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小悪魔の案内で、俺たちは北にあるという洞窟まで向かった。
歩いていて分かったが、俺の速度減少効果は、結構キツイ。
歩くのでさえ遅くなっているので、少し早めに歩かないと、ついていけなくなってしまう。
戦いになると、これは相当面倒なことになりそうだ。
「うー、よく見えないよー……」
視力が下がったセリアは、苦しそうに呟いた。相当視力が下がってしまっているようだ。
俺より戦闘面において、大きなハンデを背負うことになったのは、セリアだろう。
弓使いの視力が落ちるのは、非常にまずい。
今の俺たちでモンスターが倒せるのかと、不安になっていったら、近くから、ガサガサッ! と草木が揺れる音が響いてきた。
「くすくす、モンスターが来るよー」
と言って小悪魔が、パタパタと羽をはためかせ、高度を上げた。
俺たちはモンスターの襲来に備えて身構える。
猪頭の人型モンスターが現れた。
身長は2mを超し、体の幅もデカく、手に大きな棍棒を持っている。かなりの巨体だ。迷宮で見かけた首無しほどではないが。
「くすくす、オークだぁ。強いよぉそいつ。勝てるかなぁ?」
上の方から小悪魔の声が響き渡る。
俺たちが戦うところを、高みの見物とはいいご身分だ。腹が立つが、文句を言っても仕方ないだろう。
いち早くシラファが動いて、槍でオークの頭を突き刺そうとした。
あっさりと倒せたかと思ったが、槍はオークの頭に突き刺さらず弾かれた。
「何っ!?」
オークからの棍棒で反撃が来て、シラファは咄嗟に避ける。
体格が大きいからか、動きは遅く、攻撃を避けること自体は、それほど難しくはないようだ。
しかし、シラファの攻撃が効かないとは、よほど頭が硬いのか……?
あ、いや、そうだった。シラファは攻撃力を下げられていたんだった。
普通の状態なら今ので決まっていたのだろうが、今のシラファではオークの頭を貫くのは無理なのだろう。
攻撃されたオークは怒り狂って、棍棒をめちゃくちゃに振り回した。
ルナとルイは、防御力が下がっているという事が気にかかっているのか、中々攻められないでいた。確かに防御力が下がった状態で、あの棍棒を受ければ、一度死ぬことになるのは必至だろう。慎重にならざるを得ない。
セリアは弓を放っているが、やはり視力が落ちているからか、外してしまっていた。
俺はオークの懐に入り込もうとするが、鉛の鎧でも装備しているのか思うくらい、動きが遅い。オークの動きが遅いのだが、それとほぼ同じくらいの速度しか出ない。
棍棒も咄嗟に避けることができず、剣で受け止めた。
パワーは落ちておらず、力比べになったのだが、案外何とかなる。
巨体なだけあって、かなり力強いが俺の方が若干上のようだ。
オークが俺に気を取られている隙をついて、ルイとルナ、ブロズがオークに攻撃をする。攻撃力が落ちていない、三人の攻撃は普通に強く、オークもひとたまりもなかったようで、絶命し、魂力になった。とどめを刺したのは、ブロズだったようで、魂力はブロズに吸収された。
「倒せましたが……やっぱり今の状態で弓を撃つのはきついですー……」
セリアは心底参ったという表情でそう言った。
シラファは攻撃が通らなかったことが、よっぽど口惜しいのか、かなりイラついたような表情を浮かべている。
「俺も相当動きが落ちてた。これじゃあ、戦いにくくて仕方ない」
あのオーク自体はそれほど強くなかったため、倒せはしたが、もっと強い敵が来るとどうなるか。
「ここで落ちた能力を頭に入れて、それに応じた戦い方を考えるべきだろうな」