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「凄いですお二人とも!」
「あんな高いところに登るなんてなぁー。俺は鎧を着てる状態だと絶対無理だなぁー」
ラーマの実を持って戻ると、ブロズとセリアがそう言ってきた。
「やばいと思ったけど、何だかんだ取れたねー」
ルナがほっとしたような感じでそう言った。
確かに苦戦することもあったが、絶対に無理だというほど、Sランクの依頼は難易度が高いわけではなかった。大袈裟に言っていただけだったのかもな。
俺たちはラーマの実を持ち、小悪魔のいるところへと戻った。
帰り道、再び暗くなってきたので、また野宿をする事にした。
食料はまだ残っていたので、それを食べる。
食事を終えた後、
「前回は俺の過去について語ったから、今度はお前らのを聞かせてくれ」
そう言った。俺だけ話すのは何だか不公平な気がする。
「そういえばスレイさんって王子でしたっけ、忘れてました」
忘れるの早すぎるだろ……まあ、王子扱いはしてほしくないので、忘れてもらっていた方が助かるけどな。
「じゃあ、わたしが話しますねー。と言ってもそんなに変わった過去はないんですけどー。田舎で狩人の子として生まれてー。それで、アウターに行ったお姉ちゃんを探すために、来たんですよー」
「……全部知ってることなんだが」
「それ以上特別なことはないですねー」
「姉はどんな人なんだ?」
「すっごい人です!」
姉の話になると、セリアは目を輝かせ始めた。
「お姉ちゃんはとにかく破天荒な人ですねー。そして誰よりも強いんです! アウターでも絶対どっかでモンスターをぶっ飛ばしまくってますよ!」
「そうなのか。そういえば、セリアは姉についてファースト・シティで聞き込みをしたりしてないが、いるかもしれないから、したほうがよくないか?」
「うーん。お姉ちゃんがアウターに行ったのは、だいぶ前なので、ファースト・シティにはいないと思うんですよ。冒険者をやめて止まるような性格にも思えませんし」
「そうか……でも、ファースト・シティにはいないかもしれないが、姉のこと知っている人はいるかもしれないから、探してみたらどうだ? 町長は新入りが来るたびに、ああやって説明なんかしてるんだし、知ってるかもしれないぞ。知っている人に話を聞いて、今生きてたらどこにいそうか聞いてみると答えてくれるかもしれないぞ」
「そ、それはそうかもしれませんね……お姉ちゃんは、印象に残る人ですし、覚えていらっしゃるかもしれません。今度聞いてみます!」
俺の言葉が少し参考になったようで良かった。
「じゃあ、お姉ちゃんの話続けますね。あれはわたしが5歳くらいのころ……」
とそこから姉の話を長々とし始めた。どんだけ姉が好きなんだ。
結局セリアの話を聞くだけで、夜がふけ、俺たちは眠りについた。
○
翌日。俺たちは再び森を歩き、昼頃には小悪魔たちのいた場所へと戻ることができた。
道中、何体かモンスターを倒したので、魂力が少し増えている。
「くすくす。やったーラーマの実だー。ありがとうー」
俺たちがラーマの実を持っていくと、小悪魔たちは無邪気に喜んでいた。
あんな感じで喜んでいるところを見るだけなら、ただの可愛いちっさい生物という感じなんだが。
「依頼は終わったし、そろそろ門がある場所を教えてくれ」
「くすくす、分かったよー。君たちはいい人だし、門の場所を教えてあげる」
また断ってきやがったらどうしてくれようかと思ったが、流石に門の場所まで案内してくれるようだ。
「くすくす、じゃあ付いてきて」
小悪魔がそういってきたので、俺たちは促された通り、後を着いていった。