
即座に俺とセリアは動く。
前を同じく煙玉のついた矢を放ってくるスケルトンが、複数体いた。新しいスケルトンはいないようである。
数が多い。100体以上はいそうだ。弓スケルトンもさっきは10体ほどだったが、今度は20体はいる。
まずは弓スケルトンから倒す。
セリアは矢で弓スケルトンを射抜く。
敵もやられっぱなしではなく応戦してくるが、矢を放つ前に俺が距離を詰めて、弓スケルトンを瞬時に倒す。
強さは普通のスケルトンと大して変わらないので、あっさり倒せた。
弓スケルトンを俺たちが殲滅したのを見て、ルナとルイが援軍にきた。
2人が来てくれたおかげで、結構多くいたスケルトンたちを、1分もしないうちに倒すことができた。
「煙を撒かれなければ、やっぱり楽勝だね」
「こいつら強くはないからな」
煙玉が矢についていると知らないと不意を突かれてしまうが、敵の特性を知ってさえいれば、不意をつかれる心配もないし、倒すのは容易だ。
それから数十分待つ。スケルトンたちが出現するペースは、大体二〜三十分に一回である。
今のところはそのペースであって、これからはもう少し早くなる可能性も否定はできない。
倒すのに手こずってしまっていると、スケルトンを倒し切る前に、次のスケルトンたちが出てきてしまう恐れがある。なるべく早く倒した方がいいだろう。
スケルトンが出現してきた。
数は以前と変わらないが、今度は見慣れないのがいる。
普通のスケルトンより小柄で、両手にナイフを持っている。こいつが50体ほどいた。
普通のスケルトンよりぱっと見は弱そうに見える。
今更弱体化した奴が出てくるだろうか?
とにかく最初に弓スケルトンを倒そう。
すぐに弓スケルトンを倒しにいく。
すると、さっきの小柄スケルトンが、かなりのスピードで動き始めた。普通のスケルトンより明らかに速い。
魂力でかなり強化されている俺に近いくらいのスピードが出ている。
どうするか迷うが、奴らの始末は後ろのルナとルイに任せて、弓スケルトンを倒すのを優先しよう。
もし煙玉を落とされて、視界を防がれてしまったら、あれだけの速度で動くスケルトンを倒すのは難しくなってしまう。
俺たちは弓スケルトンを優先して倒していった。
さっきと同じ感じで倒すのに成功した。
小柄スケルトンは退治できたかどうか気になり確認すると、倒しているようだ。だが、ルイとルナだけでは全部を倒しきれず、ブロズ、シラファも戦っていた。
「俺たちは通常のスケルトンをまず倒してから、救援に向かおう」
「はい」
近くにいたスケルトンを片っぱしからセリアと一緒に退治する。
倒し終えた後、救援に向かうが普通に倒し終えていたようだ。
「何回か卵攻撃されちゃったけど、あんまり傷ついてないし、結構丈夫みたいだよ」
ブロズがそういった。
あそこまで早いと、卵に攻撃を通してしまうのは致し方ないか。
ただ、攻撃されてもほとんど傷がつかないほど硬いというのがわかって良かった。全く喰らっては駄目だったら、かなり難しいがある程度卵に攻撃が入っても大丈夫なら、難易度はぐっと下がる。
スケルトンを倒したので少し油断をしていると、
地面からいきなり骨の手が出てきた。
「何っ!」
大量のスケルトンが、地中から這い出てきた。
※5月30日からコミカライズ版が始まってます!!
コミックウォーカーとニコニコ静画で読むことが出来ます。
作画は天上涼太郎先生に担当していただいてます。
ぜひ読んでみて下さい。
↓作品ページのURLになります
ニコニコ静画様
https://seiga.nicovideo.jp/comic/53296?track=official_trial_l2
コミックウォーカー様
https://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_CW01202256010000_68/