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「くすくす、ラーマの実は森の東奥にあるよ。案内してあげたいけど、東奥は危険だから僕たちはいけない」
案内なしで見つけるのか? また難易度が上がった。
てか、東奥って言われても、どっちが東でどっちが西か分からないから、行くのは無理だと思うんだが。
「東奥ってのはどっちに行けばいいんだ?」
「くすくす、あっち側だね」
小悪魔は俺の後ろの方を指さした。
方角は分かったが……森をまっすぐ進むってのは、結構難しい。果たしていけるのだろうか?
結構時間がかかりそうだな。食料は買ってきたが、持つだろうか? アウターではモンスターを倒しても魂力になって、消えてしまうから食材にすることは出来ない。
森だし、草とかキノコとかはあるが……知識が無いから、食べられる奴と食べられない奴の違いが分らない。
「手掛かりが少ないとなると、見つけるのに時間がかかりそうですねー」
「そうだよねー。ご飯足りるかな?」
「結構食べられそうな野草やキノコありますし、なくなったらそれ食べれば良いと思いますよ」
「セリアは食べられそうな野草やキノコが分るのか?」
「はい、アウターですけど森に生えてる植物は、そんなに変わらないようですし」
セリアには野草やキノコの知識があるようだ。食料問題は何とかなるかもしれないな。
「ラーマの実ってのはどんな特徴の実なんだ?」
「くすくす、赤くて表面に粒粒があって緑のヘタが付いている、甘い実だよ」
その特徴はイチゴじゃないのか?
「めちゃくちゃ大きいから、探すのはそんなに難しくないと思うよ」
めちゃくちゃデカいとなるとイチゴじゃないのか? デカいイチゴの様な実を探せばいいんだな。
デカい分、探しやすくはなっているのはいい事だろう。
「じゃあ、早速向かうか」
俺たちは森の東奥を目指して歩き始めた。
道中、雑魚モンスターが出てきたので、蹴散らしていく。
「うむ、やはり自分の思った通り攻撃が通ると、気持ちが良い」
シラファがスッキリしたという表情でそう言った。
攻撃が通らなかったことに、相当ストレスが溜まっていたようだ。
気持ちはよく分かる。俺も思い通り動けて、気分が良い。
森の奥に進んでいくと、徐々にモンスターの強さが上がっていくのが、体感で分かった。
二足歩行して剣を持っているトカゲのモンスターがいたが、これが結構強く少しだけ手こずった。まあ、倒すことは全然できるレベルだったが。
強いモンスターが出てきたってことは、この辺りはもうすでに、森の東奥と言っていいのだろうか? この辺りにラーマの実は生えていると?
「小悪魔さんの話だと、大きい赤い実ですが、どこにもないですねー」
セリアがキョロキョロしながら探している。視力が下がっていない状態の彼女の眼は、俺たちの中では一番いいので、セリアがないというのなら、近くにはないのだろう。
俺たちは警戒しながら森の中を進んでいく。
進めば進むだけ、何となく嫌な雰囲気を肌で感じるようになってきた。
何だか、これ以上先へ進んではいけないような、そんな気がしてきた。
そう思っているのは俺だけではないようで、仲間たちも怯えたような表情を浮かべている。
すると、
「きゃあああ!!」
ルナの悲鳴が上がった。慌てて確認すると、ルナが緑の触手に絡めとられている。
真後ろには大きな口がある花が。
人を食う植物型のモンスターのようだ。気づかず接近をして、ルナが捕まってしまったようだ。
俺は素早く動き、植物の触手だけを斬り裂く。ルナが解放されたのを見て、セリアが先ほど覚えた魔法、スチールニードルを使用。鉄の針が植物に飛んでいき、突き刺さった。
中々の威力だった。そして運よく急所に当たったのか、植物モンスターは苦しみ、死亡した。モンスターの魂力がセリアに吸収される。
「ル、ルナさん大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫。怪我はしてないよ。ありがとう助けてくれて」
ルナはお礼を言ってきた。上手く触手だけ斬れてよかった。
「良かったですー。いやーしかし、中々いい魔法を覚えられましたねー。近くにいる敵には魔法で戦いましょう。とどめを刺せたら、魔法で使った分の魂力をすぐ回復できますし、バンバン使ってもよさそうです」
器が一杯になったら、魔法で消費した分の魂力をあっさり回復できるのか。思ったより大きいデメリットではないようだな。
ちょっとびっくりしたが、危機は乗り越えられた。油断せず先に進もう。