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睡眠中、妙な音が聞こえたので、俺はすぐに目を覚ました。
寝るときに焚火は消したので、周囲は真っ暗である。さっきまで寝ていたので、目が暗闇でも数センチ先くらいは見えるようになっていたので、仲間たちも目を覚ましているという事が分かった。
さっきの光を吸収する花の時とは違い、完全に何も見えない状態にはなっていないのだが、それでも相当見えづらい状態である。何が音を立てているのか確認できない。
「何か木みたいのが近づいてきてますよ」
セリアがそう言った。何か見えているのだろうか?
「見えるのか?」
「はい。わたし夜目がきく方なので」
それは頼もしい。
だが、近付いてきている木って何だ。木は自分では動かないはずだが。
「ってあれ? 木から何か出てきました!」
セリアの叫び声が聞こえて来た瞬間、周囲からブーン、ブーン、と蜂の様な羽音が聞こえてきた。
通常の蜂より羽音がかなり低音である。
薄っすらとだが敵の姿を確認することが出来た。
予想通り蜂である。
ただの蜂ではなく大きかった。鼠くらいの大きさがある。蜂のモンスターだろう。これだけ大きいと、針で刺されたら痛いでは済まなそうである。
羽音の数は多く、かなり大量にいそうだ。
セリアが矢を放ち始める。何体か撃ち落としているようだ。
俺は剣を構えて、蜂が間合いに入ってくるのを待つ。
入ってきたら、一思いにぶった切った。一体一体は強くなく、斬ったら一撃で倒せるようだ。動きが素早く当てる難易度は高いが、何とか間合いに入ってきた蜂を片っ端から斬っていく。
ふと、上を見ると、木で出来た巨大なハンマーのようなものが上から落ちてきた。慌てて回避する。
確認すると、動いている木のモンスターがいた。さっきセリア言っていた近づいてきた木とはこいつの事か。
木に巨大な蜂の巣が付いている。どうやらあの巣から、蜂のモンスターは出てきているようだ。共存関係にでもあるようである。
ブロズが、木のモンスターに向かって炎属性の魔法を放った。
モンスターとはいえ所詮木だったようで、火が付いた。
火がついて苦しんでいる。付いた火で周囲が明るくなり、視界が回復した。これでさらに戦いやすくなった。
だが、身の危険を察知したのか、巣から大量に蜂のモンスターが飛び出してきた。
こんなにいたのかよこいつら。これはまずいぞ。
一回くらいは刺される覚悟をした方がいいかも。急所を刺されない限り、死にはしないだろう。
「いたっ!!」
ルナの声が響いた。どうやら刺されてしまったようだ。
刺された箇所は腕なので、命に別状はないようであるが、何やら様子がおかしい。体が上手く動かせなくなっているようである。
「か、かか体が麻痺して……ど、どどど毒があるよ!」
声を震わせながらルナはそう警告した。動けなくなっているようだ。
死にはしないまでも、一度食らったら行動不能になる。
それはまずいな。全員刺されたら、やられ放題になる。
動けなくなったルナに蜂が群がろうとするが、ルイがそれを守る。二つの剣を巧みに操り、蜂を次々に斬り落としていった。
ルイは無口な奴だけど、結構強いよな。
人を気にしてばかりもいられない。俺は次々と襲い掛かってくる蜂たちを斬りまくった。
数分斬りまくって、ようやく襲い掛かってくる蜂がいなくなった。斬りつくしたようだ。
周囲を見てみると、セリアは痺れて倒れていた。シラファとブロズ、ルイは刺されなかったようだ。
弓使いのセリアは、大量の蜂を捌き切るのが難しかったようだ。
火がついて苦しんでいる、木のモンスターを動けるもので倒した。とどめを刺したのはシラファで、魂力はシラファが吸収した。
「倒せたけど……」
「大丈夫か?」
倒れたセリアとルナに俺たちは声をかけた。
喋れなくなっているようだったが、意識はあるようでゆっくりと首を横に振った。
「痺れは自然に取れるかな?」
「分からん。とにかくしばらく待ってみるか」
自然治癒するかどうかわからないが、すると信じて俺たちは眠かったが起きながら待った。
しばらくすると、徐々に痺れが取れてきたようだ。
朝になる頃には完全に痺れは取れており、動けるようになっていた。
動けるようになったので、俺たちは探索を再開した。