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「やはり、中々見つからないな」
Sランクの依頼というから、そう簡単に達成できるとは思っていなかったが、その予想は間違っていなかったようだ。だいぶ探したが、全然見つからない。
「あ、あのキノコ食べられる奴ですね。もしかしたら長丁場になるかもしれないので、拾っておきましょう」
セリアがそう言って、地面に生えている茶色いキノコを拾った。
アウターにあるやつと元の世界にあるやつが、一緒であるとは限らないから、毒がなければいいんだけどな。
「ところでセリアちゃんって、キノコとかに詳しいのはどうしてなの?」
ルナがセリアに尋ねた。
「実家が狩りをやったりしてまして、わたしも森に入って狩りをしてたんですよ。ついでにキノコなど食べられる植物を取ってきてたんです」
「へー。弓が上手いのはそれでなんだー」
なんか意外だな。マイペースな性格な女子なのに、狩りをしてたなんて。
「って、あ! もしかして、あれラーマの実じゃないですか!?」
前方を指さしてセリアが言った。
確かに赤い大きな実が見える。
ただ、イチゴっぽいかどうかは、ここからじゃよく分からない。でも見つけたっぽいな。
そう思って近づくが、
「うーん……? ラーマの実ってイチゴっぽい実なんですよね?」
セリアが首を傾げた。確かに見つけたのは大きな赤い実であるが、粒粒が表面に付いていたりしない。丸くてツルっとしている。
トマトを巨大にしたような実であった。
「違うかもな……でも一応取ってみるか?」
食べられるかもしれないしな。
「何か怪しい感じするし、不用意に近付かない方がいいと思うわよ」
ルナがそう警告した。確かにこの森にはからめ手を使っているモンスターが多い。
アレももしかしたら、モンスターか何かの可能性がある。
ここは、立ち去るのが無難かもなと思い、立ち去ろうとすると、いきなり実を付けていた植物が動き出して、赤い実をこちらに飛ばして来た。
ブロズが咄嗟に前に出て、実を盾でガードする。盾に当たった瞬間、バン!! という音が鳴り響き、実が炸裂した。
爆弾なのかあの実は。ブロズが衝撃を防いでくれたおかげで、俺たちにダメージはなかったが、ブロズは大丈夫だろうか?
「大丈夫か?」
「うん、爆発は全部受け止められた」
怪我はしていないようだ。
モンスターは赤い実を次々に飛ばしてくる。
飛ばしてなくなった赤い実は、すぐに復活する。あいつ無限に投げられるのか? だったら、ブロズの盾も持たないかもしれないぞ。さっさと、近付いて斬らないといけないが、不用意に近付くと危険かもしれない。
「あのモンスター。頭っぽい部分があります。もしかしたら弱点かもしれません。狙います」
セリアがそう言って、弓を構えた。そして、躊躇なく矢を放つ。矢は敵に見事命中し、魂力としてセリアに吸収された。
「当たりましたー。いやーびっくりしましたねー」
結構な距離があったと思うが、一回で射抜くとは。セリアの弓の腕はやはり並大抵のものじゃなさそうだ。