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 花のモンスターを倒した後も、ラーマの実の捜索を続けたが、見つからなかった。


 夜になり辺りが薄暗くなってくる。


「流石にこれ以上の探索は危険だな。一旦、野宿をするか」


 俺の言葉にほかの皆が賛同したので、探索を中断して野宿をすることになった。


 森に落ちている木などを集めて、火をつける。


 火をつけるのは面倒なので、ブロズの魔法を使った。初級の魔法はたいして魂力を消費しないので、無駄に時間を使った方がいいと思ったので、使って貰った。


「火を付けたら、モンスター寄ってきませんかね……」


 セリアは若干怯えている。


「この辺に出てくるの、植物系のモンスターだったし、逃げはするけど、寄っては来ないと思うよー」

「そ、そうですね」

「私としては、来てもらった方が魂力が稼げて良いのだがな」


 怯えるセリアとは正反対に、シラファは好戦的なようだ。


 その後、皆で食事を取った。携行してきた食料をそのまま食べたので、あまりおいしくはなかったが、今は味はどうでもいい。


 食事を取った後、俺たちは雑談を始めた。


「やっぱりSランクの頼み事ってだけあって、この辺のモンスターは少し厄介ですねー」

「確かにな。強さだけでなく、視界を奪ってきたり、不意打ちしてきたり、面倒な戦い方してくるからな」

「不意打ちには私もやられちゃったなー。早くラーマの実が見つかるといいけどねー」


 ルナは若干浮かない表情だった。見つけられるのか不安を感じているようだった。


 まだ最初なので、そんなに不安に思う事もないだろうが、恐らくルナはSランクの依頼というのに、不安を感じているのだと思う。


 一番、怖がっていたからな。もしかしたら俺たちの知らない話を、先輩の冒険者から聞いているのかもしれない。


「皆さん、せっかくこうして話しているんですから、何でアウターに来たのかとか、そういう話してみませんか? もっとお互いを良く知った方が、良いと思うんです」


 セリアが提案してきた。


 お互いの事を良く知るか。確かにな。

 ついこの間仲間になった、ルナとルイの事はまだ全然知らないし、最初に仲間になった三人も、性格的な事は知っているが、アウター前は何をしていて、どんな経緯でアウターに来ることになったのかはまだ知らない。


 興味は正直あるが、自分が元王子だと知られるのが少し怖かった。もしかして皆の態度が変わってしまうかもしれない。


 セリアが話をすると、あまりこの手の話には興味なさそうなシラファが意外にも食いついていた。


「私はスレイの過去が知りたい」


 ジーっと、俺を見つめてそう言ってくる。


「あ、わたしも知りたいですねー。有名な戦士だったとかですか?」

「僕も知りたいなぁ。どうやって修行したら、スレイ君やシラファさんみたいに強くなれるのかなぁ」

「私も知りたいかも、多分だけどスレイ君って、只者じゃなさそうだよね。結構すごい生まれだったりしそう」

「……」


 全員俺に興味があるようだ。ルイは言葉こそ発していないが、俺の目をじっと見つめている。多分興味があるという事なのだろう。


 困ったな。ここまで迫られると、断るのも何だしな……


 まあ、絶対に言いたくないというわけではない。

 少し不安だが、多分態度は変えてこないだろう。


 俺は仲間たちを信じて、自分の出自を話した。


 自分は王子であり、昔からアウターに行きたいと思っていた事。追放されてアウターに行くことになったという事、全て話した。


「へー王子ですかー……王子!?」

「ははは、スレイ君は嘘が下手だなぁ」

「あ、そうか、嘘ですか! 駄目ですよスレイさん、本当の事はなさないと!」

「本当だ!」


 ブロズとセリアは冗談と受け止めた。まあ、信じられないのも無理はないかもしれないが。


「マ、マジで王子だったんですか? かけらもそんな雰囲気感じないのですが……」

「おい、失礼すぎるだろ」


 かけらもとはどういう事だ。王子っぽくないのは自覚しているがな。


「アウターに来る人は結構色んな人いるって話は聞いてたけど、まさか王子様がいるなんて……」


 ルナは相当驚いているようだ。信じてくれているようだ。


「一応言っておくが元王子だから。追放されたからもう王子じゃない」

「何で追放されたんでしょうか? あまりにも王子っぽくなかったからですか?」

「違う! ……とも言い切れないな」


 多分、俺の振る舞いが悪いから追い出したというのは建前で、兄が王の座に付くのを確実にするために、俺を追放したのだと思うのだが、確実にそうだとも言い切れないしな……


「王子か……」


 シラファが何か言いたそうな表情で俺を見つめる。


「ふっ……」


 と突如鼻で笑った。


「おい、何で今鼻で笑った」

「いや、似合わないなと思っただけだ」

「お、お前も言うか……」

「王族というのは、もっとお高く止まっていると思っていたからな。全然そんな感じじゃない」

「それは確かにそうだな」


 王族であることが嫌だったので、王子という肩書に特別なプライドなどは持っていないし。


「そうですねー。むしろシラファさんの方がお高く止まってましたね。シラファさんが王女様だって言われたら信じてたかもしれません」

「お、お高く止まってなどない……! い、いや最初は確かにそうだったかもしれないが、少なくとも今は違う」


 セリアの指摘に慌てながらシラファは言い返す。


 話したあと、特に俺が元王子だからと、態度を変えたりはしないようだ。安心した。


「眠くなってきましたし、今日はもう寝ますかー」

「何? 過去を話したの俺だけだぞ」

「ほかの人の話は後日しましょうー」


 結局話をしたのは俺だけになり、今日は寝ることになった。









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