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何とか倒せたな……とどめはシラファに刺されたけど。
しかし、ルナとルイは一回死んだが、大丈夫か?
「油断したわね……やっぱり死ぬのは慣れないわ」
冷や汗をかいていた。どうやら一度死んだことがあるようだった。
ルイは特にいつもと変わらず、ぼーっとしていた。
「しかし、一回死んで弱くなったのは、困ったわね……魂力が器一個分ないのは、結構きつい」
確かにそうだ。弱体化した分は、何とか俺たちでカバーするしかないか。
「あ、さっきの魔物、魂石落としてますよ。ちょうど二個ありました! 結構大きいです!」
セリアがそう言った。地面に大きめの魂石が二個転がっていた。
「ちょうどよかったな。これを食べてくれ」
「いいの?」
「ああ。これで失った分をある程度取り戻せるな」
この大きさなら、器一個分のあるとは言わないまでも、結構補えそうである。
二人は魂石を食べた。失った分の魂力を完全に取り戻したわけではないようだが、ある程度は取り戻せたようだ。
それから気を緩めることなく探索を開始。
少し暗くなってきて、そろそろ今日の探索はやめにしようかという時、
「あ、あれ!!」
セリアが遠くを指さしながら叫んだ。
大きな木の根元にラーマの実と思わしき赤い実があった。
かなり大きいイチゴである。間違いなくあれがラーマの実だろう。
俺はやっと見つけたラーマの実を取りに近付く。
すると、突如ラーマの実近くの巨大な木が動き始めた。
そして木に巨大な目が一個出現した。
こ、こいつモンスターか!
このデカさはヤバイ。今まで見たモンスターの比じゃないデカさだ。
全長100mはあるんじゃなかろうか。巨大な一つ目で不気味さが更に増している。
巨大木はいきなり体を揺さぶり始めた。すると、巨大な実が落ちてくる。相当高いところから落ちていたから、かなりスピードがあり、当たったら間違いなく潰される。必死で回避する。
突如、地面から木の根っこが飛び出してきて、俺を薙ぎ払う。奇襲過ぎたので回避できず食らってしまった。少し痛いが死ぬほどの痛みではなかった。
俺は防御力がかなり上がっていたので、その程度で済んだ。だが、仲間たちも同様に奇襲を受け、結構ダメージを受けているようだ。特にセリアは痛みが強いようで、小刻みに震えながらうずくまっている。
地面から音が聞こえてきた。もう一度来そうだ。俺はうずくまっているセリアを抱えて、当たらないよう回避する。
「す、すみません。迷惑をおかけして」
「仲間だから助けるのは当たり前だ。それより大丈夫か? 歩けるか?」
「はい、当たりどころはよくありませんでしたが、歩くことは出来ます」
そこまで重症ではなかったようだ。
「あの大きな目は狙わない手はありませんね」
とセリアは弓で巨大樹の目を射抜いた。
当たったのだが、あまりにも巨大すぎて、セリアの矢が当たったくらいでは、瞬きすらしなかった。
「ま、まじですか」
「どうやって倒せばいいんこいつ……」
いくら何でもデカすぎるだろう。
「やっぱり焼くしかない! フレイム!」
ブロズが魔法を放った。
あんなデカい樹が燃えてしまえば、森全体に火が燃え移ってしまいそうで、もしかしたらやばいかもしれない。
止めるべきかもと思ったが、止める前にブロズが魔法を使った。
フレイムは巨大樹に直撃する。そのまま炎上すると思いきや、火は巨大を樹燃やすことはなかった。もしかしたら、火に対して耐性でもあるのかもしれない。
「火も利かないのか……」
「そもそもあれ倒す必要ある? 私たちはラーマの実を持ってくればいいんだから、ここは実だけとってくれば良いんじゃないかな?」
言われてみればそうである。こんなデカいやつ無理に倒す必要はない。
ただ、ラーマの実は巨大樹の根元に生えている。回避していくのは、果たして可能なのだろうか?
「これだけデカいと、倒した時の見返りは大きい。倒すべきだ」
シラファは強硬策を提案した。相変わらず自信家というか……あんなデカいのにも勝てる気でいられるのは、尊敬の念すら覚える。
ただ、やはり巨大樹は倒さずに、ラーマの実だけこっそり取るのが一番良いだろう。
そう思っていたら、巨大樹が蔓みたいなものを操作し、ラーマの実を巻きつけて、樹の上に持ち上げた。
もしかして、あの実は巨大樹にとっても重要なものだったのだろうか?
こうなると奴を倒さないと取れない。
あれは諦めて他のやつを探すという選択肢もある。
巨大樹は歩いたりはしないようなので、逃げても追ってこないだろう。
問題はそう何個もあるかどうかってことだ。結局あれを倒さないとどうしようもないという可能性がある。
「こうなったらもはや倒すしかないな。奴の弱点はやはりあの目だろう」
シラファがそう言って、全力で走り出した。目的は目だろう。
地面から出てくる根っこを全て回避して、樹に接近。そして、勢いよくジャンプ。
途中にある枝を掴む。巨大樹は枝を揺らしてシラファをふるい落とそうとする。
何とか耐えて再びジャンプ。また枝を掴んだ。あんな感じで登る気なのか。案外いけるかも。
そう思っていたが、揺れる枝でジャンプするのは、中々困難であるようで、飛び上がるのに失敗。上にある枝を掴めず、真っ逆さまに落下した。
結構な高さがあったが大丈夫か? と思ったが、普通に立ち上がり、もう一度トライし始めた。
難易度は高いが、あれなら目玉までたどり着けるかも。うまく行けば、ラーマの実がある場所までも登れるかもしれない。
「よし、俺もいく!」
そう宣言して巨大樹に向かって俺は駆け出した。
シラファと同じように枝までジャンプ。俺が掴んだら、巨大樹は枝を激しく揺らしてくる。何とかジャンプして上を目指す。
俺はジャンプ力ではシラファより上のようで、うまく跳びきれなくても、枝に手をかけるくらいの高度はでた。
揺れているところでジャンプするコツも上手く掴んできたので、失敗する事なく上に登り続けて、何とか目までたどり着く。
近くで見ると巨大で不気味な目玉だった。
シラファも俺より後に到着した。
「くっ。先を越された……」
「勝負してたわけじゃないから。早速目玉をぶっ潰すぞ」
俺たちは目玉を同時に攻撃した。
すると、巨大樹が激しく揺れ始めた。間違いなく大ダメージを受けている。
何とか振るい落とされないよう、踏ん張って何度も攻撃した。攻撃するたびに揺れが大きくなるが、徐々に揺れなくなる。
どうやらこの目玉は、ただの目じゃなかったようで、本当に弱点だったようだ。魂力になりとどめをさした俺に吸収される。
吸収されたのは目だけだった。大きな空洞があいた。どうも樹にモンスターが宿っていて、樹自体はモンスターじゃなかったようだ。
ラーマの実を探して入手する。その後、地上へと降りた。